BRAIN 東京都世田谷区を中心に23区にてエビデンスに基づく脳卒中専門の保険外リハビリを運営|セラピスト向けにEBPを実践的に伝えるセミナー『BRAINアカデミー』を運営|脳卒中リハにおけるEBP/EBMの普及に取り組んでいます

【第22回日本神経理学療法学会で座長を務めます】第22回日本神経理学療法学会でポスター発表の座長を務めさせていただきます。「自費リハ施設だから」との理由で、病院や施設に共同研究のお願いを断られることがしばしばあります。自費リハについては、ま...
22/09/2024

【第22回日本神経理学療法学会で座長を務めます】

第22回日本神経理学療法学会でポスター発表の座長を務めさせていただきます。

「自費リハ施設だから」との理由で、病院や施設に共同研究のお願いを断られることがしばしばあります。

自費リハについては、まださまざまな意見があるかもしれませんが、学術大会でこのような機会をいただけることは大変ありがたいです。

自費リハだからこそ、研究に貢献したいという思いがあります。

第22回日本神経理学療法学会へ参加される方がいらっしゃいましたら、9月29日(日)10:10、4F第8会場でお待ちしています!

久しぶりにお会いできる方もいると思うので、よかったら色々とお話しさせてください😊

【脳卒中後の上肢運動障害に対する振動刺激を使ったプライミング】リハビリを行うことで脳卒中後の上肢運動障害は改善しますが、世界では『どうやったらもっと改善するのか?』と新しいリハビリ方法が模索されています。近年、注目されている手法のひとつに『...
18/05/2024

【脳卒中後の上肢運動障害に対する振動刺激を使ったプライミング】

リハビリを行うことで脳卒中後の上肢運動障害は改善しますが、世界では『どうやったらもっと改善するのか?』と新しいリハビリ方法が模索されています。

近年、注目されている手法のひとつに『プライミング』があります。

2023年6月にBrain Researchという雑誌で【Effectiveness and electrophysiological mechanisms of focal vibration on upper limb motor dysfunction in patients with subacute stroke: A randomized controlled trial】という論文が公開されました。

この研究では、『局所的振動刺激』をリハビリ前に行うことで、上肢の運動障害をより改善させることができることを報告しています。

今回は、こちらの論文をもとに振動刺激を使ったプライミングを紹介します。

■ プライミングとは?

少し語弊がありますが、簡単に言うと『リハビリ効果を高める “準備運動”』のようなものです。

リハビリ前にプライミング(準備運動)を行うことで、リハビリ効果を大きくすることができます。

プライミング研究で著名なStoykov先生によると、プライミングには下記の5つの種類があります。

①Stimulation-based priming(刺激に基づくプライミング)
②Motor imagery and action observation(運動イメージと行動観察)
③Sensory priming(感覚プライミング)
④Movement-based priming(動きに基づくプライミング)
⑤Pharmacological priming(薬理的プライミング)

PMID: 25415551

また、2020年のシステマティックレビュー研究によると、実際にプライミング+課題指向型訓練によって、

● 上肢の運動機能(FMAUE)
● 上肢の運動パフォーマンス(ARAT、BBT)

…が “プライミングを行わない場合と比べて” 大きく改善することが報告されています。

PMID: 32452242

プライミングによってリハビリ効果が高くなるメカニズムについてはよくわかっていませんが、よく言われるもののひとつに『皮質脊髄興奮性の増大』があります。

Kemlin Cら(2019)によると、脳卒中後の運動障害は “皮質脊髄路の損傷” だけでなく “皮質脊髄路の興奮性低下” によっても生じます。

PMID: 31645211

これは『電線はつながっているのに電気抵抗が高いせいで電気が通らず、電球がつかない』というものです。

理論的に考えると『皮質脊髄興奮性を高めることができれば、運動障害の改善を後押しできるのではないか?』と言えます。

もしプライミングで皮質脊髄興奮性を高めた上でリハビリを行えているのであれば、これまで報告されてきた『プライミング+リハビリが効果が高い』というのも納得がいきますよね。

■ 局所的振動刺激をプライミングに使った2023年研究

冒頭で話した【Effectiveness and electrophysiological mechanisms of focal vibration on upper limb motor dysfunction in patients with subacute stroke: A randomized controlled trial】の話に戻ります。

この研究では上肢の重度運動障害を持つ亜急性期脳卒中患者さん30人を15人ずつ、2つのグループ①②に分けました。

各グループは下記のリハビリを受けました。

① プライミング(局所的振動刺激)10分+作業療法 35〜45分
② 作業療法 35〜45分
(その他理学療法も1日40分実施)

なお、振動刺激は周波数60Hz、振幅6mmで上腕二頭筋と撓側手根屈筋に当てられています。

①②各グループともに週6回、4週間実施しました。

結果として、プライミングを受けたグループは、プライミングを受けなかったグループと比べて、

● 運動誘発電位の潜時
● 運動誘発電位の振幅
● 上肢の運動機能(FMAUE)
● 痙縮(MAS)

…において良好な結果を示しました。

ざっくり説明すると『皮質脊髄興奮性も上がって、実際の上肢運動機能も上がった』ということです。

FMAUEスコアについては、プライミングなしグループが

● 介入前9.0 (6,25-15.25) →介入後 18.0 (10.75-30.00)

だったの対し、プライミングありグループは

● 介入前6.00 (4.00-24.00) →介入後 32.00 (24.00-40.00)

という大きな違いを見せています(中央値と四分位範囲)

このことから、『プライミングとして振動刺激を使うことは皮質脊髄興奮性の向上と上肢運動機能の向上に有効である』ことが示されました。

■ プライミングの有効活用を!

今回は振動刺激を紹介しましたが、プライミングは他にもあります。

いずれも誰でも簡単にできるものなので、もしかしたらご本人様やご家族様にリハビリ前に実施しておいていただくことも可能かもしれません(もちろんセラピストがやってもOK)。

上肢運動障害でお困りの方に対しては、プライミングの実施も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか?

【脳卒中後のCRPSに対するリハビリのエビデンス -2023年研究-】脳卒中患者さんで肩や腕、手の痛みでお困りの方いらっしゃいますよね。Complex Regional Pain Syndrome (CRPS) は名前の通り “複雑/複合的...
09/05/2024

【脳卒中後のCRPSに対するリハビリのエビデンス -2023年研究-】

脳卒中患者さんで肩や腕、手の痛みでお困りの方いらっしゃいますよね。

Complex Regional Pain Syndrome (CRPS) は名前の通り “複雑/複合的な” 病態を呈することから、『なぜ痛いのか?』という分析が欠かせません。

一方、分析だけでは患者さんの痛みの改善にはつながりません。

分析した上で『CRPSに対して効果のあるリハビリ』を実施することが大事です。

2023年4月に【Effectiveness of the physiotherapy interventions on complex regional pain syndrome in patients with stroke: A systematic review and meta-analysis】というシステマティックレビュー研究が公開されました。

PMID: 37330766

この研究では、世界中で有効性が報告されたCRPSへのリハビリをまとめてくれています。

BRAINオンラインサロンの文献抄読会ではこちらの文献をみんなで読みました。

研究の結果と文献抄読会で話し合ったことについて共有します。

■ CRPSに対して有効性が認められた3つのリハビリ

① ミラーセラピー(PMID: 19465507, 26723854)
② レーザー治療(PMID: 19284397)
③ 水治療法(PMID:30940426)

CRPSに対するリハビリのエビデンスは世界的に少ないですが、4件の研究でCRPSへ有効性を示した報告がなされました。

いずれも痛み(VASで測定)の改善を報告し、またレーザー治療においてはADL自立度の向上にまで有効だったことを報告しています。

ただ、レーザー治療と水治療法はほとんどの病院で機器がなく再現できないと思います。

今回はミラーセラピーについて掘り下げます。

■ ミラーセラピー① Angelo Cacchio 2009

脳卒中発症から平均5ヶ月くらいの患者さん48人を対象に行われた研究です。

48人を

● ミラーセラピー+通常のリハビリグループ
● 通常のリハビリグループ

とに分けました。

ミラーセラピー+通常のリハビリグループは、

● ミラーセラピー(30分〜60分)
● 通常のリハビリ(60分)

を週5回、4週間受けました。

結果として、安静時の痛みVASが7.6 (1.2)から4週後には4.3 (2.5) になっていたことを報告しました。

その他、運動時の痛み、触刺激に対するアロディニアにおいても改善を認めています。

■ ミラーセラピー② Pervane Vural S 2015

脳卒中発症から平均4〜6ヶ月くらいの患者さん30人を対象に行われた研究です。

30人を

● ミラーセラピー+通常のリハビリグループ
● 通常のリハビリグループ

とに分けました。

ミラーセラピー+通常のリハビリグループは、

● ミラーセラピー(30分)
● 通常のリハビリ(120〜240分)

を週5回、4週間受けました。

結果として、痛みVASが6 (2-9)から4週後には3 (1-6) になっていたことを報告しました。

これらの研究結果から、発症から数ヶ月経過している脳卒中患者さんの痛みもミラーセラピーによって改善する可能性があることがわかります。

■ 2023年4月研究の注意点

BRAINオンラインサロンでは『CRPSに対してミラーセラピーが有効だった!』という結論よりもむしろこの注意点の方に焦点があたりました。

ざっくり言うと『有効性が認められなかったという研究論文もあるかもしれない』といったところです。

AMSTAR2という批判的吟味ツールでチェックしたのですが

● 英語バイアス
● 出版バイアス

…が強く懸念されるシステマティックレビュー研究でした。

CRPSに対してミラーセラピーを実施するときは、もう少しミラーセラピーに関連する論文を探して読んだ方がよさそうです。

とは言え、難渋することが多い『痛み』に対して、エビデンスがあるリハビリを使えるようにしておくことはセラピストにとっては大事なことです。

【BRAINアカデミー第7期募集開始】エビデンスに基づく脳卒中リハビリを6ヶ月かけて身につけるオンライン学習プログラム『BRAINアカデミー』第7期の募集を開始しました第7期は①講義動画の視聴+②宿題の提出+③ LINEによる質疑応答、にて...
05/05/2024

【BRAINアカデミー第7期募集開始】

エビデンスに基づく脳卒中リハビリを6ヶ月かけて身につけるオンライン学習プログラム『BRAINアカデミー』第7期の募集を開始しました

第7期は①講義動画の視聴+②宿題の提出+③ LINEによる質疑応答、にてサービスを構成します

提出いただいた課題に対し講師がフィードバックし、インプットとアウトプットを繰り返すことでエビデンスに基づく脳卒中リハビリを習得いただきます

⚫︎ 日程
2024年7月〜12月
⚫︎ 方法
動画配信を用いたオンラインセミナー+質疑応答
※見逃し配信2025年1月末まで
⚫︎ コース概要
ビギナーコース:経験1〜3年目向け
ベーシックコース:経験3〜5年目向け
アドバンスコース:経験5年目以上向け

以下、コース詳細です

① ビギナーコース
<概要>
脳卒中リハにおける評価項目のピックアップのしかた、目標の立てかた、リハビリプログラムのつくりかたなど基本的なことを学習いただくコースです
<コース修了後の姿>
⚫︎ 問題点の抽出を行えるようになる
⚫︎ 評価項目を正しく選択できるようになる
⚫︎ 脳卒中リハにおける基本的なリハビリを提供できるようになる

② ベーシックコース
<概要>
英語論文の読みかた、PubMedを使った文献検索のしかた、批判的吟味のしかたを学習いただくコースです
<コース修了後の姿>
⚫︎ 英語論文を読めるようになる
⚫︎ 情報を信頼できるかどうか判断できるようになる
⚫︎ 評価や治療をエビデンスに基づいて行えるようになる

③ アドバンスコース上肢・歩行
<概要>
予後予測、Shared Decision Making、各リハビリ方法の効果など、エビデンスに基づく脳卒中リハビリを実践的に行えるようになるための知識・スキルを学習いただくコースです
<コース修了後の姿>
⚫︎ 運動障害やADL、歩行障害の予後予測を行えるようになる
⚫︎ Goal-Based SDMを活用したエビデンスに基づく脳卒中リハを行えるようになる
⚫︎ 臨床研究のエビデンスと基礎研究のエビデンスを踏まえた意思決定ができるようになる

BRAINがリハビリ現場で活用している知識・スキルをすべてお伝えします

一緒にエビデンスに基づく脳卒中リハビリを学習しましょう!

https://brain-lab.net/program/

【脳卒中リハにおけるTMSのエビデンス】TMSは脳卒中治療ガイドライン2021では推奨B〜Cですが、実はTMSに関するエビデンスは『信頼できるエビデンスと信頼できないエビデンスとが混在している』いわば玉石混淆のような状態になっています。20...
24/04/2024

【脳卒中リハにおけるTMSのエビデンス】

TMSは脳卒中治療ガイドライン2021では推奨B〜Cですが、実はTMSに関するエビデンスは『信頼できるエビデンスと信頼できないエビデンスとが混在している』いわば玉石混淆のような状態になっています。

2023年10月にStrokeという雑誌で【Evidence of rTMS for Motor or Cognitive Stroke Recovery: Hype or Hope?】という論文が公開されました。

これはTMSの『信頼できるエビデンス』のみを世界中から集めてまとめたシステマティックレビュー研究です。

この研究によって『TMSが有効と報告されたもの』は下記の通りです。

<脳卒中発症3ヶ月以内>
● 上肢運動機能(分離運動など)
● 上肢運動パフォーマンス(リーチ動作など)
● バランス
● 筋出力
● 全般的認知機能
● 半側空間無視
● 機能的コミュニケーション
● ADL自立度

<脳卒中発症3ヶ月以降>
● 上肢運動機能(分離運動など)
● 全般的認知機能
● 半側空間無視
● 言語理解
● 記銘(Expressive Naming)
● 機能的コミュニケーション

このように運動機能だけでなく高次脳機能など広く有効性が認められる結果になりました。

現時点でのエビデンスからはTMSは有効な介入方法であると言えます。

しかし、TMSは病院・施設にはほとんど置いていません。

色々な理由があり仕方がないのですが、『有効なものが臨床現場で使われていない』というのは何よりも患者さんにとって不利益だと思っています。

もしかしたらTMSを受けることでもっとよくなる患者さんがいるかもしれません。

BRAINはそのような方にTMSを届けるために、世田谷店舗に導入しております。

医師の安全管理下にて行わせていただいておりますので、ご興味がある方はよかったらお問い合わせください。

【脳卒中後の軽度歩行障害における歩行予後 -2022論文-】2022年、【Associations between changes in gait parameters, balance, and walking capacity duri...
18/04/2024

【脳卒中後の軽度歩行障害における歩行予後 -2022論文-】

2022年、【Associations between changes in gait parameters, balance, and walking capacity during the first 3 months after stroke: a prospective observational study.】という論文が公開されました。

PMID: 32569492

この研究では、脳卒中発症2週間以内の軽度歩行障害を有する患者さん79人を対象に、3ヶ月後に

⚫︎歩行速度
⚫︎歩行距離
⚫︎時空間パラメータ

…などの “歩きかた(歩容)” がどのように変化しているかを報告しています。

こういった一般的な経過のデータは、患者さんの予後予測に使うことができます。

▪︎ 脳卒中後の歩行障害における予後予測のやりかた

私たちセラピストの仕事は『患者さんによくなっていただくこと』ですが、脳卒中には “自然回復” があります。

リハビリをやっても自然回復くらいまでしかよくならないならリハビリの意味がないので、自分がやろうとしているリハビリが『自然回復(一般的な経過)よりもよくなるのか?』を判断する必要があります。
#自然回復よりよくなるなら実施する価値あり

自然回復(一般的な経過)の予後予測で役立つのが

⚫︎予後予測ツール(モデル)
⚫︎一般的な経過データ

…です。

今回の論文は『一般的な経過』を報告してくれているものです。

▪︎ 脳卒中後の軽度歩行障害における歩行予後 -2022論文-

一般的な経過データを報告してくれている研究論文はいくつかあるのですがいずれもアウトカムは

⚫︎ 歩行自立度
⚫︎ 歩行速度
⚫︎ 歩行距離

であることが多いです。

1970年代に、脳卒中患者さんが “歩行で困ることはなにか” を調べた研究があるのですが、そのとき挙げられたのが

⚫︎ 歩行自立度
⚫︎ 歩行速度
⚫︎ 歩行距離
⚫︎ 歩きかた(歩容)

…の4つでした。

歩行自立度、速度、距離については予後予測に役立つデータがわりと多いのですが、 “歩きかた(歩容)” については予後予測に役立つデータが多くありません。

なので、患者さんから『きれいに歩けるようになる?』と聞かれたとき、返答に困るセラピストさんも多いのではないかと思います。

そこで役立つのが今回の論文です。

今回紹介する2022年論文は、平均年齢 75歳くらいの軽度脳卒中患者さんの歩行の時空間パラメータとして

⚫︎ ステップ長
⚫︎ 歩隔
⚫︎ ケイデンス
⚫︎ 単脚支持期の割合

…など歩きかた(歩容)が発症2週間から3ヶ月までにどのように変化するかを教えてくれます。

例えば

ステップ長(m/s): 55.7 (12.9) → 62.3 (13.1)
歩隔(cm):8.1 (3.1) → 7.6 (3.5)
ケイデンス(steps/min):96.5 (16.7) → 104.2 (12.9)
単脚支持期の割合(%):33.9 (3.6) → 35.1 (3.0)

…などです。

これらのデータをもとに、

『○○さんは発症1週間でステップ長が56cmだから、3ヶ月後に62cmくらいまで改善するだろう』

という一般的な経過の予測ができます。

ちなみに2010年の研究【Spatial and temporal parameters of self-selected and fast walking speeds in healthy community-living adults aged 72-98 years】によると、70歳代の健常者高齢者のステップ長は “68.9 (8.8cm”、歩隔は “9.5 (2.5) cm”、ケイデンスは “120.23 (11.88) steps/min” であることが報告されています。

PMID: 21717921

なので

『3ヶ月後に62cmだと健常高齢者よりも少し短いから、歩きかたを綺麗にするためにステップ長を長くするリハビリプログラムを組んでおこう』

といった意思決定ができます。

▪︎ エビデンスに基づく軽度歩行障害患者さんの予後予測

歩行障害が重度の患者さんは歩きかたよりも “まずひとりで歩けるようになるか” という自立度が課題になることが多いと思います。

一方、歩行障害が最初から軽度の患者さんは自立度よりも “元通りに歩けるようになるだろうか” という歩きかた(歩容)が課題になることが多いと思います。

そんなとき、

⚫︎ 担当患者さんの歩きかたはどのようによくなるのか
⚫︎ 歩きかたを綺麗にするためのリハビリが必要か

などの判断をする上で今回の研究が役立ちます。

BRAINではこのように、データを活用しながらリハビリを提供しています。

【脳卒中後の重度上肢運動障害に対するリハビリ戦略 -回復期編-】脳卒中発症後、手の運動障害が重度である場合、『利き手交換』により非麻痺側で日常生活を送れるようにするリハビリが行われることが多いです。病院の役割や重度な運動障害に対するエビデン...
10/04/2024

【脳卒中後の重度上肢運動障害に対するリハビリ戦略 -回復期編-】

脳卒中発症後、手の運動障害が重度である場合、『利き手交換』により非麻痺側で日常生活を送れるようにするリハビリが行われることが多いです。

病院の役割や重度な運動障害に対するエビデンスの少なさから考えると、そのリハビリは間違いではありません。

ただ、近年は『重度運動障害を改善させるためのリハビリ』も開発されてきています。

2023年1月に【Efficacy and Dose of Rehabilitation Approaches for Severe Upper Limb Impairments and Disability During Early Acute and Subacute Stroke: A Systematic Review】というシステマティックレビューが公開されました。

PMID: 37014279

この研究は、脳卒中発症3ヶ月までの急性期〜亜急性期で重度の上肢運動障害を持つ方に対して有効なリハビリは何か調べたものです。

今回はこちらの研究論文から重度運動障害を持つ方へのリハビリ戦略を紹介します。

■ 脳卒中後の重度上肢運動障害とは?

何をもって『重度上肢運動障害』とするか、ですが

この研究では重度の上肢運動障害の定義として

● FMAUE ≦22 / 66点
● ARAT ≦10 / 57 点

のいずれかの状態であることを指しています。

日常生活で麻痺手を使えるレベルはFMAUEで40点以上(バラツキあり)とされています。

FMAUE 22点以下ということは日常生活で麻痺手を使うことが難しい状態の方々です。

■ システマティックレビュー研究とは?

今回の研究論文は『システマティックレビュー』です。

これは特定のテーマについて『世界中の研究論文を集めてエビデンスをまとめる』研究です。

一般的に、システマティックレビュー研究を通して得られた情報の信頼性は高いとされています。

以下、重度な上肢運動障害に対して有効性が報告されたリハビリを紹介します。

■ 有効性が認められたリハビリ① ロボットアシスト

● Bi-Manu-Track(PMID: 16109908)
● Reha-Slide(PMID: 18806506)

などの機器を使ったリハビリを行うことが有効であることが報告されました。

■ 有効性が認められたリハビリ② 電気刺激

● 筋電トリガー式電気刺激(PMID: 32310196, 9596400)
● 対側制御機能的電気刺激(PMID: 30671586)
● 神経筋電気刺激 + 促通反復療法(PMID: 23213077)

筋電トリガー式とはIVESのような『患者さんが動かそうとした時に一緒に電気刺激してくれる』タイプのものです。

対側制御機能的電気刺激は非麻痺側の動きをトリガーにして麻痺側へ電気刺激を流すものです。

また、促通反復療法ができるセラピストさんは、エスパージと組み合わせて実施するのもよさそうです。

■ 有効性が認められたリハビリ③その他の運動療法

● レッドコードを使った運動療法
● ロッキングチェアを使った運動療法

これらは著者の方々が独自に開発したリハビリプログラムなのですが、いずれも重力や慣性などの力を借りて腕を動かすトレーニングです。

■ 脳卒中後の重度上肢運動障害に対するリハビリ戦略まとめ

ロボット、電気刺激が主力になりつつ、重力や慣性の力を借りながら動かす練習をする、ということです。

もちろん個人差はありますが、科学的な手続きを通して有効性が認められた方法ですので、よかったら実施されてみてください。

【2023年版 急性期〜回復期の脳卒中上肢リハ6選】2023年7月、Strokeという雑誌で『Comparative Effectiveness of Upper Limb Exercise Interventions in Individ...
03/04/2024

【2023年版 急性期〜回復期の脳卒中上肢リハ6選】

2023年7月、Strokeという雑誌で『Comparative Effectiveness of Upper Limb Exercise Interventions in Individuals With Stroke: A Network Meta-Analysis』という研究論文が公開されました

これは『脳卒中後の上肢リハって色々あるけど、結局どれが一番効果あるの?』を調べた研究です

2023年現在、脳卒中上肢リハは

● 課題指向型訓練
● CI療法
● 電気刺激療法
● ミラーセラピー
● 運動イメージ療法
● 運動観察療法
● 両側上肢トレーニング
● TMS

…など、リハビリ方法がたくさんある状態です

リハビリ方法がたくさんあるのは『万能なリハビリがないから』でもあるのですが…

『結局、どれをやればいいの?』

と困ることもあるのではないかと思います

そんな疑問に答えてくれたのが今回の研究論文です

急性期・回復期(発症から6ヶ月未満)の脳卒中患者さんを対象にした研究を世界中から集め、 “ネットワークメタアナリシス” という解析方法を使い、『どの方法がもっとも効果的か』という疑問に一定の答えを出してくれました

結果として、

● 課題指向型訓練+電気刺激
● 高強度CI療法
● 筋力トレーニング
● 運動観察療法
● バイオフィードバック
● 課題指向型訓練(+αなし)

の6つのリハビリに有効性を認めました

脳卒中後の上肢リハは色々な方法がありますが、まずは上記6つを行うことで、リハビリ効率が上がるのではないかと思います

PMID: 37293804

【脳卒中歩行リハビリの課題 -2022年総説論文より-】2022年、Strokeという雑誌で『Walk the Talk』という総説論文が公開されました。この論文で提唱されている脳卒中リハビリの課題は『”しているレベル” の歩行がよくなって...
27/03/2024

【脳卒中歩行リハビリの課題 -2022年総説論文より-】

2022年、Strokeという雑誌で『Walk the Talk』という総説論文が公開されました。

この論文で提唱されている脳卒中リハビリの課題は『”しているレベル” の歩行がよくなってないんじゃない?』ということです。

理学療法士にとっても当事者様にとっても重要なテーマだと思うので、以下解説します。

■ 脳卒中歩行リハの発展と落とし穴

現在まで脳卒中歩行リハは発展してきていて、

● トレッドミルトレーニング
● 課題指向型訓練(サーキット)
● 高強度トレーニング

…など、世界中で歩行能力を向上させる上で有効なリハビリが確立してきました。

ただ、これらの研究で用いられているアウトカムは

● 10m歩行試験
● 6分間歩行試験

など、あくまでも「リハビリ室内/検査用に整備された環境内」です。

カットオフ値などから移動可能範囲を推定できるものの、だからといって「=している歩行」ではありません。

つまり、これまで確立されてきた歩行リハビリは「できるレベルの歩行はよくするけど、しているレベルの歩行をよくするかどうかはわからない」という課題があります。

一方で、今のところ「している歩行」について高い信頼性・妥当性が実証された検査・測定法がありません。

加速度計や歩数計などが研究で使われることがありますが、本当に「している歩行」を捉えられているのか?と疑念が残っています。

つまり、「しているレベルの歩行をよくするリハビリが開発されないのは、しているレベルの歩行をみるための検査・測定法がないから」ということです。

まとめると、現状は

● “できる歩行” をよくするリハビリは確立されている
● “している歩行” をよくするリハビリがほぼ全く実証されてない

ということです。

■ ”できる歩行” と “している歩行” の乖離

上記の問題を背景に、『"できる歩行” と “している歩行” の乖離』が起こる可能性があります。

『リハビリで歩けるようになったけど、実生活では全然歩いてない』というものです。

歩行速度1.0m/sの患者さんも実生活では全然歩いていない、ということが起こり得ます。

なのでこの乖離をなくし、患者さんの実生活の歩行をよくすることは大事なことです。

この乖離を無くすために、まず “している歩行” の検査・測定法が開発されることが求められています。

そうでないと、上述した通り、”している歩行” をよくするためのリハビリ方法が開発できないからです。

ただ、それまで私たちセラピストは『”できる歩行” と “している歩行” の乖離』を無視していいわけではありません。

現時点では『なぜ実生活では歩けていないのか?』を考えることが必要です。

■ ”している歩行” に影響を与える12の要素

著者らは ”している歩行” に影響を与える要素として下記の要素を提唱しています。

▶︎ 個人因子
① モチベーション
② 気分
③ 年齢
④ サポート

▶︎ 環境因子
① 交通状況
② 地形
③ 距離
④ 荷物
⑤ 天気
⑥ 速度
⑦ ドア/方向転換
⑧ 会話

これらの因子になんらかの問題がある場合、している歩行のレベルが低下する可能性があります。

『”できる歩行” と “している歩行” の乖離』がある場合、これらの要素をみていくことで、乖離をなくすアプローチへつながるかもしれません。

そして何より、

①している歩行をみるための検査・測定法の開発
②している歩行をよくするためのリハビリ方法の開発

…が私たち理学療法士に求められています。

臨床現場からも、どんどんデータを出していかないといけないですね。

PMID: 36069185

【脳卒中後の上肢運動障害における3つのサブタイプ】脳卒中後の腕や手の回復は『近位部(肩)から遠位部(手)へ進む』と聞いたことないでしょうか?これは1951年にTwitchell TEらが報告したデータに基づいています。しかし、臨床では『肩・...
23/03/2024

【脳卒中後の上肢運動障害における3つのサブタイプ】

脳卒中後の腕や手の回復は『近位部(肩)から遠位部(手)へ進む』と聞いたことないでしょうか?

これは1951年にTwitchell TEらが報告したデータに基づいています。

しかし、臨床では『肩・肘(近位部)よりも手指(遠位部)の方が動きがよい』患者様がいらっしゃいます。

そのような患者様にはむしろ最初から遠位部のリハビリを始めた方がよいかもしれません。

2023年7月にNeurologyで【Distinguishing Distinct Neural Systems for Proximal vs Distal Upper Extremity Motor Control After Acute Stroke】という論文が公開されました

PMID: 37268437

アメリカのマサチューセッツ総合病院に入院された発症から1週間以内の脳梗塞・脳出血患者さんを141人集め、『脳卒中後の上肢運動障害はどのような状態から始まり、その後どのような状態になるのか?』を調べた研究です。

患者さん141人の

● Fugl-Meyer Assessment Upper Extremity(FMAUE)
● Shoulder Abduction Finger Extension(SAFE)score
● Box and Block Test(BBT)
● modified Barthel Index(mBI)
● modified Rankin Scale(mRS)
● 脳画像データ

…をとり、上肢の運動障害の状態を調べました。

そして

FMAUEの『肩・肘』およびSAFEの『肩外転』を【近位部】
FMAUEの『手』およびSAFEの『指伸展』を【遠位部】

とし、各患者さんで『近位部の運動障害と遠位部の運動障害どちらが強いのか』を計算しました。

この指標によって上肢の運動障害を有する患者さんは

● 肩と肘よりも手指の運動障害が強い『遠位部障害型』(有病率47%)
● 手指よりも肩と肘の運動障害が強い『近位部障害型』(有病率23%)
● 手指も肩肘も同等の運動障害がある『遠位・近位部障害型』(有病率30%)

の3つのタイプに分けられました。

そして興味深いことに、遠位障害は『一次運動野の病巣』に、近位障害は『一次運動野/運動前野/補足運動野/線条体の病巣』に関連していることがわかりました。

肩・肘などの近位部は『皮質網様体脊髄路』の支配を、手指などの遠位部は『皮質脊髄路』の支配を強く受けていると考えられているため、神経の機能解剖と結びつけるとイメージつきやすいのではないかと思います。

このように、

● FMAUEやSAFEなどの臨床データ
● 脳画像データ

…から、患者様が持つ運動障害の3つのサブタイプのうち何に該当するのかを分けることができます

3つのサブタイプは病態が異なることが予想されるので

今後は

『脳卒中後の上肢運動障害(近位部損傷型)に対して○○のリハビリが有効だった』
『脳卒中後の上肢運動障害(遠位部損傷型)に対して○○のリハビリが有効だった』
『近位部障害型に対して有効だったリハビリ○○は遠位部障害型に対しては有効とは言えなかった』

…という研究が必要になってくるかもしれません。

今後の研究を注視する必要がありそうです。

【脳卒中後のCRPSに対するリハビリのエビデンス -2023年研究-】脳卒中患者さんで肩や腕、手の痛みでお困りの方いらっしゃいますよね🤔 Complex Regional Pain Syndrome (CRPS) は名前の通り “複雑な” ...
11/03/2024

【脳卒中後のCRPSに対するリハビリのエビデンス -2023年研究-】

脳卒中患者さんで肩や腕、手の痛みでお困りの方いらっしゃいますよね🤔

Complex Regional Pain Syndrome (CRPS) は名前の通り “複雑な” 病態を呈することから、『なぜ痛いのか?』という分析が欠かせません

一方、分析だけでは患者さんの痛みの改善にはつながりません

分析した上で『CRPSに対して効果のあるリハビリ』を実施することが大事です

2023年4月に【Effectiveness of the physiotherapy interventions on complex regional pain syndrome in patients with stroke: A systematic review and meta-analysis】というシステマティックレビュー研究が公開されました

PMID: 37330766

この研究では、世界中で有効性が報告されたCRPSへのリハビリをまとめてくれています

BRAINオンラインサロン10月の文献抄読会ではこちらの文献をサロンメンバーさんと一緒に読みました

研究の結果と文献抄読会で話し合ったことについて共有します

■ CRPSに対して有効性が認められた3つのリハビリ

① ミラーセラピー(PMID: 19465507, 26723854)
② レーザー治療(PMID: 19284397)
③ 水治療法(PMID:30940426)

CRPSに対するリハビリのエビデンスは世界的に少ないですが、4件の研究でCRPSへ有効性を示した報告がなされました

いずれも痛み(VASで測定)の改善を報告し、またレーザー治療においてはADL自立度の向上にまで有効だったことを報告しています

ただ、レーザー治療と水治療法はほとんどの病院で機器がなく再現できないと思います

今回はミラーセラピーについて掘り下げます

■ ミラーセラピー① Angelo Cacchio 2009

脳卒中発症から平均5ヶ月くらいの患者さん48人を対象に行われた研究です

48人を

● ミラーセラピー+通常のリハビリグループ
● 通常のリハビリグループ

とに分けました

ミラーセラピー+通常のリハビリグループは、

● ミラーセラピー(30分〜60分)
● 通常のリハビリ(60分)

を週5回、4週間受けました

結果として、安静時の痛みVASが7.6 (1.2)から4週後には4.3 (2.5) になっていたことを報告しました

その他、運動時の痛み、触刺激に対するアロディニアにおいても改善を認めています

■ ミラーセラピー② Pervane Vural S 2015

脳卒中発症から平均4〜6ヶ月くらいの患者さん30人を対象に行われた研究です

30人を

● ミラーセラピー+通常のリハビリグループ
● 通常のリハビリグループ

とに分けました

ミラーセラピー+通常のリハビリグループは、

● ミラーセラピー(30分)
● 通常のリハビリ(120〜240分)

を週5回、4週間受けました

結果として、痛みVASが6 (2-9)から4週後には3 (1-6) になっていたことを報告しました

これらの研究結果から、発症から数ヶ月経過している脳卒中患者さんの痛みもミラーセラピーによって改善する可能性があることがわかります

■ 2023年4月研究の注意点

BRAINオンラインサロンでは『CRPSに対してミラーセラピーが有効だった!』という結論よりもむしろこの注意点の方に焦点があたりました
#批判的吟味

ざっくり言うと『有効性が認められなかったという研究論文もあるかもしれない』といったところです

AMSTAR2という批判的吟味ツールでチェックしたのですが

● 英語バイアス
● 出版バイアス

…が強く懸念されるシステマティックレビュー研究でした

CRPSに対してミラーセラピーを実施するときは、もう少しミラーセラピーに関連する論文を探して読んだ方がよさそうです

とは言え、難渋することが多い『痛み』に対して、エビデンスがあるリハビリを使えるようにしておくことはセラピストにとっては大事なことで、その情報を教えてくれたこの2023年論文の著者先生には頭が上がりません😌

【BRAIN3周年のお知らせ】おかげさまで3月1日をもってBRAINは3周年を迎えました。無事に4期目に入れるのもみなさまのご支援の賜物と心より感謝申し上げます。引き続き、BRAINはエビデンスに基づく脳卒中リハビリサービスをご利用者様へ届...
01/03/2024

【BRAIN3周年のお知らせ】

おかげさまで3月1日をもってBRAINは3周年を迎えました。

無事に4期目に入れるのもみなさまのご支援の賜物と心より感謝申し上げます。

引き続き、BRAINはエビデンスに基づく脳卒中リハビリサービスをご利用者様へ届けてまいります。

今後とも変わらぬご支援のほど何卒よろしくお願い申し上げます。

住所

東京都世田谷区砧3-2-7カーサピエトラ不二 101
Setagaya-ku, Tokyo
157-0073

営業時間

月曜日 09:00 - 18:00
火曜日 09:00 - 18:00
水曜日 09:00 - 18:00
木曜日 09:00 - 18:00
金曜日 09:00 - 18:00
土曜日 09:00 - 18:00
日曜日 09:00 - 18:00

ウェブサイト

アラート

BRAINがニュースとプロモを投稿した時に最初に知って当社にメールを送信する最初の人になりましょう。あなたのメールアドレスはその他の目的には使用されず、いつでもサブスクリプションを解除することができます。

共有する

Share on Facebook Share on Twitter Share on LinkedIn
Share on Pinterest Share on Reddit Share via Email
Share on WhatsApp Share on Instagram Share on Telegram

カテゴリー