04/05/2026
オメガ3脂肪酸とは、EPA, DHA, αリノレン酸などの不飽和脂肪酸の総称で、青魚(サバ、イワシ)やアマニ油、えごま油などに豊富に含まれ、血液をさらさらにするとか脳機能の維持に役立つとか言われ、しばしばサプリメントとして使われています。
オメガ3脂肪酸の血液や循環器系への効能については、これを確認するしっかりとした臨床試験結果があるのですが、脳機能や認知機能への影響については改善するという結果はランダム化臨床試験では、私が知る限り、出てはいないと思います。
中国の研究グループがこの点について詳細に調べ、専門誌Journal of Prevention of Alzheimer’s Diseaseに発表しています(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2274580726000932)。
調査対象となったのは「アルツハイマー病神経画像イニシアチブ」というデータベースに記録されている人たちです。対象になったのは、55-90歳で(1)認知機能が正常な高齢者、(2)記憶障害が著しい人たち、(3)軽度認知障害(MCI)あるいはアルツハイマー病の診断を受けた人たちで、これらの人たちをオメガ脂肪酸摂取者と非摂取者に分けて、認知症の進行の度合いに関して違いがあるのか、調査が行われました。認知症検査として行われたのは、主に(1)MMSE検査(認知症の疑いがある際に記憶力や見当識、計算力などを11項目・30点満点で客観的に評価する簡易検査、点数が低いほど認知力が低下していると判断される)、(2)ADAS-Cog13(アルツハイマー病の認知機能障害を13項目で評価する国際的な指標で、点数が高いほど障害が重いことを示す)、(3)CDR-SB検査(認知症の重症度を6項目(記憶、見当識、判断力、社会生活、家庭生活・趣味、介護)で評価し、点数が高いほど障害が重いと判断される)でした。
その結果、驚いたことに、用いられた3つの検査結果はいずれも同様であり、『オメガ3摂取者のほうが非摂取者に比べて認知症の進行が早い』という結果でした。調べてみると、この変化は、脳におけるアミロイドβ沈着、タウ凝集や灰白質の萎縮とは関連しておらず、むしろ脳実質におけるグルコース代謝の低下と関連していて、このことから神経細胞死よりもシナプスの機能低下が認知力低下の根底にある可能性が示唆されました。
以上、オメガ3脂肪酸摂取では認知力向上(あるいは維持)にはつながらず、むしろ認知力低下を早める可能性があるという結果でした。ただし、これはいわゆる観察研究なので、これが因果関係を示しているかどうかはわかりません。しかし、用いられた3つの検査において「非摂取者よりも摂取者のほうに認知力低下が早く見られていた」という同様の結果であったということは、因果関係は別にしても、注目すべきことだと思われます。
世の中で販売されているサプリメントのうち、大規模な臨床試験などは行っているものは非常に少なく、多くのものはメーカーが関連した小規模な研究によるデータに依存しています。オメガ3脂肪酸に関しては、血液や循環器系に対しては良い効果があるという臨床試験の結果はあるのですが、認知症に対しては今回のものが初めてであるようです。そして、その結果は実ははかばかしいものではなかった、ということです。
サプリメントを摂る、摂らないは個人に任されていることですが、薬効に関して科学的根拠が示されていないサプリメントについては、どうもその使用に気をつけたほうが良さそうです。