一般社団法人信州上田みらい塾

一般社団法人信州上田みらい塾 宮坂昌之(大阪大学免疫学フロンティア研究センター・招へい教授、大阪大学名誉教授)が代表理事です。医学健康情報の発信を行います。

SNSでは、日本では急激にがんの発生数が増えている、これは新型コロナワクチンのせいだ、と言い廻っている医師が居ますが、これまで出されている統計を見ても、がんが急激に増えていることはありません。少しずつは増えているのですが、これは高齢者の割合...
25/09/2025

SNSでは、日本では急激にがんの発生数が増えている、これは新型コロナワクチンのせいだ、と言い廻っている医師が居ますが、これまで出されている統計を見ても、がんが急激に増えていることはありません。少しずつは増えているのですが、これは高齢者の割合が増えているためであり、社会全体ががんになりやすくなっているようなことはまったくありません。

実は、これは先進国ではどこでも同じような状況です。最新号のLancetにアメリカの研究グループが、世界各国でのがんの発生状況を子細に調べていますが、その結論も同じで、がんは少しずつ増えてはいるものの、これらの増加の大部分は人口動態の変化によるもので、年齢標準化死亡率を見ると、最近はむしろ減少の傾向があるとのことです。

こういう情報を示すと、上記のような誤情報を流している人たちは「Lancet、New England Journal of MedicineやJAMAのようないわゆる一流誌は企業からお金が出ていて中立ではない」というのですが、学問・研究の世界でずっと過ごしてきた私が見る限り、これらの雑誌はきわめて中立であり、内容的にもレベルが非常に高く、信頼性には高いものがあります。彼らは、自分に都合の悪い知見が出てくると、すぐに「どこかからお金が出ている」、とか、「お金で買収されている」とか「言論統制がなされている」などと言うのですが、科学の世界ではほぼそのようなことはありません。科学的エビデンスを軽視して、いい加減な情報を流して貰っては困ります。

Cancer is a major contributor to global disease burden, with increasing numbers of cases and deaths forecasted up to 2050 and a disproportionate growth in burden in countries with scarce resources. The decline in age-standardised mortality rates from cancer is encouraging but insufficient to meet th...

ハンチントン病は、特定の遺伝子変異によって起こる遺伝病です(第四染色体上の特定の遺伝子に変異が入ることによって、Huntingtinと呼ばれる特定のタンパク質が多量に作られるようになる)。Huntingtinタンパク質は神経細胞の中で凝集し...
25/09/2025

ハンチントン病は、特定の遺伝子変異によって起こる遺伝病です(第四染色体上の特定の遺伝子に変異が入ることによって、Huntingtinと呼ばれる特定のタンパク質が多量に作られるようになる)。Huntingtinタンパク質は神経細胞の中で凝集して毒性を発揮して、神経細胞を殺してしまいます。特に大脳中心部で神経細胞が脱落してきて、その結果、進行性の不随意運動や認知力低下などが現れてきます。30-40代で発症し、いったん症状が現れ始めると進行が早く、患者さんは日常生活ができなくなり、やがて亡くなります。しかし、現時点では良い治療法がありません。
このハンチントン病に対して、遺伝子治療を用いることにより世界で初めて病気の進行を遅らせることに成功した、とのニュースがイギリスから入っています(https://www.bbc.com/news/articles/cevz13xkxpro)。
残念ながら、治るのではないのですが、症状の進行を4分の3ぐらい抑えることに成功したようです。ということは、たとえば1年で進む症状を4年程度にまで遅らせられる、いうことになるので、患者さんには大きな朗報であり、さらに有効な治療法が出てくるまでのいわば有効な「つなぎ」ともなり得ます。
方法としては、ウイルスを使って特定のDNA配列を患者の脳内の特定の部位(尾状核と被殻)に送り込み、そのDNAから出来るマイクロRNAが異常蛋白質の産生を止める、というものです。このためには手術でマイクロカテーテルを差し込み、そこから特定のDNA配列を含むウイルスを注入するのですが、ウイルスが正確に部位に到達しないといけないので、手術自体が16時間以上かかるとのことです。これまで29名の患者がこの方法による治療を受け、多くの方で病気の進行が4分の3ぐらい抑えられたとのことです。また、入れたのはDNAでしかも神経細胞に入れているので、かなり治療効果が長く続くのではないかと期待されています。
まだ論文の形で結果が報告されているのではなく、BBCニュースでの発表という段階ですが、このまま良い結果が出続けていってくれればと思います。医学は日進月歩の世界です。

「サイクリングで認知症リスク減少か?」というニュースが出ています。もともとの論文はJAMA Network Openに出たもので(https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullar...
24/09/2025

「サイクリングで認知症リスク減少か?」というニュースが出ています。

もともとの論文はJAMA Network Openに出たもので(https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2835115)、イギリスのバイオバンクのデータを中国の研究グループが解析した結果です。

元の論文を読んでみると、あまり運動をしない非活動性の人たちと運動を日常的にする活動性の人たちを比べて、歩くよりも自転車に乗る習慣がある人たちのほうが、若年性認知症(65歳よりも前に発症するタイプ)も晩期発症型認知症(65歳以降のもの)も、どちらの発症リスクも低くなるということを示しています。

ただし、この論文にはいくつかの問題があります。まず調べられたデータは2006-2010年に得られたもので、今から15-20年も前の古いものです。でも、それ以来、交通機関などが大きく変わり、それに伴い、われわれの生活習慣、運動習慣も大きく変わってきています。したがって、そんな前のデータが今になってもそのまま当てはまるのか、ちょっと心配なところがあります。また、これは純然たる観察研究であって、自転車に乗る習慣のある人では認知症リスクが少ない傾向があることはわかりますが、これは単なる相関を示しているだけで、因果関係を示しているわけではありません。それに、そもそも自転車に乗れる人は乗れない人よりももともと健康である可能性もあります。それから、何も自転車でなくても、他の体を動かすスポーツ活動でもいい可能性がありますが、その点については調べられていません。

この記事にはそのような問題点はあるものの、まあ、もっとおおらかに考えて、「自転車に乗るなどのからだを積極的に動かす運動そのものが、心血管状態の改善や脳への血流増加、神経可塑性のサポート、代謝の改善をもたらし、結果的に認知症のリスクを低減する」と考えたらいいのかもしれません。

私個人の意見としては、認知症のリスク軽減にもっとも有効なのは、積極的にからだを動かすこと、そして、本を読む、人と話す、文章を書く、などして頭を使うこと、これらをあわせてバランスよく行うことだと思っています(フェイスブックへの投稿もその作業の一つかもしれません😂)。
https://www.cnn.co.jp/fringe/35238276.html

自転車は地球にも懐にも健康にも良いだけではない。最近の研究によれば、車や電車ではなく自転車で移動することは、認知機能の低下を防ぐ効果がある可能性があることがわかった。

アスピリンは一般的に良く使われる解熱鎮痛剤です。この薬剤は、シクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素を阻害することにより、その効果を発揮します。低用量(1日75-162 mg)では血小板のCOX-1を阻害し、血小板凝集を抑制するために、血栓...
24/09/2025

アスピリンは一般的に良く使われる解熱鎮痛剤です。この薬剤は、シクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素を阻害することにより、その効果を発揮します。低用量(1日75-162 mg)では血小板のCOX-1を阻害し、血小板凝集を抑制するために、血栓形成の予防に用いられます。また、高用量(1回、330-660 mg)ではCOXを介するプロスタグランジン産生を抑えることにより、解熱、鎮痛、抗炎症作用を示します。
これまで、低用量アスピリン服用により、大腸がんを含む固形がんの発症リスクが下がることが何度か報告され、私のFBポストでも紹介してきました。
https://www.facebook.com/masayuki.miyasaka.9/posts/pfbid0oGpUZKrHF1bf6cvKPBKcXDLV7mQ6GPCwA2XDATEYUpyDzgULc6nnV5cEHaQpdpGzl
また、アスピリンががん細胞の転移を抑えることについても紹介しています。
https://www.facebook.com/masayuki.miyasaka.9/posts/pfbid0y26GpodxARdmuaQVcw3hJX7RpHWiyXbsmAoZKEHUeWVgsqg5S1aGFYSFXHSFGzGJl
今回、北欧の研究グループが、アスピリンが大腸がんの再発を抑えることを新たに報告しています。New England Journal of Medicineに載った論文です(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2504650)。

大腸がんの中には細胞内の代謝経路であるPI3K経路に変異を持つものがあり、そのような大腸がんを対象として、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランドの33病院で調査が行われました。対象となった患者の37.0%にPI3K経路に変異があり、その患者群についてアスピリンの効果について対照群と比較検討されました。アスピリンの投与量は160 mg/dayで、3年間、毎日投与でした。その結果、1枚目の図に示すように、3年目の時点での累積再発率はアスピリン群で7.7%、プラセボ群で16.8%と、明らかにアスピリン群では再発が抑えられていました。また、3年間の無病生存率を見ても、アスピリン群で89.1%、プラセボ群で78.7%と、アスピリン群のほうが高く、アスピリンが大腸がんの再発を抑えていることが示唆されました。一方、アスピリンには出血傾向をもたらすなどの副作用があるのですが、この研究における重篤な副反応出現率はアスピリン群で16.8%、プラセボ群で11.6%だったので、副作用は一定程度以内でした。

これまでにも、2枚目の図に示すように、アスピリンはいくつかの種類の固形がんの発症リスクを明らかに下げることが報告されています。ただし短期間の服用では効果が見られず、3枚目の図に示すように5年間ぐらいの期間の投与が必要とのことです(どちらも2011年の報告です)。

私自身も、ここ20年以上になりますが、低用量アスピリンの処方を受けています。ただし、アスピリンの効果は個人差があり、低用量使用でも血小板抑制が効きすぎて出血傾向が出る人も居て、そうなると胃や脳で出血する可能性もあり、この薬剤は誰にでも良い効果をもたらすとは限らないようですが、注意をして使うと、上記のような効果が得られることもあるようです。

アスピリンの歴史は古く、開発されたのは1897年のことで、ドイツ・バイエル社のフェリックス・ホフマンによってアセチルサリチル酸(アスピリン)が合成されました。そのような19世紀末に開発された歴史のある薬剤に思わぬ効果があることがわかってきています。温故知新(故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る)という言葉を思い出しました。

加糖飲料とはグルコース(ブドウ糖)やフルクトース(果糖)を添加した飲み物の総称です。清涼飲料水、炭酸飲料、スポーツドリンクなどがこれにあたります。糖分が多いので、摂りすぎると血糖値が急に上がったり、慢性疾患のリスクが高まったりするだけでなく...
22/09/2025

加糖飲料とはグルコース(ブドウ糖)やフルクトース(果糖)を添加した飲み物の総称です。清涼飲料水、炭酸飲料、スポーツドリンクなどがこれにあたります。糖分が多いので、摂りすぎると血糖値が急に上がったり、慢性疾患のリスクが高まったりするだけでなく、最近では特に若年者での大腸がんの発症リスクが高まることが報告されています。
これに関連して、最近号の専門誌Nature Metabolismに、加糖飲料が大腸がん細胞の運動能を高めてからだの中で転移するリスクを増やすことを示す論文が出ています。アメリカの研究グループによる仕事です(https://www.nature.com/articles/s42255-025-01368-w)。
この研究では、大腸がん細胞に加糖飲料で含まれているような高い濃度のブドウ糖と果糖の混合物を試験管内で加えると、細胞の運動能力が高まり、大腸がん細胞をマウスに投与する際に同時にグルコースとフルクトースを投与すると、がん細胞の体内で転移する頻度が明らかに高まっていました。そのメカニズムについて調べたところ、少し複雑な話ですが、グルコースとフルクトースの組み合わせはソルビトール脱水素酵素(SORD)という特定の酵素を活性化することにより、NAD⁺/NADH比を上昇させ、この酸化還元反応の変化は解糖系活性を促進し、それがメバロン酸経路の活性化を促進して、最終的に大腸がん細胞の運動性と転移を促進する、ということが分かりました。
ただし、調べたすべての大腸がん細胞でこのようなことが見られたのではなく、一部の大腸がん細胞株ではこのようなことが見られませんでした。しかし、転移が高まった細胞株で調べる限り、グルコースとフルクトースの組み合わせはソルビトール脱水素酵素(SORD)という特定の酵素を活性化して、それが結果的に大腸がん細胞の運動性と転移能力を高めていた、ということがわかってきました。
日本でも、小中高生の間では加糖飲料が大人気ですが、大腸がんは怖い病気です。上の結果がそのままヒトにあてはまるかどうかはわかりませんが、加糖飲料の摂りすぎは特に若年者での大腸がんの発症リスクが高まることが分かっているので、今回の報告を見ると、やはり加糖飲料は摂りすぎないようにしたほうが良さそうです。

SNS上では、新型コロナワクチンはバッチによって危険なものがある、などと言っている人たちが居ますが、対照群を設けていない単なる観察結果に基づいたもので、エビデンスとして極めて薄いものです。これに対して、デンマークからの報告では、しっかりと対...
22/09/2025

SNS上では、新型コロナワクチンはバッチによって危険なものがある、などと言っている人たちが居ますが、対照群を設けていない単なる観察結果に基づいたもので、エビデンスとして極めて薄いものです。
これに対して、デンマークからの報告では、しっかりと対照群を設けて調べたところ、ファイザーワクチンに関してはバッチ間で安全性に関して有意な差は見られず特に問題がない、という結論が出ています。
サイエンスでは、実験群の結果だけで何かを言うのではなく、対照群で得られた結果と比較検討した上で結論を出すことが大事です。それが科学的エビデンスというものです。

Objectives The safety of the BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine has been extensively evaluated since the global rollout began. While serious adverse events are rare, safety issues continue to arise. Thi...

今、初期のアルツハイマー病の進行を遅らせるとして、レカネマブなどの抗体医薬がよく用いられていますが、実は治験のデータに問題がある可能性があること、さらには、副作用がかなりの頻度で出ること、などから、Natureのオンライン9月17日版のNe...
18/09/2025

今、初期のアルツハイマー病の進行を遅らせるとして、レカネマブなどの抗体医薬がよく用いられていますが、実は治験のデータに問題がある可能性があること、さらには、副作用がかなりの頻度で出ること、などから、Natureのオンライン9月17日版のNews欄では、その使用に疑問が投げかけられています。
記事のタイトルは「今、問題になっているアルツハイマー病の新薬は、希望を持たせるもののその代償は大きい-抗アミロイド療法として知られるアルツハイマー病の新薬は、病気の進行を遅らせる可能性があるものの、脳出血や脳卒中様症状といった深刻なリスクも伴う」です。
レカネマブというのは、アルツハイマー病の進行を遅らせるとして使われている抗体医薬です。通常、体重に合わせた量を2週間に1回、点滴で投与します。レカネマブは、脳内のアミロイドβという原因物質を取り除くことで病気の進行を抑制し、認知機能の低下を緩やかにする、とされているのですが、問題は、投与した患者のかなりで脳の腫れや微小出血が見られることで、そのことから、本当に初期のアルツハイマー病に対する医薬品として適当なものなのか、問題になっています。これに加えて、アルツハイマー病の原因がアミロイドβの蓄積ではなくてタウをはじめとする他の物質の蓄積によるものであるという説もあり、余計にレカネマブをはじめとする抗体医薬の使用の妥当性に対して疑問を呈する人たちの数が増えてきています。今後も継続して注意して見ていくべきことのようです。

New Alzheimer’s drugs known as anti-amyloid therapies may slow disease progression—but they also carry serious risks, including brain bleeds and strokelike symptoms.

おそらくそういうことであろうとは思っていましたが、うーんとうなるような報告が最新号のScienceに出ています。それによると、「大気汚染は認知症リスクの上昇に直接関連している。レビー小体型認知症やパーキンソン病を発症しやすい人の場合、長期的...
09/09/2025

おそらくそういうことであろうとは思っていましたが、うーんとうなるような報告が最新号のScienceに出ています。

それによると、「大気汚染は認知症リスクの上昇に直接関連している。レビー小体型認知症やパーキンソン病を発症しやすい人の場合、長期的な大気汚染への曝露は、これらの疾患の発症を加速させる」とのことです。この論文に関する詳しい説明は岐阜大・下畑先生がFBに出しておられるので、興味のある方はそれをご覧ください(https://www.facebook.com/shimohata/posts/pfbid0NuJdejANQUjpbq54c3x21hft2qyc455hqs2NVxQYiodfT4wGgcfjXnANkd73ssJZl)。

以上は、ほとんどがマウスで行われた実験で、ヒトの場合とは少し違う条件で行われてはいますが、実験動物レベルでは明らかに、大気汚染、特にPM2.5が、もともと素因をもっている個体に働いて、レビー小体型認知症やパーキンソン病を誘発するようです。また、ヒトでもすでにレビー小体型認知症やパーキンソン病を発症した人たちについて調べてみると、長期のPM2.5曝露によって、これらの神経変性疾患において入院リスクが上昇し、特に入院を必要とするような重度のレビー小体型認知症の発症リスクは12%上昇していたとのことです。

最近、日本でもPM2.5による大気汚染が顕在化していますが、認知症リスクの上昇につながるとなると、日本だけでなくて全地球的な取り組みが必要になってきます。お金儲けだけを考えるのではなく、エコ活動(環境に配慮し地球に与える影響を減らすための活動)も大事です。
https://www.nature.com/articles/d41586-025-02844-9

Long-term exposure accelerates the development of Lewy body dementia and Parkinson’s disease with dementia in people who are predisposed to the conditions.

昨日、新型コロナ感染により急性腎疾患、慢性腎疾患ともに発症リスクが高まることを紹介しました。https://www.facebook.com/masayuki.miyasaka.9/posts/pfbid0zyfFwArFMoNnRrjW9...
07/09/2025

昨日、新型コロナ感染により急性腎疾患、慢性腎疾患ともに発症リスクが高まることを紹介しました。
https://www.facebook.com/masayuki.miyasaka.9/posts/pfbid0zyfFwArFMoNnRrjW9ybKyRZpbZH5NaHzsveAQAhsLVPT3MgJqtB5W7H4d55jRMZKl
そこで紹介した総説論文の中で、なぜそういうことが起きるのか、メカニズムについて詳細に記載されていますので、それについて説明しましょう。
それによると、新型コロナウイルスはいくつものメカニズムを利用して腎臓の糸球体(細い毛細血管が糸玉のように丸まった小器官で、腎臓の濾過(ろか)機能を担う「ろ過装置」)が傷害されることが示されています。
それをまとめたのが1枚目の図です。
新型コロナウイルス自体が (1) 血管内で炎症を起こす、(2) 腎臓の血流低下を介して組織の低灌流状態が生まれる(血流が組織内をうまく流れなくなる)、(3) 血管の内皮細胞が機能不全を起こす、(4) 血管が傷害される、(5)微小血管で血栓が起こり組織障害が起きる、(6) 血液凝固系の異常が起きる、(7) 血液中の補体系の異常が起きる、(8) 糸球体を構成する細胞の一つであるポドサイトが傷害される、など、複数の状態を腎臓に引き起こします。
その結果、2枚目の図に示すように、新型コロナウイルスは腎臓に直接的、間接的に働いて、腎糸球体を傷害し、それが慢性腎臓病の原因となります。そして、この状態が起きる明らかなリスク因子があります。それが、(1)高齢、(2)男性、(3)肥満、(4)栄養不良、(5)高血圧、糖尿病などの持病があること、(6)以前にコロナ重症化あるいは入院を経験している、(7)過去に腎疾患をわずらっている、などです。
ここまでさまざまなことが分かっているのに、不勉強な人たちは相変わらず「新型コロナは大したことがない、風邪程度の病気だ」とつぶやき続けています。何かおかしくありませんか?

新型コロナ感染により腎障害が起きたり、腎障害が起きた後に新型コロナ後遺症(long COVID)が現れてくることがあります。専門誌Nature Reviews Nephrologyの最新号に、新型コロナ後遺症と腎障害の関係が詳細に解説されて...
06/09/2025

新型コロナ感染により腎障害が起きたり、腎障害が起きた後に新型コロナ後遺症(long COVID)が現れてくることがあります。

専門誌Nature Reviews Nephrologyの最新号に、新型コロナ後遺症と腎障害の関係が詳細に解説されています。以下はその抄録の一部です。

「新型コロナは大した病気ではない」とか「ワクチンは不要だ」と言い続けている人たちに是非読んで貰いたいものです。

「新型コロナ感染症は急性腎障害を引き起こす可能性があり、さらに、いくつかの論文では新型コロナ感染によって慢性腎臓病(CKD)リスクが上昇し、また、CKD自体が新型コロナ後遺症を顕在化させる可能性が示唆されている。さらに、CKD患者では新型コロナが重症化しやすく後遺症の発症リスクが高まる。(中略)。これに対して、新型コロナワクチン接種は、新型コロナ感染と新型コロナ後遺症のリスクを低減し、特にCKD患者などの脆弱な集団を保護するために重要である。」

つまり、腎臓の専門家たちの意見では(1)新型コロナ感染は急性腎障害や慢性腎障害の原因となる、(2)慢性腎障害があると新型コロナが重症化しやすく、さらに後遺症のリスクが高まる、(3)一方、新型コロナワクチン接種はこれらのリスクを軽減させる、ということなのです。新型コロナはこれらの大変な合併症を引き起こす病気なのです。

いいですか、大した勉強もせずに「新型コロナは大した病気ではない」とか「ワクチンは不要だ」と言い続けている方々、是非、しっかりと専門家による最新の意見を聞いてください。

Here, the authors describe the effects of coronavirus disease (COVID) on the kidney, including long COVID in patients with chronic kidney disease. They also discuss potential associations between COVID-19 and glomerular diseases and the impact of severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 vacci...

前に作成した動画を作り直して「宮坂昌之が教える認知症予防策としてのブレインウオッシング(脳洗い)体操」という題名にしました。頭からの老廃物排出をうながして認知症を予防することを目的とした一連のストレッチ体操です。毎朝この体操をすると、目が覚...
04/09/2025

前に作成した動画を作り直して「宮坂昌之が教える認知症予防策としてのブレインウオッシング(脳洗い)体操」という題名にしました。

頭からの老廃物排出をうながして認知症を予防することを目的とした一連のストレッチ体操です。毎朝この体操をすると、目が覚めて、からだ全体がすっきりして、頭が働きやすくなってきます。背筋も首筋も伸びます。腰の筋肉も使うので腰痛防止にもなります。

興味のある方はご自分で試してください。なお、個々の運動の順番や回数は、適宜、自分流に変えていただいても結構です

加齢とともに認知症になる人たちが増えています。認知症の中でもっとも多いのがアルツハイマー病です。この病気では脳の中に老廃物が溜まり、神経細胞が破壊され、そのために脳の働きが悪くなります。アルツハイマー...

経口糖尿病治療薬であるメトホルミン(日本での商品名はメトグルコ、メルビンや、グリコラン錠)が新型コロナ感染症の症状進展を抑えるのに有効かもしれないという報告がこれまでいくつあり、臨床試験の進展が期待されていたのですが、今回の結果ではあまり良...
03/09/2025

経口糖尿病治療薬であるメトホルミン(日本での商品名はメトグルコ、メルビンや、グリコラン錠)が新型コロナ感染症の症状進展を抑えるのに有効かもしれないという報告がこれまでいくつあり、臨床試験の進展が期待されていたのですが、今回の結果ではあまり良い効果ではありませんでした。専門誌JAMA Internal Medicineに載った論文です(https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2836528)。

アメリカで、軽症から中等症の新型コロナ患者において、メトホルミンがプラセボと比較して新型コロナ患者の有症状期間を短縮するかどうか、無作為化臨床試験が行われました。
調査の対象となったのはオミクロン株(JN.1)が流行している時期に感染した約3千名です。その結果、持続的な回復までの期間の中央値は、メトホルミン投与群(1,500 mg, 6日間)で9日、プラセボ投与群で10日(95%CI、9~10日)と有意差はありませんでした。

メトホルミンは他の作用として、アンチエイジングや体重減少など思わぬ効果があるとされ、注目されてきた薬剤なのですが、新型コロナに関してはあまり大した効果がないようです。

住所

長野県上田市大手2-1/5
Ueda-shi, Nagano
386-0024

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