
14/04/2024
『最初は毒のようで
結末は甘露のような幸福
それはサットヴァ(純質)的な幸福である』
- バガヴァッド・ギーター: 第18章37節 -
アナンさんと初めてお会いした時、
私はアナン邸で行われた自由大学講座
『インドに学ぶスパイス学』受講生の1人でした。
同期にヨガ関係者が何人か揃った事から、
朝ヨガをしてから調理実習をしよう!
と提案してくださり、
トントン拍子で実現に至りました
さて、当日の朝
アナン邸の玄関扉をガラガラと開け、
おはようございます〜
と入っていくと、
バラッツ先生とキュレーターのまっちーさんの姿はなく、、
そこにいらしたのは
そこはかとなくただ者ではない感を漂わせた
年配のインド人男性。
魂の奥を見抜くような、あの薄い瞳で私を見つめています。
その視線にひるむ私に
その方は厳かに言いました。
「荷物を置いてそこに横になりなさい。まずはそれからだ。」
有無を言わせぬその迫力に素直に従ったものの
心が落ち着くどころか、心拍数が急上昇。
瞑想ではなく迷走する頭で
あれこれ想いを巡らせた結果、
その方がバラッツ先生のお父様であり、
この古民家の主 アナンさんだ!と
思い当たりました。
今日のヨガクラス開催は許可を得ている事などしどろもどろに経緯を説明した私に、
そうか、とアナンさんは頷かれて その場を後にされました。
動揺しつつも何とかヨガクラスをやり遂げ、
楽しそうに遅れてやって来た
バラッツ先生とまっちーさんに
涙目で事情を話したことを今でも鮮明に覚えています。
最初の出会いはそんな緊張感漂う苦い体験でした
それ故に
私にとってアナンさんは
お会いする度に背筋を正すような、そんな存在でした。
その後 ご縁があって月1回のヨガクラスをアナン邸で開催させていただくようになりました。
開催日の朝はアナンさんの
「ワッツニュー? 最近何がありましたか?」から始まります。
私がどのような話をするかによって
お叱りを受けたり、教えを受けたり、時には何も知らない私を嘆いたり(笑)
もっとヨガのクラスをやりなさい
男性にヨガをやらせなさい
次はいつ来るの
毎日来なさい
会社なんてやめてここに来ればいい
今となると温かい言葉ばかりが思い出されます
その内
アナンさんが私の話に笑ってくれることも多くなり、私も普段からの自分で接するようになると
「この人はいつも笑っているんだよ」
可笑しそうに笑ってくださいました。
そんなアナンさんの告別式、
バラッツさんの顔を見てから込み上げてしまい、
弔辞をされた皆さんのお話がさらに拍車をかけてずっと泣いていた私ですが、
最後はアナンさんに
いつものように笑顔で感謝を伝えること、
何とかできたように思います。
私にとってヨガの師 Guruは、アナンさんを指します。
時に突拍子もなく発せられるアナンさんの言葉の裏には、いつもヨガの哲学に書いてある深い意味が隠されていました。
例えインドに行ったとしても会えるかどうかわからないGuruと呼べる方に、
日本の鎌倉で出会えた私は
本当になんて幸運だったのでしょう
告別式の後、
語り尽くせぬアナンさんの思い出をおしゃべりして帰途につきました。
アナンさんご本人の姿は見えないけれども、
きっとどこかで見ていて、
私たちがアナンイズムを受け継ぎ、
次の世代にバトンを渡すの期待してくださっているのだと感じました。
これから先、
背中を押して良かったとアナンさんに思ってもらえるように、
私なりに歩みを進めていきたいと思います。