07/11/2016
2016年11月4日(土)9:30~12:00、フクダ電子本郷新館にて、第1回シンポジウムが開催されました。
約50名の方にお申込みを頂き、ご参加の皆様をはじめご協力いただいた企業の方々により、とても華やかな会場となりました。
はじめに、順天堂大学医学部病理・腫瘍学教授の樋野興夫先生より「Medical Town, Medical Villageを構築する」というテーマでご講演頂きました。樋野先生は、医療者と患者との隙間を感じ困っている方々や、悩みを打ち明ける場を求める患者さまが、安心して立ち寄れる場として、「がん哲学外来」をはじめられました。そして、高度医療が中心となる大学病院がおおく存在する御茶ノ水のようなMedical Townと、現在は過疎化しており医療を届けるのが難しい地域などに、Medical Villageを構築すべく活動されております。現在は、栃木県日光や群馬県の嬬恋村、そして樋野先生の故郷である鵜鷺の3か所に、Medical Villageとして少しずつ形を成してきています。求められているのは高度な医療のみではありません。患者さまとの隙間を埋めるような活動なのだと、改めて考えさせられる講演でした。
2演題目として特別講演として、厚生労働省医政局地域医療計画課の木下栄作先生にご講演頂きました。「これからの我が国の地域医療について」という事で、日本全体での地域医療の現状や、今後取り組むべき医療提供体制など、広い視点でお話しいただきました。このような政策は、国や自治体、各医療機関だけでは進めることができません。木下先生がおっしゃっていた「国民の責務」を国民がしっかり認識し取り組むことが必要であり、これこそ日本における「医療維新」ではないかと感じました。そして、国民一人一人に認識してもらうためには、まずは私たち医療従事者としてできること、すなわち医療の隙間を埋めるような活動が重要であると感じます。
最後にインタラクティブレクチャーとして、コーディネーター2名・演者3名と樋野先生、木下先生の計7名でディスカッション形式のレクチャーが行われました。国立国際医療研究センターの待鳥先生と、恐縮ながら私株式会社DDOゆい訪問看護ステーション布川の司会により進行させて頂きました。まずは3名の各演者の皆様より、現在の取組みと今後の課題をご発表頂きました。
一人目の演者、日本医科大学付属病院の安部節美先生は、現在の取組みとして退院支援強化、ケアマネージャーとの連携、退院支援ナースの配置、そして退院支援における医師との連携があげられました。今後の課題としてはケアマネージャーとの連携、在宅医・訪問看護ステーションとの連携を深めていきたいとのことでした。
二人目の演者、訪問看護ステーションきょうわの内田美行先生より、きょうわ会の成り立ちと訪問看護ステーションきょうわの取組みについてご紹介いただいた後、今後の取組みとして往診医の導入と患者の意思決定支援がポイントとなるとお話しいただきました。
3人目の演者、富士通株式会社ヘルスケアビジネス推進統括部の岩津聖二先生より、地域連携を強化するためのICTによるサポートと、それらを取り巻く問題点や今後の取組みについて、企業の視点からお話しいただきました。
今回は医療機関、訪問看護ステーション、そしてサポートしていただく企業の3方向の視点からご講演頂くことで、問題点の明確化と解決に向けた取り組みについて、双方の理解を深めることができたのではないでしょうか。
今回のシンポジウムでは、国政からの視点のみでなく、特に文京区という一つの単位としての取り組みについて理解を深める良い機会でした。それぞれに異なる地域の特性があり、それに見合ったサービスや医療を検討できる場として、本学会で多くの交流、連携、そして学術面としての医学研究を発展させていけるよう取り組んでいきたいと思います。
本シンポジウムの内容については、後日学会誌にてご報告させて頂きます。
末筆ながら、本学会の取組みのご協力頂きました皆様に御礼を申し上げますとともに、皆様の今後のご発展とご活躍をお祈りし、ご報告とさせていただきます。
2016年11月7日(月)
日本地域医療連携システム学会 理事 布川麻代