11/02/2026
というわけで、
次の物語の主人公が飲んだと思われるレメディを当ててみてください。
【黙ることを覚えた女】
彼女は、黙ることを覚えて生きてきた。
それは美徳で、思いやりで、
女として正しい在り方だと教えられて。
女は前に出ないもの。
自分の気持ちは後回し。
空気を読むことが、いちばん大切。
「あなたは、よく気がつく子ね」
そう言われるたび、
彼女は自分の中の何かを、少しずつ引っ込めていった。
怒りは、わがまま。
不満は、未熟。
意見を持つことは、迷惑。
だから彼女の言葉は、いつもやわらかい。
「私の気にしすぎだと思います」
「大したことではないので」
「仕方がないですね」
本当は、苦しかった。
選ばれなかったことも。
後回しにされたことも。
断れなかったことも。
けれど、それをそのまま言う日本語を、
彼女は知らなかった。
ある日、友人に小さな瓶を渡された。
透明な水に、ほんのわずか、花のエッセンスが入っているらしい。
「よくわからなくてもいいから」
そう言われて、彼女は飲み始めた。
一日に数滴。
味はしない。
何かが変わった実感も、最初はなかった。
ただ、ある日、言葉が喉につかえた。
「私の受け取り方の問題で……」
そこまで言って、続かなかった。
代わりに、しばらく沈黙してから、
彼女は自分でも驚く日本語を口にした。
「それをされると、私は少し傷つきます」
空気が止まった。
彼女の心臓が早く打つ。
でも、何も壊れなかった。
誰も怒鳴らなかった。
場も崩れなかった。
その夜、家で娘が言った。
「ママ、今日疲れてる?」
彼女は、少し考えてから答えた。
「疲れたよ」
「でもね、嫌だって思っていいことだった」
娘は目を丸くする。
「嫌だって、言っていいの?」
「言っていい」
「ママも?」
「ママも」
娘は、少し迷ってから言った。
「それ、私は嫌だな」
胸が、きゅっとした。
昔なら、言わせなかった言葉。
でも彼女は、うなずいた。
「うん」
「言ってくれてありがとう」
その瞬間、彼女は思った。
黙ることで守ってきたものも、確かにあった。
でも、黙り続けることで、失ってきた自分もいた。
小さな瓶の水は、今日も味がしない。
でも、彼女の日本語は、少しずつ変わってきている。
「私は、そう感じた」
「今日は、無理です」
「嫌だと思いました」
それは、誰かを傷つける言葉ではない。
ただ、自分に戻るための言葉だった。
彼女はまだ、練習中だ。
黙ることを覚えた女は、
いま、話すことを覚え直している。
【黙ることを覚えた女】
レメディから物語を作ってみようかな、と思いました。
10年前くらいに、レメディを擬人化したストーリーのテキストをつくりました。
あのときは高校生たちの物語。
そしてシングルレメディでした。
今回は、気が向いた時に
いくつかのレメディを混ぜてみます。
老若男女いろいろで、創作を楽しんでみます。
小説を書いて楽しんでいる大学生に、心理描写にリアリティが生まれるから、心理学を学びなさい、と伝えたことで、自分も書きたくなっちゃった。
ただそれだけの遊びです😊
🌿🌿🌿🌿🌿
「私の気にしすぎです」
「仕方ないですね」
「大丈夫です」
そうやって生きてきた女性が、
ある日、小さな瓶に入った花のエッセンスの水を飲み始める。
味はしない。
劇的な変化もない。
けれど、ある日ふと、
日本語が変わる。
「それをされると、私は少し傷つきます」
怒らずに、
責めずに、
ただ、自分の感覚を言葉にする。
黙ることで守ってきたものもあった。
でも、黙り続けることで失ってきた自分もいた。
そんな物語を書きました。