
29/04/2025
『地図と拳』読んだ。
架空の満州の村の興亡を、日露戦争から終戦までの半世紀にわたって描く本。そこに関わった人たちを描く群像劇なんだけど、時代を作った英雄にはフォーカスせず、変化の波に揉まれて負け犬っぽく生きる人たちの人生が交わるうちに、なんとなく戦闘と歴史が立ち上がってくる様子を丁寧に追いかけているのが良いですねぇ。
特に派手な展開はないんだけど、気功で銃弾に負けない肉体を手に入れた男、存在しない島の謎、戦時下の大泥棒の話とか、戦時中のリアルな描写を交えつつも、途中でマジックリアリズム的な大嘘をぶち込んでくるので、最後まで楽しく読めました。戦争ベースの『百年の孤独』ですな。
そんなストーリーを追ううちに、国家、歴史、文化、戦争みたいなもんが、割と抽象度が高めに浮かび上がってくるあたりが読みどころ。「戦争はヒドい!残酷だ!」って印象で終わるんじゃなくて、「いろんなものが虚構だよなぁ」とか「歴史は平凡な人生の絡み合いだなぁ」みたいな畏敬の念が沸いてくる、良い読書でありました。
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