安部敬太社会保険労務士事務所

安部敬太社会保険労務士事務所 障害年金の請求と不服申立ての代理をしています。

21/08/2025

今年春、マスコミで話題となった障害年金不支給増問題は、根本的には障害年金を支給するか否かを判断する、活動制限や参加制約の程度がまったくはっきりしていないことに原因がある。障害により仕事ができない状態や自立した稼得所得が得られない程度であれば2級を支給するという明確な基準を作るべきだ。
明文化したそのような基準がまったくないから、障害年金を支給するかどうかの判断は、最終的には担当する認定医や事務官の頭の中にあるモノサシに委ねられる。こういう状況だから、障害年金の認定を厳しくしようという雰囲気が出てくれば、認定はそれに流されもする。今回の不支給増も明確な基準がない中で、恣意的で不透明な認定がなされた結果である。日本の障害年金の認定はこの根本問題を改革しない限りはずっと不公平で不公正なまま続くことになる。それによって障害がある人が生きていくうえで欠かすことのできない、所得保障制度から排除される現実が今この時も生じている。
障害年金法研究会では、神奈川大と共済で、今年も、10月4日に10周年記念シンポを開催し、障害年金の改革について話し合います。現地かオンラインかで、参加を広く呼びかけます。拡散もお願いします。
https://tinyurl.com/28boq2r5

11/08/2025

2025/2/28の令和5年(厚)378号社会保険審査会裁決は、「新型コロナ感染症、急性呼吸不全、新型コロナウイルス感染後遺症」のケースについて呼吸器障害2級を容認した。裁決は次のようにいう。▼(亡)Xは、審査官の決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2月が経過する前の令和年月日に死亡したことから、審査請求承継人になりうる((亡) の妻)が、当審査会に対し、再審査請求をした。…自覚症状として、体動時呼吸困難が「著」、咳、安静時呼吸困難が「有」、他覚所見として、肺性心所見、ばち状指が「有」、ラ音は「一部」とされているが、自覚症状の痰、胸痛、喘鳴、他覚所見のチアノーゼはなく、栄養状態は「良」、脈拍数は81であるとされ、胸部X線所見では、胸膜癒着、胸郭変形はないが、高度の線維化、中等度の不透明肺、蜂巣肺、軽度の気腫化、心縦隔の変形が認められ、1日ℓ/分の酸素吸入を施行しており、同日の動脈血ガス分析では、動脈血酸素分圧が●Torr、動脈血炭酸ガス分圧が□Torr、動脈血◆phがであるとされ、換気機能については記載がなく、活動能力(呼吸不全)の程度についてはゆっくりでも少し歩くと息切れがするとされる「ⅱエ」と、一般状態については、一般状態区分表の「エ」(身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの)と評価され、現症時の日常生活活動能力及び労働能力については、他院転院時には体動時に■L/分の酸素が必要であり、付き添い・見守り歩行となっているものの、今後のリハビリで活動範囲が拡がることは期待できるが、労働能力は軽作業に限られると推測するとされ、予後については、在宅酸素は必須と思われ、労働は軽作業に限られると推測するとされ、備考欄には、転院し、入院加療を継続して同年月日に自宅退院と記載されている。
そして、本件診療録によれば、(亡) の呼吸器疾患の障害の状態は、継続する肺線維化のため肺移植が前提とされる状態であり、リハビリ目的で入院加療が継続されているが、安静時より脈は高めで肺性心所見が認められ、座位などの軽微な体動によりSPO2の低下がみられ、また、リハビリやトイレ移動等の体動時には、呼吸困難が著明となり、SpO2も○%(Dr.J.W.Sevringhausの式によるPaO2に換算すると◎程度)に低下していることが認められる。
これらの事実を総合すると、一般状態は、一般状態区分表の「エ」、活動能力(呼吸不全)の程度も「ⅱエ」と評価され、酸素の継続的な投与を要する状態であり、また、肺移植が予定され、車椅子などでトイレに行く際も酸素の低下が起こり、動作を中断したり、酸素量を増加させなければならないが、このような状態は、△から◇分で安静時の状態に回復するとされている。そして、認定要領において、在宅酸素療法を施行中のものについては、常時(24時間)の在宅酸素療法を施行中のもので、かつ、軽易な労働以外の労働に常に支障がある程度のものは3級と認定するが、臨床症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定するとされていることを勘案すると、呼吸不全で障害等級2級に相当すると認められる例示に該当し、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度に至っていると認めるのが相当である。▼まず、注目したいのは、SpO2をPaO2に換算して容認の重要要素としていること。私が代理した事案では、この換算について「認定基準が動脈血02分圧をSp02の数値から換算表を用いて推定することを許容する趣旨とは解され」ないとして、換算を採用したなかった(平成30年(厚)第72 0号)。この件は裁判となり、2022年4月21日大阪地裁判決(裁判所ウェブサイト)は、この換算を採用し、それも大きな要素として認定日遡及3級を認容している。今回の換算の採用はこの判決も影響しているかもしれない。
そして、保険者は、動脈血炭酸ガス分圧が軽度異常を示している他は異常値なく、今後リハビリで活動範囲が広がり、労働能力は軽作業に限られると推測されており、転院後の入院は廃用症候群によるもので、カルテから心機能改善が伺える、などとして3級を主張したものの、審査会は上記換算にくわえ、一般状態エ、車椅子でトイレに行く時もSpO2低下、胚移植を前提等を理由に(廃用については言及なく)2級を容認している。保険者はあくまで認定基準上の検査数値にこだわり、審査会はもう少し広く障害の状態全体をみたことで判断が分かれたといえるだろう。

12/07/2025

2021年4月30日令和元年(国)1655号社会保険審査会裁決は統合失調症の障害年金の請求について、うつ病の診断につながる顔面から左側頭部にかけての疼痛での受診日を初診日と認めた。裁決は次のようにいう。▼請求人は、左顔面から左側頭部にかけての痛みにより●年●月●日、A整形外科 を受診し薬物療法、低レベルレーザー療法を受けたが、◆月◆日で通院を中止し、その約■か月後の同年□月□日には、同年$月頃から不眠、不安感が出現し、さらに頭痛、億劫さ、気分の沈みが加わり、それらの症状が続いているとしてBを受診し、「うつ病」との診断の下で抗うつ薬を中心とした薬物療法、精神療法を受けていたことが認められる。(医師の補足意見として「A整形外科にて顔面から左側頭部にかけての疼痛で治療しているのはうつ病の初期症状の可能性が高い」との書面も提出されている) 保険者は、請求人が本件初診日であると申し立てている●年●月●日はA整形外科を受診した日であり、当該傷病(統合失調症)と診断された経緯や治療状況、精神科等への紹介の有無を確認することができないとして、同日を本件初診日と認めることはできない旨の意見を述べるがA整形外科への通院が中止となった◆月◆日から約■か月後の同年□月□日に、請求人は、同年$月頃から不眠、不安感が出現し、さらに、頭痛等が加わり、これらの症状が続いているとしてBを受診し、「うつ病(これは、当該傷病と一連の精神疾患であると認めるのが相当である。)」との診断の下で、薬物療法及び精神療法が開始されているのであるから、本件初診日は、請求人がA整形外科を初めて受診した●年●月●日であると認定するのが相当である。
▼審査会が疼痛をうつ病(その後、統合失調症と診断)の初期症状であると認めた点を注目したい。

04/07/2025

面談をしていて、障害年金制度の欠陥を痛感することは多い。
うつ病で障害基礎年金2級の受給権がある人が、両下肢の障害もあり、4つぐらいの傷病(最後の傷病の初診日は厚生年金加入中)が合わさって、歩行が困難になっている。この場合、肢体の障害で2級に認定されることがあるかというと、現状の制度の解釈や認定基準ではありえない。
複数の障害で初めて2級に該当したと認定されると「初めて2級」と認定される。しかし、このケースでは、障害基礎年金2級の受給権があるので、「初めて2級」は適用がない。そうすると、複数の障害により現状2級と認定されても、差引認定で3級になることはあっても、2級になることはない。
条文上は2級の受給権がある人には「初めて2級」は適用されないとははっきり書いてあるではない。2級の受給権があっても、他の複数の障害を合わせて時に初めて2級に該当した時に、「初めて2級」の受給権が発生すると読めないわけではない。そのように解釈して、2級の受給権がある人に対しても、受給権がある障害を除いた複数の障害を合わせた時に2級となれば、「合わせた時に初めて2級」の受給権を認めるようにすべきだ。
「初めて3級」がないことも制度の欠陥である。

27/06/2025

厚労省の不支給急増問題を受けての調査報告書↓
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00198.html
に書かれている主な点。
① 医学的な検査数値等の客観的な指標等がなく、それらを用いないで、原因、諸症状、治療及びその病状の経過、具体的な日常生活状況等により総合的に認定している事案(障害認定基準上の「その他の疾患による障害」の基準に基づいて認定する障害)については、今般の調査結果に基づく精神障害への対応に準じた丁寧な審査に努める(8頁)
② 理由付記の改善(14頁)
③ 判断のポイントを付した具体的な認定事例を作成(14頁)
④ 全ての不支給案件について、複数の認定医が審査する(14頁)。
⑤ 精神障害等(障害認定基準上の「その他の疾患による障害」の基準に基づいて認定する障害を含む。以下同じ。)の令和6年度以降の不支給事案や、精神ガイドラインの目安の下位等級が支給されている案件について、改めて、速やかに、障害年金センターに配置される常勤医師を中心としたチームによる点検を行い、必要なものは、処分を取り消し、改めて支給決定をする(15頁)。
⑥ 複数の認定医の審査結果が分かれた場合に討議する障害認定審査委員会に福祉職等の外部の者の委員会への参画を進める(15頁)。
⑦ 令和4年度及び令和5年度の精神障害等の事案については、両年度の非該当割合は、令和6年度の調査結果の値と比較すると低いが、令和4年4月から、職員による事前確認票に等級案を付すことが始まったことから、上記の点検結果を踏まえ、改めて整理を行う(16頁)。

私のコメントは以下のとおりです。
①→難病などについて述べているもののようだが、「丁寧な審査」とは何か。「その他障害」についてのみこのように言及したのは、「その他の疾患による障害」の基準に基づいて認定する障害について、適正に行われていないなどの問題が確認できたということなのか。
②→事実関係の列挙だけではなく、どうしてその事実関係に基づき、その等級と判断したのかという理由(適用関係)は書かれるのか。内部障害、外部障害、再認定については、「判断の理由が明確に記載されているなど、特段の問題点等は確認できなかった」と言っているが、チャンチャラおかしい。理由がわかるように記載されているケースなど見たことがない。あるなら、示してほしい。認定文書に判断理由が明確に記載されているなら、どうして「決定の理由」は事実関係の列挙だけで、その事実関係について、2級でないとの判断理由をまったく書こうとしないのか。
④→ほとんど期待できない。複数の認定医で審査した事案は結構ある。しかし、その全てが同じ結論。セカンドオピニオンを求められても、2人の医師は結果を出すことが圧倒的。
⑤→全数(要確認)の不支給等案件の点検をするよう。しかし、常勤の認定医は2、3人。点検終了の時期はいつなのか。ここでも精神障害だけでなく、「精神障害等」とあり「その他の疾患による障害」の基準に基づいて認定する障害が含まれていることに注目したい。
⑥→2019年度認定医会議で出された資料によると、複数の認定医が審査した341件中、意見の不一致は7%のみ。④の審査委員会にて討議される案件はほんの少し。なので、ここに福祉職等が関わったとしても、透明性を高めることになるのか。
⑦→「改めて整理」とは? なお、ここも「精神障害等」である。

17/06/2025

厚労省の不支給急増問題を受けての調査報告書↓
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00198.html
精神障害については事務方が記載する事前確認票の等級案欄を廃止するとしている。しかし、難病も含め、内部障害、外部障害についてはそのままということ。
不支給割合が増えているのは精神障害だが、個別の事案でみると、内部障害や外部障害でも公正に認定されているとは言えないケースは多い。
▼特に、「医学的な検査数値等の客観的な指標等がなく、それらを用いないで、原因、諸症状、治療及びその病状の経過、具体的な日常生活状況等により総合的に認定している事案(障害認定基準上の「その他の疾患による障害」の基準に基づいて認定する障害)については、今般の調査結果に基づく精神障害への対応に準じた丁寧な審査に努める(8頁)」とわざわざ言っている。これは裏を返せば、難病などの認定が「丁寧な審査」となっていないことを認めたものだろう。しかも、令和6年度以降の不支給事案について点検する障害種別は、精神障害だけでなく、「「その他の疾患による障害」の基準に基づいて認定する障害を含む」としていて、「その他障害」診断書による不支給事案も点検すると言うのだ。
しかし、だったら、どうしてこのように判断したのか。それを示すべきだ。「その他障害」診断書による不支給割合が増えているのか。それとも客観的基準がない「その他障害」の認定はあまりにもバラツキが大きいと判明したのか。
▼そして、難病などについて「丁寧な審査に努める」というのであれば、精神障害だけ事前確認票で等級案を示すことを廃止するなどというのはツジツマが合わない(やめる方が改善につながるというなら、少なくとも「その他障害」診断書の場合もやめるべきだし、内部障害、外部障害だってやめるべき。厚労省の分析は、全体の話をしつつ、数の多い精神障害の話にいつのまにか収斂していくということが多い。地域差の時もそうだった)。
▼だが、事務方が等級案を示すこと自体が問題なのではないと私は思う。認定医による判断にバラツキが大きかったから事務方も関わることになったという経過がある。でも、そのために事務方が雰囲気として厳しい方向に振れたことで、不支給率が増加したというのが今回の起こったことだろう。
▼根本的に問題なのは事務方と認定医一人や二人だけが決めていることだ。どの事務方、どの認定医に当たるか、その当たり外れで、同じ状態の人でも結果が分かれてしまう。事務方が関われば、組織全体の雰囲気で、今回のような厳しい結果も起こりうる。
広大な砂漠の中の数粒の砂の数のような事案を扱うだけの認定審査委員会に福祉職を参画させるなどというアリバイ的なことはせず、年金機構職員と医師だけが認定する仕組み自体を根本から変えるべきだろう。

厚労省は不支給急増問題を受けての調査結果を発表した。https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00198.html以下などが書かれている。① 精神障害等について、令和6年度以降の不支給事案や目安の下...
11/06/2025

厚労省は不支給急増問題を受けての調査結果を発表した。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00198.html
以下などが書かれている。
① 精神障害等について、令和6年度以降の不支給事案や目安の下位等級が支給されているについて、改めて、速やかに、障害年金センターに配置される常勤医師を中心としたチームによる点検を行い、必要なものは、処分を取り消し、改めて支給決定をする。
② 全ての不支給案件について、複数の認定医が審査する。
③ 複数の認定医の審査結果が分かれた場合に討議する障害認定審査委員会に福祉職等の外部の者の委員会への参画を進める。

①は全数の不支給等案件の点検をするということ、徹底してやるべきだ。ただ、常勤の認定医は2、3人である。その体制でいつまでに点検が終了させるつもりだろうか。急ぐあまりいい加減な点検はゆるされない。
②にはほとんど期待できない。私が請求した事案でも複数の認定医で審査した事案は結構ある。しかし、その全てが同じ結論だ。セカンドオピニオンを求められても、2人の医師は結果を出すことが圧倒的だ。2019年度認定医会議で出された資料によると、複数の認定医が審査した341件中、意見の不一致は7%の25件のみだった。これからすると、③の審査委員会にて討議される案件はほんの少しとなる。なので、ここに福祉職等が関わったとしても、透明性を高めることになるのか疑問だ。
ただ、このようにまったく不十分ではあるが、それでも数ミリはいい方向に進みつつある。これを根本的な改革につなげられるかどうかは私たちの頑張りにかかっている。

このホームページを、英語・中国語・韓国語へ機械的に自動翻訳します。以下の内容をご理解のうえ、ご利用いただきますようお願いします。

08/06/2025

統合失調症についての障害厚生年金に関する初診日を認容した2025年4月23日東京地裁判決文から。▼「原告は、本件診察が行われた平成12年7月17日当時、25歳であり、本件傷病の発症が多いとされる年齢(20歳から25歳)であったところ、当時…上司からの叱責・長時間労働を始めとする厳しい労働環境の下、本件傷病の発症の要因となり得る深刻なストレスにさらされていた…本件診察は、不眠、倦怠感、身体が動かない等の体調不良によるものであり、これらの症状は、本件傷病の前駆期の症状と一致する。/加えて、原告は、遅くともP退職時までには幻聴の症状が生じており、その後、Qで働いていた時には、一日中幻聴、妄想等の陽性症状が生じていたのであって、これらの症状は、本件傷病の急性期の症状と一致する。/そして、P退職後、平成15年8月に統合失調症と診断されるまでの間、原告につき、統合失調症を引き起こすストレス要因となり得るような具体的なエピソードはうかがわれない。それにもかかわらず、原告がPを退職した後、幻聴や妄想等、本件傷病に係る急性期の症状が顕在化し、悪化している。/以上のような一連の事実経過を踏まえると、本件診察に係る症状を単なる仕事上のストレスや過労などと捉えて、本件傷病と断絶して評価することは、極めて不自然かつ不合理なものといわざるを得ないのであり、本件診察時の体調不良は、本件傷病の前駆期の症状であって、その後、急性期に移行して症状が悪化していったと評価するのが医学的にみても自然かつ合理的である。■医師も医学的見地から検討して本件診察に係る原告の症状が本件傷病に基づくものである旨の見解を示していることも踏まえると、本件診察は、本件傷病の前駆期の症状に対して行われたものであると認めるのが相当である。…被告は、仮に、本件診察時において原告に易疲労感等の症状があったとしても、それは本件傷病に限られた症状ではなく…原告の主張する症状が本件傷病の前駆期の症状であったと認めるに足りる合理的な根拠や客観的資料はない旨主張する。しかしながら、そもそも、統合失調症の前駆期の症状は、不安、緊張、性格の変化、認知の変化、不眠、倦怠感、意欲低下、易疲労感等といった非特異的なものであり…〔1〕本件診察時に原告に生じていた症状が非特異的なものであることや、〔2〕本件証明書に精神疾患をうかがわせる記載がないことは、原告の上記症状が統合失調症の前駆症状であることを直ちに否定するものではない…かえって、本件診察時、原告には、内科的な異常は認められなかった上、本件診察時においてみられた原告の体調不良は、原告がPを退職した後も改善しなかったばかりか、本件傷病の発症の引き金となるような具体的なエピソードがうかがわれないにもかかわらず…急性期の症状が顕在化し、悪化しているのであって、これらの事情に照らすと、本件診察に係る症状を単なる仕事上のストレスや過労などと捉えて、本件傷病と断絶して評価することは、極めて不自然かつ不合理なものといわざるを得ない。…以上のとおり、本件診察は、本件傷病による症状に対して行われたものであり…本件傷病に係る初診日は、本件診察が行われた平成12年7月17日であると認められる。なお、同日において…統合失調症との診断がされていなかったとしても、上記のとおり、本件診察は本件傷病による症状に対して行われたものであるから、本件傷病の初診日に係る上記認定を左右するものではない。」▼原告が初診日と主張した日前後の経過、特に、その後、確定診断時までに症状の悪化して行ったことを重視して判断したことがわかる。

07/06/2025

2025年4月23日東京地裁判決は統合失調症についての障害厚生年金に関する初診日を認容した。①大卒後、千葉の会社で働いていて、単身生活している頃に疲れが酷くて内科を受診(2000年7月17日という日付だけの記録はあり)した。これについては友人2人の第三者証明を提出した。裁判での2人の友人、本人の陳述も、25年前だったのに、大筋、内容的に説得力あるものだった。②その半年後に仕事が続けられずに退職し、東京の実家に戻った。③それから幻聴、被害妄想が強まったものの、本人に病識なく、受診せず、2003年8月に精神科に受診し(この時が初診日だとすると納付要件は未充足)、統合失調症と診断された。この初診時のカルテに「仕事をしている頃に幻聴が聞こえた」と本人の話が記載されている。④提訴後に主治医の意見書「千葉で働いていた頃に発症していたことは医学的にみて妥当である」を提出した。この4点により、内科の受診で、しかも受診内容を証明できなかったものの、裁判所は初診日と認めた。国は控訴せず、確定した。補佐人として弁護士を補佐した裁判での初めての勝訴。初診日認定が困難なケースでの規範的な裁判例として広がってほしい。
LEX/DB【文献番号】25622691

05/06/2025

昨日は審査請求の口頭意見陳述という手続きの期日であった。厚生年金加入中に初めて精神科に行き、初めて知的障害と診断されたケースで、国は初診日は出生日であるとして、不支給処分とした。知的障害について一律に出生日を初診日とする取扱いは、「初めて医師に診療を受けた日を初診日」とする法に反しているのではないか、というのがこちらの主張だ。質問は、知的障害の初診日を一律に出生日とする取扱いに法的または通知上の根拠はあるのか。年金機構は学校での成績などにより先天的に知的障害と判断したと診断書に書かれていることなどを根拠としているが、他の障害の場合は先天性の障害だからといって、医師に診療を受けていなければ初診日とはしないのに、どうして知的障害だけは一律に出生日を初診日とするのか。これらについての厚労省年金局の回答はすべて「認定基準、認定要領に基づいて、認定医の医学的知見も加味して総合的に判断した」と繰り返すだけ。「認定基準、認定要領のどこに基づいて判断したのか」と聞いても、同じ繰り返し。答える気が全くない。請求者側に認められた質問権を完全に否定し、真摯な姿勢のカケラもない。こんなことでは裁判では確実に国は負ける。裁判にならないと説明も回答もしない。これでは不服申立て制度はないに等しい。請求者の権利救済の機会を奪い、それに良心の呵責を少しも感じていない。これがこの国の社会保障を担う役所と役人たちのありようである。

衆議院の厚労委員会の年金改革法案の付帯決議(障害年金関連を抜粋)が採択されました。透明性を確保した認定、社会モデルもふまえた機能障害だけでない認定、厚生年金期間に初診日がない場合も一定の条件を満たせば障害厚生年金の対象とする、多様な障害種別...
01/06/2025

衆議院の厚労委員会の年金改革法案の付帯決議(障害年金関連を抜粋)が採択されました。
透明性を確保した認定、社会モデルもふまえた機能障害だけでない認定、厚生年金期間に初診日がない場合も一定の条件を満たせば障害厚生年金の対象とする、多様な障害種別に配慮し当事者や関係者の実情を踏まえた障害年金制度の見直しなど、私たち障害年金法研究会が提言してきたことがある程度盛り込まれています。
これをテコに実際の根本改革にぜひつなげたい。
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社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案 付帯決議(抜粋)
開会日 :2025年5月30日 (金)
会議名 :衆議院厚生労働委員会
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&media_type=&deli_id=55834&time=10635.5
3:00:56〜3:02:43

5 障害年金の判定に際しては障害年金の不支給が急増したとの報道を受けて、6月に公表される令和6年度における認定状況の実態把握のための調査結果を踏まえ、必要な措置を講ずるとともに、恣意的な判定がなされないように透明性を確保するための検討を行う必要の措置を講ずること。

併せて「精神の障害にかかる等級判定ガイドライン」を踏まえ、就労継続支援B型事業所または障害者雇用で働く者等について、就労していても、その状況等を考慮し、2級などの可能性がないかを検討した上で等級を判断すること。

また、障害年金制度については、医学モデルのみならず、社会モデルも踏まえて、機能障害のみならず、日常生活の状況等を把握した上で、障害等級の認定を行うこと。

6 障害厚生年金の支給要件について、過去に一定の厚生年金被保険者期間がある場合に、被保険者資格喪失後にある初診日であっても支給を認める長期要件や被保険者資格喪失後の一定期間内にある初診日を認める延長保護などを検討し、必要な措置を講ずること。

また、多様な障害種別に配慮し、当事者や関係者の実情を踏まえ障害年金制度の見直しを進めること。

・視聴画面右下の「歯車アイコン」から[速度]をクリックすると、再生速度を変更することができます。

26/05/2025

2023年3月31日令和4年(国)177号社会保険審査会裁決は、うつ病の障害認定日請求について、初診日を20歳前と認めた。理由は以下。▼診療録には、「●歳(小学生の時)ごろ、精神運動発作と言われた」との記載があるが、この精神運動発作と本件傷病との相当因果関係に関して当審査会委員が質問したところ、保険者代理人は、相当因果関係のある疾病であると回答しており、当審査会もその回答を相当と判断するものである。そうすると、請求人は、小学生の頃に本件傷病と相当因果関係のある疾病で受診をしているのであるから、本件初診日は、請求人が2 0歳に達する前であると認める▼保険者意見書では、精神運動発作は心因性非てんかん性発作であるからてんかん発作ではないから、初診日とは認められない、としていて、保険者代理人の審理での回答とは真逆のことを言っている。そもそも、心因性である非てんかん性発作=精神運動発作が精神疾患(うつ病)と無関係というほうが無理がある。この不服申立ては本人が行ったもので、本人の頑張りで容認を勝ち取った。国が決めたことだからとあきらめないことだ。

住所

栄町2-9-10 KR久米川 301
Higashimurayama-shi, Tokyo
189-0013

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