06/03/2026
漢方ってすごいかも!と思った外来での一場面
今日の外来で、70代の患者さんから印象的なお話をうかがいました。
もともと風邪をひきやすいことが気になっておられ、体力低下や易感染性(感染しやすさ)を意識して、以前から補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を続けていただいていた方です。
今回の受診で、その患者さんがこう話してくださいました。
「この前、孫が帰省してきてインフルエンザになったんです。あとから両親もかかってしまって。でも私は大丈夫だった。いっしょに布団で寝たこともあったのに、うつらなかった。漢方ってすごいね」
もちろん、ひとつの出来事だけで「補中益気湯のおかげで防げた」と断定することはできません。
感染の有無には、曝露の程度、体調、その時の免疫状態、ワクチン接種歴など、さまざまな要因が関わります。それでも、日々の診療の中でこうした実感のこもった言葉をいただくと、漢方の持つ可能性を改めて考えさせられます。
補中益気湯は“体を立て直す”漢方です
補中益気湯は、食欲低下、倦怠感、疲れやすさ、病後の体力低下などに用いられる代表的な漢方薬です。
西洋医学の薬のように、ひとつの症状だけをピンポイントで抑えるというより、全身状態を底上げし、回復力を支えるような使い方がしっくりくる処方です。
私自身、外来では「すぐに効く特効薬」というより、「風邪をひきやすい」「治ったあとも調子が戻りにくい」といった方に、体質や経過をみながら処方を考えることがあります。
高齢の患者さんでは、こうした“なんとなく弱っている”部分を丁寧に支えることが、結果として感染症への抵抗力に関わる可能性があります。
実は、予防効果を示唆する報告もあります
補中益気湯については、病院職員を対象に、内服群179人と非内服群179人を比較した新型インフルエンザ予防プロジェクトが会議報告として公表されています。タイトルからも分かるように、臨床現場で感染予防を意識して検討されたものです。加えて、基礎研究では、補中益気湯がインフルエンザウイルスの感染過程や生体側の防御反応に影響しうること、マウス実験や細胞実験で予防的作用が示唆されています。
一方で、こうした報告は「一定の可能性」を示すものであって、誰にでも確実な予防効果があるとまでは言えません。現時点では、ワクチン、手洗い、十分な休養、栄養管理といった基本的な感染対策の代わりになるものではなく、それらを補う選択肢のひとつとして考えるのが妥当です。
日常診療の中で、こういう話は大事にしたい
外来をしていると、検査値や画像所見だけでは見えてこない“患者さん自身の実感”に教えられることがあります。
今回の「漢方ってすごいね」というひと言も、そのひとつでした。
派手ではありませんが、体調を整え、感染しにくい状態を保つことは、特に高齢の方の診療ではとても大切です。
漢方は、そのお手伝いができることがあります。西洋医学と対立するものではなく、日々の診療を少し厚くしてくれる選択肢として、これからも丁寧に活かしていきたいと思います。
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のだ眼科・血管内科クリニック院長の野田 浩です。弘前市北部で眼科と血管内科を開設しています。眼科は眼科専門医である副院長 野田 康子が担当し、私は血管内科を担当しています。今後ともよろしくお願いします。 眼と足と血管の健康のためのクリニックです。