
07/10/2025
みなさん、こんにちは。
市原市五井の歯科 医療法人社団 渡邉歯科医院です。
私たちのお口の中には、形の異なる歯がずらりと並んでいます。鏡で見てみると、前歯は薄く平らで、犬歯は尖っており、奥歯は厚みがあってデコボコした形をしています。これらの形の違いにはすべて理由があり、それぞれの歯が「食べる」「話す」「見せる」といった機能を分担しているのです。
そこで、今回は「前歯・犬歯・奥歯の役割や特徴」について、分かりやすくお伝えして行きたいと思います。
【前歯:食べ物を切り、見た目を作る歯】
前歯は上下に4本ずつ、合計8本あります。最も特徴的なのは、ナイフの刃のように薄く鋭い形をしていること。この先端部分を「切縁(せつえん)」と呼び、食べ物を「切る」役割を担っています。リンゴをかじったり、パンをちぎったりするときに活躍しているのがこの前歯です。
前歯の形は、食べ物に効率よく力を集中させるように出来ており、少ない力でもスムーズに噛み切ることが出来ます。また、前歯は発音にも欠かせません。「サ行」「タ行」などの発音では、舌と前歯の位置関係が正確でないと、綺麗な発音になりません。そのため、前歯の角度や位置がズレていると、滑舌に影響が出ることがあります。
さらに、前歯は見た目の印象を左右する「顔の主役」でもあります。笑った時に最も目立つのが前歯であり、その形や白さ、並び方は表情全体の印象を大きく変えます。前歯の健康と美しさは、機能面だけでなく心理面や社会的な印象にも関わる重要なポイントなのです。
【犬歯:食べ物を引き裂き、歯列を支える要の歯】
犬歯は前歯の隣にあり、上下に1本ずつ、計4本生えています。先が尖っており、まさに牙のような形をしています。根が非常に長く、顎の骨にしっかりと固定されているため、犬歯は「歯列の支柱」と呼ばれるほど安定した歯です。
犬歯の主な役割は「引き裂く」こと。肉類や繊維質の野菜など、前歯では切りにくく、奥歯では噛み砕きにくい食べ物を処理します。その鋭い形は、食べ物に食い込み、しっかりと引き裂くのに最適です。
もう一つの大切な機能は、「犬歯誘導」と呼ばれる咬合(こうごう)のガイド機能です。下顎を左右に動かす時、犬歯が最初に当たることで奥歯が横方向に強く擦れ合わないよう守っています。これにより奥歯への負担が軽減され、歯全体の寿命を延ばす働きをしています。
さらに犬歯は、歯並びのバランスを保つ上でも重要な存在です。犬歯が正しい位置にあることで、前歯と奥歯がそれぞれ安定した位置に収まり、噛み合わせ全体の調和が取れます。逆に犬歯の位置がずれていると、全体の歯列バランスが崩れ、噛み合わせや見た目に影響が出ることがあります。
【奥歯:食べ物をすりつぶし、消化を助ける歯】
犬歯の奥に並ぶのが奥歯で「小臼歯」と「大臼歯」に分かれています。小臼歯は上下に4本ずつ、大臼歯は親知らずを含めると上下6本ずつ、合計20本近くあります。奥歯の表面は山と谷のようにデコボコしており、この複雑な構造が「噛み砕く」「すりつぶす」働きを生み出します。
奥歯の咬合力(噛む力)は最も強く、成人男性では約60〜80kgにも達するといわれます。咬頭(こうとう)と呼ばれる突起部分で食べ物を粉砕し、唾液と混ぜて飲み込みやすくすることで、胃や腸での消化を助けています。つまり、奥歯は「消化の第一段階」を担っているのです。
奥歯の根は2〜3本に分かれており、強い咬合力に耐えられるように顎骨にがっちり固定されています。食べ物を十分にすりつぶすことで消化吸収が良くなり、栄養を効率的に摂取できます。反対に、奥歯が失われると、噛み合わせが悪化して消化不良や肩こり、姿勢の歪みなどを引き起こすこともあります。
【歯の形は「進化」の証】
人間の歯の形は、長い進化の歴史の中で食生活に合わせて変化して来ました。原始的な霊長類は果物や木の葉などを食べていましたが、人類が火を使い、調理するようになったことで、より多様な食材に対応できる歯が発達しました。
現代人の歯は、肉食動物と草食動物の中間的な特徴を持っています。前歯は草食動物のように食べ物を切るために平たく、犬歯は肉食動物のように尖っています。そして奥歯は、あらゆる食材を砕いてすりつぶせるよう複雑な形状をしています。この多様性が、人間が様々な環境で生き延びる力を支えてきたのです。
【すべての歯が大切 ― 部位ごとのケアのポイント】
どの歯も欠けてはいけない理由があります。前歯を失えば食べ物を噛み切れず、犬歯を失えば硬い食材を引き裂けず、奥歯を失えばしっかり噛み砕けません。それぞれがチームのように連携しながら、食事や会話を支えています。
歯を守るためには、部位ごとに適したケアが大切です。
(前歯)着色汚れや虫歯になりやすいため、ホワイトニングや丁寧なブラッシングを。
(犬歯)歯周病になると支えが弱くなりやすいため、歯ぐきのマッサージや歯間ブラシでケアを。
(奥歯)溝に汚れが溜まりやすいので、デンタルフロスや電動ブラシの活用が効果的です。
定期的な歯科検診で小さな異変を早期に見つけることも、健康な歯を保つための重要なステップです。
【まとめ 歯の違いを知って、一生自分の歯で】
前歯・犬歯・奥歯は、それぞれが異なる形を持ちながら、食べる・話す・笑うといった日常動作を支えています。前歯は「切る」、犬歯は「引き裂く」、奥歯は「すりつぶす」。この三者の連携によって、私たちは様々な食材を美味しく安全に食べることが出来ます。
歯の形の違いを知ることで、日々の歯磨きやケアをより意識的に行うことができ、生涯にわたって健康な歯を保つことが出来ます。
渡邉歯科医院では、患者さま一人ひとりの歯の特徴に合わせた丁寧なケアを行っています。健康な歯で笑顔の毎日を過ごすために、ぜひ一度ご相談下さい。