小川内科・循環器内科

小川内科・循環器内科 皆様の「かかりつけ医」「家庭医」として、また、循環器疾患を診療いた? ◆診察時間◆
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11/09/2025

ワクチン接種で認知症の発症を抑制
 近年の臨床研究は、成人へのワクチン接種が認知症の発症を抑制する効果を持っている事を報告しています。
2001年~2021年までの17件の臨床研究1,857,134症例のメタ解析は、65歳以上に対するインフルエンザワクチン・帯状疱疹ワクチン・三種混合(破傷風・ジフテリア・百日咳)ワクチン・BCGワクチン・肺炎球菌ワクチン・A型肝炎ワクチン・B型肝炎ワクチン接種はそれぞれ非接種症例に較べ平均で35%認知症の発症を抑制した事を示しています(Xinhui Wu et al. Frontiers in Immunology 2022 Vol 13)。
2023年8月にはテキサス大学のグループが1,651,991症例の8年間の医療記録の追跡調査の結果を報告しました。それに拠りますと、三種混合ワクチンを接種した群は、非接種群に較べ8年の観察期間のアルツハイマー病の発症は30%低く、帯状疱疹ワクチン接種群は非接種群に較べ25%、肺炎球菌ワクチン接種群は非接種群に較べ27%アルツハイマー病の発症の危険性が低い事が判りました。同じテキサス大学の研究グループは、インフルエンザワクチン接種群と非接種群との4年間の観察期間中のアルツハイマー病発症数を比較し、インフルエンザワクチン接種群で40%認知症の発症が少なく、この効果は接種回数が多い程高い、と2022年に報告しています。
 又、2025年4月にはスタンフォード大学の研究グループが、英国ウェールズのおよそ28万例の医療記録から帯状疱疹弱毒生ワクチン接種群は非接種群に較べ認知症発症の危険性が20%低い、と報告しました。
 これらのワクチン接種の効果は、何に由来するのでしょうか。ワクチンの標的である様々なウイルス・細菌感染による神経系の炎症をワクチン接種で予防・軽減しているのかもしれません。有力視されているのは、ワクチン接種により一般的な生体固有の免疫力を活性化し、適切な免疫反応を訓練している、非特異的反応・off-target効果に因る、という仮説です。このオフターゲット効果で、ミクログリアを適切に活性化し、ミクログリア等免疫細胞がアルツハイマー病に関連する蛋白質(アミロイドβ)を除去する効果を高め、周囲の脳細胞の付随的損傷を軽減させている可能性がある、と考えられています。
 認知症予防の為にも、高齢者がインフルエンザ・肺炎球菌・帯状疱疹に対するワクチン接種を受ける意義は大きいでしょう。

11/09/2025

肺動脈性肺高血圧に新しい治療薬
 肺高血圧は、右心カテーテルで平均肺動脈圧が20mmHg以上の状態を指します。肺動脈性肺高血圧は、末梢の肺動脈の血管壁が肥厚・増殖し、肺血管が収縮して肺血管抵抗が増加し肺高血圧となる進行性の疾患で、明らかな基礎疾患の無い特発性・遺伝性のある病態が多く、若年の女性に多い、指定難病の一つです。
有力な治療法が無かった1991年での米国からの報告では、発症してからの平均生存期間は2.8年でした。その後、プロスタサイクリン類似体のエポプロステノール・トレプロスチニル・イロプロスト・ベラプロスト・セレキシパグ、NO経路のsGC刺激剤のリオシグアト・PDE5阻害剤のシルデナフィル・タダラフィル、エンドセリン受容体拮抗剤のアンプリセンタン・ボセンタン・マシテンタン、などの治療薬が肺血管拡張作用を期待して開発され、2022年の報告では、3年生存率90%、5年生存率84%と予後は改善しました。
Sotatercept(ソタテルセプト)は、アクチビン-シグナル伝達阻害剤で、血管細胞増殖を抑制する作用を有し、これまでの肺血管拡張作用を期待する肺動脈性肺高血圧治療薬とは違う機序の肺動脈性肺高血圧の新しい治療薬です。
2025年3月31日New England Journal of Medicine誌に公表されたZENITH試験は、重症の肺動脈性肺高血圧例に対するsotaterceptの効果を検証する、プラセボ対照無作為化比較試験です。WHO機能分類Ⅲ、Ⅳの死亡リスクの高い172例の既に最大用量の2,3種類の肺動脈性肺高血圧治療薬が投与されている症例をsotatercept追加投与群とプラセボ追加投与群に1:1にそれぞれ86症例ずつ無作為化して振り分け、観察期間中の死亡・肺移植・症状悪化による24時間以上の入院などの複合評価項目事象発生数、発生までの期間を比較しました。その結果、sotatercept群の評価項目事象発生は15症例で認めたのに対してプラセボ群では47症例で認め、ハザード比0.24とsotatercept群で圧倒的に低かった為、倫理的理由で試験は早期に中止されました。Sotatercept投与群の主な副反応は、鼻出血と毛細血管拡張でした。
2025年3月29日に日本循環器学会の「肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン」が新しく改訂されました。Sotaterceptは、日本では未承認ですが、ガイドラインでは中~重症例において既存の三系統の薬剤併用療法に追加する4系統目の薬剤として期待されると、位置付けています。
追記:2025/6/24にsotaterceptは薬価収載されました。

11/09/2025

アレルギー性疾患と食事の関連性
 アトピー性皮膚炎・アレルギー性喘息・アレルギー性結膜炎・アレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患は、近年増加傾向にあり、遺伝的要因と食物を含む環境的要因が複雑に絡み合っていると想定されます。
アレルギー性疾患と、ある特定の食物摂取との関連性は、過去二~三十年の間調べられてきましたが、一貫性が無く相反する結果が出ていました。例えば、アトピー性皮膚炎の子供に対して卵と牛乳を食事から除去すると痒みが減少し睡眠状態が改善した、との横断的研究があれば、逆に、ある同様のクロスオーバー研究では、アトピー性皮膚炎で卵と牛乳を除外した群は対照群と比較して有意な改善は無かったと報告しています。横断的研究では、結果に影響を及ぼす他の交絡因子の効果が混ざっており、ある特定の因子の因果性を証明するのは、アレルギー性疾患に於いては困難と考えられます。
無作為化比較試験(RCT)は、不明な交絡因子があってもその効果を除外できる優れた方法ですが、一つの因子についての介入効果しか一つのRCTでは評価できず、時間と労力と費用が掛かり、症例によっては倫理的に問題となる場合もあります。
2025年2月15日にDermatologic Therapy誌に発表された論文で、中国の研究グループは、メンデル無作為化解析(MRA)という方法を用いて、34の食物・飲み物とアレルギー性疾患の関連性について報告しました。遺伝法則を最初に研究・報告したメンデルの名前を付けたこのMRAは、遺伝情報の一塩基多様性をある特定因子の曝露に関連する操作変数として用い、効果的に無作為化した擬似実験に基づいて研究する方法で、RCTの様に実際に介入する必要は無く、交絡因子の影響を最小限に抑えて簡便に様々な因子の効果を評価できます。研究は、欧州の大規模なゲノムワイド関連解析(GWASs)の情報を基に行われました。
その結果、豆を挽いて入れたコーヒーの摂取量が多いとアトピー性皮膚炎の進行を減らし(オッズ比:0.71)、ワイン・リキュールなどのアルコールの月平均摂取量が多いとアトピー性皮膚炎の危険性は上昇していました(オッズ比1.64)。アレルギー性喘息でもドリップコーヒーの摂取増加は、喘息発症の危険性を低下させていました(オッズ比:0.73)が、蒸留酒(オッズ比:4.24)とサクランボ(オッズ比:2.79)は危険性を上げていました。アレルギー性結膜炎では、ビールとシードル(林檎酒)が発症危険性を下げていました(オッズ比:0.5)。アレルギー性鼻炎では、34の食物・飲み物因子との関連性はありませんでした。
この分析結果は、直ぐに我が国に当てはまるでしょうか? 研究資料が欧州由来で、人種差を除外出来ない可能性があります。兎に角これは、最先端の統計学手法の臨床研究への応用であり、今後様々な対象にMRAは適用されるでしょう。

11/09/2025

身体活動は癌の進行・死亡率を抑制する
2025年1月7日のBritish Journal of Sports Medicine誌に南アフリカの研究グループは、運動する習慣がある人は、全く運動する習慣の無い人と較べて癌の進行の危険性と死亡率が低下していた、と発表しました。
南アフリカの医療保険制度DHMS(Discovery Health Medical Scheme)の記録を用いて、2008年1月から2022年10月までの期間に登録された28248名のステージ1の癌症例を対象に身体活動度と癌の進行度・癌に因る死亡率の関連を調査しています。癌と診断される24ヶ月前から12ヶ月前までの身体活動の評価は、アップルウォッチの様な装着型の装置を用いて記録された身体活動のタイプ・回数・持続時間・強度、又はジムでの記録から行われ、全く運動しないグループ(登録数の61.8%)・低水準の身体活動(記録された運動時間が60分未満/週)のグループ(登録数の13.18%)・中等度~高水準の身体活動(記録された運動時間が60分以上/週)のグループ(登録数の25.02%)に分類され、三つのグループ間で比較しました。
その結果、癌は乳癌(22.5%)・前立腺癌(21.4%)・皮膚癌(11.5%)が多く、治療で運動が困難と想定される、白血病・多発性骨髄腫・悪性リンパ腫や甲状腺癌は分析から除外されています。癌に因る死亡率は、全く運動しないグループに較べ、低活動グループはハザード比0.67,中~高活動グループはハザード比0.53と低く、低活動と中~高活動グループの比較でも後者がハザード比0.79と低い事が判明しました。診断から癌が進行する危険度は、全く運動しないグループに比較し低活動グループはハザード比0.84,中~高活動グループはハザード比0.73と低く、低活動グループと中~高活動グループの比較も後者がハザード比0.88と低く、診断から5年間癌の進行がなかった割合は、全く運動しないグループで66%、低活動グループで71%、中~高活動グループで73%でした。
以前にも身体活動が癌の死亡率を下げたとの報告は幾つかあり、2018年の米国でのメタ解析では、乳癌・大腸癌・前立腺癌の死亡率が高水準の身体活動は低水準の活動度に較べ40~50%低かったと報告しています。今回の報告は、自己報告や質問票に依らない、客観的に記録された運動量に基づいた結果である事・運動の癌進行度への影響を評価した事が新しいと云えます。この運動の効果は、運動に因り免疫力を強化している事、運動に因り性ホルモン濃度を調節する事で、性ホルモンの影響が大きい前立腺癌や乳癌の進行を抑制している事が機序として考えられる、と著者たちは考察しています。いずれにせよ、身体活動を増やす事は癌の予防・癌の進展抑制の為にも推奨されるべきでしょう。

11/09/2025

肥満を伴ったHFpEFにチルゼパチド
 チルゼパチド(商品名:マンジャロ)は、グルコース依存性インスリン分泌刺激ペプチド(GIP)受容体とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体両者への作動薬で、2型糖尿病に適応があります。
 このチルゼパチドの肥満を伴った左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)への効果を調べた臨床試験(SUMMIT trial)の結果が2025年1月30日のNew England Journal of Medicineに発表されました。
40歳以上、NYHA分類でⅡ~Ⅳ度の心不全の自覚症状がある、左室駆出率50%以上のHFpEF、BMIは30以上の肥満があり、カンザス市心筋症質問票(心不全評価の為開発された、身体制限・症状・自己評価・社会活動の12の項目に点数を付け100点が制限・症状が無い)の総点数(KCCQ-CSS)が80点未満・6分間歩行で100m~425mは歩ける731症例をチルゼパチド投与群364例とプラセボ群367例に振り分け中央値104週の期間観察しています。チルゼパチドは週一回2.5mg皮下注射から開始し20週で15mgまで漸増して投与されています。主要評価項目は、心血管死又は心不全増悪イベント(心不全に因る入院、救急外来での利尿剤静脈注射、通常外来で利尿剤内服薬追加投与を含む)で、開始前と52週でのKCCQ-CSSの変化も評価しています。
観察期間中の主要評価項目はチルゼパチド投与群で36症例認め、プラセボ群では56症例認め、ハザード比は0.62でした。特に心不全増悪イベントはチルゼパチド投与群で29例、プラセボ群では52例認め、ハザード比は0.54でした。KCCQ-CSSの変化は、チルゼパチド投与群で19.5点増加し、プラセボ群は12.7点増加し、チルゼパチド投与群が6.9点程高い結果でした。
肥満を伴ったHFpEFに対してGLP-1受容体作動薬のセマグルチドの効果を調査したSTEP-HFpEF試験があり、KCCQ-CSSの点数改善・体重減少・6分間歩行の改善は認めましたが、このSUMMIT試験のように死亡・心不全増悪イベントのプラセボに較べての減少は認めていません。この結果の差が、チルゼパチドのGIP受容体作動薬の効果に因るものかどうかは現時点では不明ですが、執筆者達はおそらくこの薬効の差に因るものと推測しているでしょう。
HFpEFへの治療薬はSGLT-2阻害剤のエンパグリフロジン・ダパグリフロジンがあり、フィネレノン、セマグルチド、そしてこのチルゼパチドも治療手段として追加される可能性は高いでしょう。

11/09/2025

未精製ココアで高脂肪食に因る血管内皮機能低下を防御
 フラボノイドは、ポリフェノールの一種で天然の植物色素の総称です。植物の葉・茎・果実に含まれ4000種類近くあります。フラボノイドは、化学構造によってフラボン(ハーブ・パセリ・セロリに含まれる)・フラボノール(林檎・玉葱・ブロッコリ・ケール・茶の葉に多い)・フラバノン(柑橘類に含まれる)・イソフラボン(豆・大豆及び大豆製品に多い)・アントシアニン(葡萄・ブルーベリー・苺に含まれる)・フラバノールに分類されます。これらのフラボノイド類には、抗酸化作用・免疫調節作用・抗血小板作用があり、アンチエイジング・抗癌効果・抗動脈硬化効果を期待され様々な研究がされています。フラバノールにはカテキン・エピカテキン・ガロカテキンなどが含まれ、緑茶・紅茶・ココア・チョコレートに多く含まれます。フラバノールには、一酸化窒素の生物学的利用率を増加させ、血管収縮作用のあるエンドセリン-1を減少させる事で血管保護作用があると考えられています。
 一方、精神的ストレスが掛かっている状態は、それだけで血管内皮機能を低下させます。更に精神的ストレスの掛かっている状態は食習慣にも影響を与え、過食・高脂肪食摂取量を増加させ果物・野菜の摂取量を減少させます。高脂肪食は、ストレスで低下した血管内皮機能の回復を障害する事が既に判っています。
 この高脂肪食に因る血管内皮障害作用をフラバノールが豊富なココアを摂取する事で防御した、との研究結果が2024年11月18日のFood & Function誌に発表されました。
18~45歳の健康な(非喫煙者・アルコール摂取量が21ユニット/週以下・急性の感染症が無い・心血管疾患/呼吸器疾患/代謝性疾患/肝臓病/血栓症の既往が無い・食物アレルギーの無い・減量の為の食餌療法を行っていない・過去三か月の抗生剤投与/薬物療法の既往が無い)23人(男性11人/女性12人)に高脂肪食(バタークロワッサン(67g)2個に10gの有塩バター・1.5スライスのチェダーチーズ(37.5g)・成分未調整の牛乳250ml)の総カロリー891Kcal・脂質56.5gの朝食を摂ってもらい、これに高フラバノール(695mg)のココアを摂取する群と低フラバノール(5.6mg)のココアを摂取する群に無作為に振り分け、ストレスの掛かる足し算の暗算テストを行い、血管内皮機能(上腕動脈の血流依存性血管拡張反応:FMD)・血圧・心拍数などを観察しました。
その結果、低フラバノール+高脂肪食を朝食に摂取した群では、暗算によるストレスが掛かるとFMDは低下し、テスト後90分も低下したままでしたが、高フラバノール+高脂肪食の朝食を摂取した群では、FMDの低下は有りませんでした。
以上から、フラバノールの豊富な食物は高脂肪食に因る血管内皮機能低下を短期的に防御する可能性が示唆されました。
この研究グループは毎日のフラバノールの摂取として2杯の緑茶か、余り加工されていないココアをテーブルスプーン(=大匙1杯:15ml)5.5杯か、300gのベリーの摂取を勧めています。

05/08/2025

HPVワクチンの定期予防接種予約受付中

◇定期予防接種対象者
小学6年生~高校1年生相当年齢の女子�(令和7年度対象者:平成21年4月2日~平成26年4月1日生まれ)
◇予約制 0948-22-2010
◇持ってくるもの 母子手帳、マイナンバーカードか保険証

※標準的な接種期間※
13歳となる日の属する年度の初日から当該年度の末日までの間�(中学1年生になる年の4月1日~3月31日)

◆キャッチアップ接種対象者(平成9年度~平成19年度生まれの女性)で、キャッチアップ接種期間(令和4年4月1日~令和7年3月31日)にHPVワクチンを1回以上接種した方
◆平成20年度生まれ(平成20年4月2日~平成21年4月1日生まれ)の女性で、キャッチアップ接種期間(令和4年4月1日~令和7年3月31日)にHPVワクチンを1回以上接種した方
◆キャッチアップ接種期間�令和8年3月31日まで

04/08/2025

◇お盆期間の診察日のお知らせ◇

8月9日(土)9時〜13時診察
10(日)休診
11(月)祭日休診
12(火)9時〜12時、14時半〜18時診察
13(水)休診
14(木)休診
15(金)休診
16(土)9時〜13時診察

27/05/2025

糖尿病に合併した高血圧への厳格な降圧療法
 糖尿病に合併した高血圧に対して収縮期血圧を120mmHg未満にコントロールした症例は、収縮期血圧を140mmHg未満にコントロールする標準的な降圧治療症例に較べ、主要心血管事故を有意に減らした、との臨床研究の結果が2024年11月16日のNew England Journal of Medicineに掲載されました。
中国の145施設が参加し、50歳以上の2型糖尿病を合併した高血圧症例を、収縮期血圧120mmHg未満に強力な降圧療法で低下させる群と収縮期血圧140mmHg未満を目標とした標準降圧療法群に2群に無作為に抽出し振り分け、5年間の観察期間に非致死的な脳卒中・非致死的な心筋梗塞・心不全での入院/加療・心血管死などの有害事象の発症数を比較しました。2019~2021年にかけて登録された総数12,821症例の内、強力降圧療法群は6414例、標準降圧療法群は、6407例で症例の平均年齢は63.8±7.5歳でした。強力降圧療法群は、1年後には平均収縮期血圧121.6mmHg、標準降圧療法群は一年後には平均収縮期血圧133.2mmHgでした。平均4.2年の観察期間中に、有害事象発生数は強力降圧療法群393例で標準降圧療法群は492例、ハザード比0.79と有意に強力降圧療法群で低い事が判りました。
同様の臨床研究では、2010年にACCORD研究が糖尿病に合併した高血圧に対する収縮期血圧120mmHg未満の厳格降圧療法群と140mmHg未満の標準療法群の非致死的な脳卒中・非致死的な心筋梗塞・心血管死などの有害事象の発生には有意差は見られなかった、と報告しています。非糖尿病合併の高血圧症例に対する厳格降圧療法群と標準降圧療法群を比較した2015年のSPRINT試験では、有害事象は厳格療法群でハザード比0.75と有意に低かったと発表しています。
これらの違いは何に因るのでしょうか。今回の結果を報告した中国の研究グループは、ACCORD研究は主要心血管事故の発生頻度を標準療法で年間4%/100症例と想定してサンプルサイズ(抽出症例数)を総数4733例と低く見積もった為に十分な差異を識別する統計学的強度が足りなかったのだ、と説明しています。因みにSPRINT試験は主要心血管事故の発生頻度を標準療法群で年間2%/100症例と計算しサンプルサイズは総数9361例、この中国の研究も主要心血管事故の発生頻度を標準療法群で年間2%/100症例と推定しサンプルサイズは12,821例です。
現在の海外・日本国内のガイドラインでは、糖尿病に合併した高血圧症例は目標血圧130/80mmHg未満が望ましいと記載されていますが、今回の研究はその根拠となり得ると考えられます。

27/05/2025

心血管疾患の二次予防に低用量コルヒチン
 狭心症・心筋梗塞・脳梗塞などの心血管疾患発症後の二次予防目的の低用量のコルヒチン投与の効果を検証したメタ解析の結果が2024年10月8日のLancetに発表されました。
 コルヒチンは、古代エジプト時代からその効能が知られていたイヌサフランから1820年に初めて抽出された抗炎症剤で、主に痛風発作時の症状緩解・痛風発作予防に使用されます。
コルヒチンは、様々な機序で抗炎症作用を発揮しますが、主には、細胞内の微小管と結合し、微小管の延長・進展を阻害します。この事に因り白血球の一種である好中球・単核球の遊走、障害部位への接着・貪食作用を阻害し、炎症反応の生理活性蛋白質であるインターロイキン(IL)-1β・IL-6・IL-18などの放出を抑制します。
 動脈硬化進展の機序・心筋梗塞/脳梗塞の発症には炎症反応が大きな役割を果たしており、抗炎症剤であるコルヒチンには動脈硬化に因る心血管疾患の再発予防効果が期待されていました。他の抗炎症剤では、カナキヌマブは余りに高額な薬価と致死的な感染症の危険性から臨床応用は進んでおらず、メソトレキセートは予防効果を認めませんでした。何よりコルヒチンは安価であり、発展途上国も含め広範に使用する事が可能です。
 2013~2024年までに実施された心血管疾患の二次予防目的の低用量コルヒチン(0.5mg一回/日)の投与効果を検証した6つの無作為化比較試験の総数14934症例のうち7375例にコルヒチンが投与され、対象群は7363例で、観察期間中の脳梗塞・心筋梗塞・冠動脈再灌流治療施行・心血管死などの有害事象の発症数を比較しました。その結果コルヒチン投与群では、脳梗塞の発症は対照群に比較し27%少なく、全ての有害事象発生数も対照群に比べ27%少ない事が判りました。このコルヒチンの効果は、70歳以上と70歳未満のグループでの比較、男性・女性での比較・糖尿病の合併例と非合併例の比較・コレステロール値を低下させるスタチン剤の投与群/非投与群の比較でも有意差なく同等に認めていました。これは、かなり驚くべき結果で、高齢である方、男性、糖尿病合併例、スタチン非投与例の方が炎症反応は進行しているとこれまでの知見からは想定されており、予防効果に差が出ると予測されていたからです。これについての解釈はこれからされるでしょう。
2021年のヨーロッパ心臓病学会のガイドライン・2023年のアメリカ心臓協会/アメリカ心臓病学会共同のガイドラインで既に二次予防にコルヒチンは有用と勧告されていますが、この研究によってコルヒチンの二次予防目的の投与は広がると考えられます。

01/05/2025

◇G.W.中診察日◇
5月2日(金)通常診察 
5月3日(土)休日当番医 9:00〜17:00
5月4日(日)〜5月6日(火)休診
5月7日(水)午前中診察 9:00〜13:00

31/03/2025

🔹帯状疱疹ワクチン定期接種のお知らせ🔹

◇対象者 飯塚市、嘉麻市、桂川町にお住まいの65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、100歳以上の方
◇金額 
・生ワクチン2,500円(予防効果6割程度)
・組換えワクチン 1回6,500円を2ヶ月空けて2回接種(予防効果9割以上)
※非課税世帯、生活保護世帯は負担額0円
◇期間 令和7年4月1日〜令和8年3月31日
◇予約制 予約電話 0948-22-2010

住所

福岡県飯塚市吉原町6-1あいタウン3階
Iizuka-shi, Fukuoka
8200040

営業時間

月曜日 09:00 - 18:00
火曜日 09:00 - 18:00
水曜日 09:00 - 13:00
木曜日 09:00 - 18:00
金曜日 09:00 - 18:00
土曜日 09:00 - 13:00

電話番号

+81948222010

ウェブサイト

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