26/07/2025
【科学の最前線:「バレー・リウー症候群(Barré-Liéou syndrome)」と「Kポイント(K-Point)」】
2016年 韓国・嶺南大学校(Yeungnam University)
「いわゆるK点症候群における非特異的頸部痛に対するK点注射の有用性」
Usefulness of K-Point Injection for the Nonspecific Neck Pain in So-Called K-Point Syndrome
Jeong Jae Moon, MD et al.
Clin Orthop Surg. 2016 Dec;8(4):393-398.
https://ecios.org/search.php?where=aview&id=10.4055/cios.2016.8.4.393&code=0157CIOS&vmode=FT
以下、引用。
「最近、国分正一氏は胸鎖乳突筋(SCM)の鎖骨後頭にある頭蓋筋腱接合部領域を「K点」と呼び、主に筋腱接合部痛を特徴としました」
Recently, Shoichi Kokubun referred to the area of cranial musculotendinous junction on the cleido-occipital head of the sternocleidomastoid (SCM) muscle as "K-point" and introduced K-point syndrome
「(頚部むちうち損傷を含む患者にK点注射したところ)
【結果】
計58名のうち44名(75.8%)はK点注射後に明らかな即時鎮痛効果を呈した。」
Results:Of the total 58 patients, 44 (75.8%) apparently had immediate pain relief after K-point injection.
「バレー・リウー症候群(Barré-Liéou syndrome)は、交感神経系の圧迫によって引き起こされる、耳鳴り、めまい、頭部および頸部の痛みなどの虚血症状を特徴とする。バレー・リウー症候群(Barré-Liéou syndrome)という名称には歴史的な意味合いがあるものの、前庭器官に問題がある場合にも観察されるため、適切な診断名ではないと主張する人もいる。」
Barré-Liéou syndrome was characterized by ischemic symptoms such as tinnitus, dizziness, and pain in the head and cervical region caused by pressure on the sympathetic nervous system. Some insist that Barré-Liéou syndrome is not an appropriate diagnostic name, because it can be observed when the vestibular organ has a problem even though the name has historical meaning.
以上、引用終わり。
フランスの医師ジャン・アレクサンドル・バレー(Jean Alexandre Barré:1880–1967)と弟子の中国人リウー(Yong Choen Liéou)医師は、1928年に「バレー・リウー症候群(Barré-Liéou syndrome)」として報告しました。
くびを原因とした、
1.頭痛(Headaches)
2.めまい(Dizziness)
3.耳鳴り(Tinnitus)
と、
過剰な疲労感(excessive tiredness)をバレーは記述しています。
わたしが学んだ1990年くらいは「バレー・リウー症候群(Barré-Liéou syndrome)」というコトバはよく聞きました。しかし、現代日本では、交通事故後の後遺症の際に、法律関係者が使う用語になりつつあります。
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2006年
「バレー・リウー症候群と人名由来の病名エポニム(eponym)問題」
Barré–Lieou syndrome and the problem of the obsolete eponym
C A Foster P Jabbour
The Journal of Laryngology & Otology Volume 121 Issue 7
Published online by Cambridge University Press: 19 October 2006
※「結論:バレ・リウー症候群のように、医学界にとっては無用な症候群が、残念ながら訴訟当事者や障害補償請求者にとっては非常に有用となる場合がある。」
A syndrome, such as Barré–Lieou syndrome, that is useless to the medical profession can unfortunately prove to be very useful for litigants and disability claimants.
「4. 頸性めまい」
田浦 晶子
『Equilibrium Research』2018 年 77 巻 2 号 p. 47-57
↑
2018年の上記の日本めまい平衡医学会の教育講演によれば、1920年代のバレー・リウー症候群の「頸部交感神経障害説」は「最近の60年間では殆ど科学的なレビューは見られなかったが,近年後縦靱帯に交感神経繊維の存在が確認されたり,頸神経繊維と交感神経繊維との繋がりが報告されるようになり,交感神経亢進説も再度支持されるようになってきた」という記述があり、全否定されているわけではなく、「説明しにくいから説明しない」というのが実情のようです(笑)。
わたしは100年前に「バレー・リウー症候群(Barré-Liéou syndrome)」を提唱したバレー先生とリウー先生は凄い!!!と思っていて、なぜ、最近、医学用語として使われないのか?疑問だったのですが、単なる「流行」のようです(笑)!
日本の国分正一先生が提唱した「K点」については、「胸鎖乳突筋上のK点からみた運動器の非特異的疼痛」という論文に詳しいです。
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2010年
「胸鎖乳突筋上のK点からみた運動器の非特異的疼痛」
国分正一
独立行政法人国立病院機構西多賀病院 脊椎脊髄疾患研究センター
Journal of Spine Research 1(1): 17-29, 2010.
国分正一先生は、1968年に土屋弘吉(1915-1992)先生の「いわゆるむち打ち損傷の症状について」という論文を読んで、むちうち損傷や頭痛に後頭神経ブロックを使っていたそうです。2006年に「K点」を提唱しました。2010年論文ではトラベルのトリガーポイントと経絡経穴の天柱穴や風池穴についても記述されています。