29/07/2025
免疫力を高めて病気にならないようにすることを進める方がいます。口で言うのは簡単なことですが、危険を伴う行為だというのを少し認識してもらいたいと思います。特定の疾患に対する免疫力を高める方法は、存在しますが、漠然と免疫力を高めるという方法はあまりありません。子供たちは成長過程でいろいろな疾病に罹患して免疫力を高めながら成長しますが、ある程度免疫力を持った成人は、即座に病原体に反応ができて治癒する力が備わっています。これは免疫担当細胞が素早く反応するためです。高齢者になると、免疫力が失われたり、体力が落ちてきてたりしているので強い免疫細胞が働くと炎症所見が高くなりすぎて重症化したりします。
未知の疾病や病原体にはワクチンという免疫力を高める手段があり、実用化されています。ただ皆さんも経験されたと思いますが、ワクチン接種によって免疫力が高まる際は発熱や疼痛を伴います。
近年、がん細胞に対する免疫力強化の薬が開発されて実用化しています。これは、がん細胞は細胞の突然変異で、本来は免疫細胞により排除されるものですが、人間の細胞は老化で少しずつ変化するので、多少違った細胞でも免疫細胞に攻撃されないように、過剰免疫が起こらないようにチェックされています。これを免疫チェックポイントというのですが、このチェックポイントを阻害すると、免疫力が強化されて癌細胞を攻撃するようになります。ただ、チェックポイントを外す加減はとても難しく間違えると正常な細胞も攻撃して体中に炎症が起こり死に至るケースもありようです。
多くの免疫強化と謳う健康食品や特保は効果がないから有害事象がないのです。昔、近所の子供がおたふく風邪や風しんにかかったら移してもらいなさいといった親御さんがいましたが、子供は良いですが、大人は下手な免疫強化は勧められません。運動習慣や健康な食生活、趣味を楽しむ位にしてください。