19/02/2026
中医学の教科書 第18話 腎は水分代謝と納気をつかさどる
💧「腎は水分代謝と納気をつかさどる」──静かなる根が、命を潤す
私たちの身体は、目に見えない流れによって支えられています。
水の巡り、そして気の呼吸。
その根底にあるのが、「腎」のはたらきです。
東洋医学では、腎は単なる排泄器官ではなく、水分代謝と納気という二つの重要な機能を担うとされています。
それはまるで、地下に張り巡らされた根が、大地の水と養分を吸い上げ、幹を支えるような働きです。
🌊 水分代謝──潤いを調える腎の力
腎は、体内の水分を管理する「水の府」。
脾胃で吸収された水分を、必要な場所へ送り、不要なものは膀胱を通じて排出します。
この働きが整っていれば、身体は潤い、むくみや乾燥とは無縁。
逆に腎の水分代謝が乱れると、浮腫、頻尿、冷え、乾燥などの不調が現れます。
鍼灸では、腎経や膀胱経の経穴を用いて、腎の水分調整力を高めます。
• 腎兪(じんゆ):腰のだるさ、冷え、むくみに。
• 陰谷(いんこく):水分代謝を促し、膀胱の働きを整える。
これらのツボは、身体の“水の流れ”を調える鍵となります。
🌬️ 納気──呼吸の奥深くへ、気を引き込む腎の力
納気とは、肺から吸い込んだ「清気(せいき)」を、腎が体の奥深くへ引き込む働き。
肺が外界から気を取り入れ、腎がそれを“納める”ことで、呼吸は深く安定し、全身にエネルギーが巡ります。
腎の納気作用が弱まると、呼吸が浅くなり、息切れや疲れやすさが現れます。
これは、加齢や腎虚によってよく見られる症状です。
鍼灸では、肺腎の連携を整えることで、呼吸の質を高めます。
• 太渓(たいけい):腎気を補い、納気を助ける。
• 命門(めいもん):生命力の中心。呼吸力と活力を引き出す。
深い呼吸は、腎の力の証。
鍼灸は、その呼吸を静かに支える術です。
🍵 養生の知恵──腎をいたわる暮らし
腎は、静かに、深く、命を支える臓。
その働きを守るには、十分な睡眠、冷えの予防、そして腎を養う食材(黒豆、山芋、クルミなど)が欠かせません。
また、秋冬の乾燥する季節には、肺腎の連携を意識した養生が重要です。
温かい呼吸法、蒸し料理、そして鍼灸による調整が、腎の力を育ててくれます。
腎は、命の根。
その根が水を巡らせ、気を納めることで、私たちは潤い、呼吸し、生きていく。
鍼灸は、その根にそっと触れ、命の流れを整える術。
一針一息の中に、静かな生命の調和が息づいています。