
27/07/2023
< 風邪(ふうじゃ)による大腸の機能障碍 (1) >
この女性患者さん(60代)は、医師に”大腸閉塞”と診断されていました。大腸閉塞なら、進行度合いによっては緊急手術ということになります。普通は絶食しつつ、下剤をつかって排便を促しながら様子を見ます。私も慎重になって、捻転があるのか、単純な癒着なのか、腸管が炎症を起こして出血などしていないのか、患者さんに話を聞きました。このまま治らなければ命にかかわるので、手術する他ないからです。
すると、どうも食べられるようなのです。食べられるし、便も出るようです。ただし水のような便が出るだけだということです。食べているものが、お粥だけだというので、水便については仕方がありません。「では閉塞していないのですね?」と聞くと、「CTを撮って、便が詰っていたので、大腸閉塞という診断なのだそうです」ということで、私は少しホッとしました。
「ただ、下腹がずっと痛むのです。お粥を食べて下剤を飲むと、気持ちが悪くなり、お腹が張ってますます痛みます。このままでは、とても治る気がしません」という訴えを聞くと、どうも患者さんの直感が正しいようです。
脈をみると沈んでいます。お腹をみると、左右の鼠径部から臍にかけて筋張りが広がって、これを圧すと患者さんの顔がゆがみます。この張り方は便が詰っているのではなく、大腸に邪気が滞っている張り方で、見せていただいたCTの便塊の場所とは違います。その前に、風邪を引いたと聞いていたので、私は風邪(ふうじゃ)か熱邪が原因ではないかと考えました。
まず脈を浮かせるように鍼をして、その後は下腹部の邪気を手足に引くように鍼をしました。腎経と、肺経・大腸経です。15分ほど鍼をしたところで、患者さんがトイレに行きたいということでしたので、しばらくトイレの時間になりました。実は、うまく行けばこれで治るかもしれないのです。(つづく)
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