31/08/2024
【セルフメディケーションの進歩】
セルフメディケーションの進歩のために、緊急時に薬が手に入るようにと、いろいろと規制緩和の工夫をする人たちがいる。
歯が痛くて我慢ができない・・・それはあるかもしれないから、常備薬で解熱鎮痛薬くらい買い置きしてはどうだろう? 日本には配置薬(置き薬)という制度もある。
では、「熱が出たから解熱鎮痛薬が欲しい」というのはどうか?
発熱の訴えに対して、市販薬を売れる場面は、現実には風邪くらいしかないと思う。では、発熱は風邪のときだけに現れる症状か? ここが問題なのである。
私の所属する(公社)全薬協(登録販売者の団体)では、今冬に向けて『熱だ!風邪かも』と題して研修を行う。その研修の中で重症多形滲出性紅斑(SJS やTEN 等)、急性喉頭蓋炎、間質性肺炎、肺炎、髄膜炎、虫垂炎、小児に発熱と発疹がみられる川崎病なども紹介して、発熱に対する認識を深める。
なぜなら、風邪の勉強だけをしていても、「風邪に似た○○病」をチェックしきれないからである。
以前に(公社)全薬協の研修では、SJS患者会の湯浅和恵さんを取材したビデオを観たが、SJSに対する認知度が低かった時代においては、医療機関においてすら、目に症状が現れるまでずっと風邪として対処されていた(と記憶している)。
解熱鎮痛薬の効能・効果には「発熱時の解熱」とあるが、だからと言って、発熱者すべてに解熱鎮痛薬を売って良いわけではないことが、上述の病気を知ればわかる。
販売現場の登録販売者は、(公社)全薬協の研修を受講することによって、医薬品の販売に慎重になり、体の中で何が起きているのかを考えながら販売の可否を判断するようになるだろう。
セルフメディケーションの進歩には、いつでもどこでも買える便利さや安さより、そのことの方が重要ではないだろうか。
ただし、自由経済の下、利益につながらない判断を経営者は喜ぶか? ここは別の問題。