30/10/2025
『私と香りのストーリー』Vol.1
「ブラックコーヒーとダークチョコレート」
偶然の出会いだった。
産業まつりで賑わう人々の頭上に並ぶ店名に、宮古島方言が入っているのと、看板メニューにレアなコーヒー豆、ゲイシャの文字を見て思わず足を止めた。
白シャツにベスト、蝶ネクタイ、バリスタエプロンに身を包むマスターが1人で客の好みを聞き、豆を引き、ハンドドリップでコーヒーを入れていた。
マスターはとても話が上手い。上手いと言うか、めちゃくちゃコミュ力が高い。
コーヒーの注文待ちや、コーヒーを抽出している間にも、お久しぶり初めまして関係なく、そこにいる客を巻き込み会話をする。
一方的ではなくて、それぞれに会話を交差させるように話を進めていくのだ。さながら名司会者である。
ゲイシャのアイスコーヒーを頼む。
「なんでゲイシャを知ってるの?アイスで飲むなんて贅沢だよぉ〜」と言ってくれた。
この時点でもうマスターのファンです。ちょろすぎる。
ゲイシャはコナ・コーヒー、ピーベリーに並ぶ希少性の高い高級コーヒーのひとつである。
香りが華やかで、ちょっとフルーティ、ぱぁっと
花が大きく花びらを広げて咲き誇るように広がるところが好き。
そして重すぎず、酸味のバランスが良いところが私の好みにドンピシャ。
ゲイシャに出会ったのは、カカオハンターさんのチョコレートを買ったことがきっかけだった。
なぜか分からないけどカカオを育ててチョコレートを作ってみたくて、色々調べてカカオハンターさんに辿り着いた。
その当時チョコレートを通販していたのが丸山珈琲さんで、パナマ産ゲイシャをペアリングとして販売していた(ような気がするけど違うかも)ので、共に購入したのだった。それからゲイシャの虜。
マスターは良い豆しか扱わないそうで、メニュー看板には高級コーヒーの種類が3つ、深煎り中煎り浅煎りと厳選されたものが記入されている。
急かさせるようなコーヒーの淹れ方は好きじゃない、注文が入ったら豆を挽き、じっくり育てるようにお湯をドリッパーに落としていく。
この時間もコーヒーの一部なのだ。
芳香成分は熱によって揮発したり水蒸気と共に拡散されるので、ホットの方が香りを楽しむ時間が長い。
ドリップしてもらっている間に、ゲイシャの香りを堪能する。
あぁー、やっぱり良い香り!これです、これ!
大きなカップに氷が蓋が閉まらない量が入り、丁寧に抽出したコーヒーを注ぐ。氷がカラカラ言いながら濃いめのコーヒーと溶けて、全てが合わさるとちょうど蓋が閉まる。
その塩梅を見てると手品のようだった。
手渡されたコーヒーをその場で一口飲むと、良い香りが鼻から抜け出る。
アイスコーヒーでもなんて芳醇な香りなんだろう!やはり淹れ手の技術力が成せる技なんだろうなぁ、本当に美味しかった。
氷が溶け切っても美味しかった。全部飲んでしまうのが寂しくなった。
コーヒーの香りに幼い頃に両親がコーヒーメーカーでコーヒーを入れていた朝を思い出す。
あの頃飲めはしないけれど、あの香りがとっても癒しだったのは覚えてる。
朝は家族全員バタバタで、眠いし、家を出たくないし、休みたいのしんどい中でも安らぐ気持ちだった。
五感の中で、嗅覚がとらえる香りだけが、感情や本能に関わる脳の大脳辺縁系と言う部分に、にダイレクトに伝わるということを知っているだろうか?
大脳辺縁系には記憶に関連する海馬があるため、香りはその時感じた感情をリアルに思い出させたり、追体験するトリガーになるのだ。
特に不快な匂いは大脳辺縁系に直接送られる割合が大きく、感情も強く反応したり、記憶する。
自分にとって害か良いか、毒か餌か、命に関わるものがどうかを敏感に判断するという、動物本来の本能反応からきている。
と言うことは、良い香りと感じている時は良い思い出や感情が蘇り、過去を追体験していることになる。
ホッとする瞬間、癒されたこと、ワクワクしたこと、香りだけでストレスや疲労も消えていく魔法みたいなもの。それも何度だってリピートが可能だ。
良い香りに出会った思い出を、たくさん作っておこうと思う。
ちょっと落ち込んだりした時に、自分の背中を優しく押してくれるきっかけになるだろうから。
帰宅してからマスターのお店を調べたが出てこなかった。
どうやらイベントに出店する形式らしく、まさに一期一会神出鬼没だった。
あのゲイシャにもう一度会いたい。
結局、産業まつりに通って、その後2回コーヒーを味わったのであった。
ちょっとばかりカフェインを取りすぎたのか、週末は目がランランだった笑
秋の夜長ということにしよう、そうしよう。
『私と香りのストーリー』毎週木曜日更新
#ロミロミ #アロマ #スクール #沖縄