21/11/2025
【鍼灸研究最前線:鍼による創傷治癒(wound healing:ウンド・ヒーリング)】
2025年11月18日 南京中医薬大学
「鍼治療はCGRP-RAMP1-TSP1を介したマクロファージM2の分極を介して創傷治癒(wound healing)を促進する」
Acupuncture accelerates wound healing via CGRP-RAMP1-TSP1-mediated macrophage M2 polarization
Xiaoer Liu et al.
Chinese Medicine volume. 2025 Nov 18;20(1):192.
https://cmjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13020-025-01255-2
以下、引用。
「鍼治療は、創傷閉鎖を著しく促進し、コラーゲン沈着を促進し、組織修復の質を向上させました。これらの効果は免疫調節効果と関連しており、創傷内のM2マクロファージ分極の促進、脾臓における全身性マクロファージ負荷の減少、IL-1βおよびIL-6の局所および全身レベルの低下を特徴としていました。メカニズム的には、CGRP-RAMP1-TSP-1経路の活性化が重要であり、BIBN4096による阻害は、鍼治療によるマクロファージ分極および創傷治癒への影響を阻害しました。注目すべきことに、鍼治療による炎症性サイトカインの抑制は、CGRPシグナル伝達に部分的にしか依存していませんでした。」
「新たな証拠によると、CGRPは好中球、単球、マクロファージ上の受容体活性修飾タンパク質1(RAMP1)と相互作用することで、創傷治癒過程における免疫応答を調節することが示唆されている。」
「この相互作用は、内分泌/傍分泌作用を有する多機能性細胞外マトリックスタンパク質であるトロンボスポンジン-1(TSP-1)を誘導することにより、マクロファージの抗炎症/修復促進性表現型への分極を促進する」
「要約すると、私たちの研究は、鍼治療が損傷した皮膚の局所炎症を効果的に軽減し、それがマクロファージM2分極を誘導する能力と関連している可能性があることを示しています。」
「本研究は、鍼治療がマクロファージのM2分極を促進し、CGRP-RAMP1-TSP1経路を活性化することで局所炎症性微小環境を改善し、皮膚創傷治癒と組織リモデリングを促進することを初めて確認した研究です。」
「注目すべきことに、CGRP阻害によって脾臓マクロファージ数の減少は消失したが、血清中の炎症性因子のダウンレギュレーションは持続しており、これはCGRP非依存性経路が鍼治療の全身的な抗炎症作用に寄与していることを示唆している。局所的なCGRP-RAMP1-TSP1軸に加えて、鍼治療は体性シグナルを中枢神経系に伝達し、脊髄から脳幹(孤束核、延髄前部腹内側核、迷走神経背側運動核を含む)および視床下部に至るまでの複数の領域を活性化する可能性がある。この中枢処理は、迷走神経-副腎-ドーパミン軸 [ 30 ]、交感神経経路 [ 31 ]、HPA軸 [ 32 ] など、神経伝達物質やホルモンを介して免疫活動を全身的に調節する複数の遠心性経路を活性化する。」
以上、引用終わり。
2000年代にチャールズ・D・ミルズ(Charles D Mills)の研究者グループが、
T細胞のTh1とTh2にヒントを得て、
マクロファージにM1型、M2型があることを解明します。
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2015年 チャールズ・ミルズの総説論文
「マクロファージのポラライゼーション極性化:健康への影響」
Macrophage Polarization: Decisions That Affect Health
Charles D Mills
J Clin Cell Immunol. 2015 Oct;6(5):364.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4780849/
※「マクロファージで建設的なのは、M2であり、破壊的なのは、M1と呼ばれます」
The constructive – repair – activity is commonly called M2 and the destructive – kill – activity of macrophages is called M1
2021年に天津中医薬大学が、鍼の抗炎症作用と「マクロファージのポラライゼーション極性化」についてレビュー論文を発表しました。
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2021年7月19日天津中医薬大学『チャイニーズ・メディスン』
「マクロファージ・ポラライゼーション極性化の役割と鍼の抗炎症作用の調節メカニズム:文献レビューと展望」
The role of macrophage polarization and associated mechanisms in regulating the anti-inflammatory action of acupuncture: a literature review and perspectives
Jiaqi Wang et al.
Chinese Medicine volume 16, Article number: 56 (2021)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34281592/
神戸東洋医学研究会では、YouTubeで解説動画をつくっています。
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YouTube【東洋医学の最新情報 vol.50】鍼・マクロファージ・抗炎症
https://youtu.be/D-IJYtPnDUw?si=gccTJoVbiyyo-jNH
RAMP1(ランプ・ワン)は、「受容体活性修飾タンパク質(RAMP:Receptor activity-modifying proteins)」の略であり、
1998年に『ネーチャー』で発見が報告されました。
Gタンパク質共役型受容体(GPCR:G protein-coupled receptor)の機能が、単純に受容体単体で決まるのではなく、RAMPという補助タンパク質で決まることが判明し、CGRP受容体と結合して働きます。
TSP-1は「トロンボスポンジン-1(thrombospondin-1)」であり、1970年代にナンシー・ベンジガー(Nancy Baenziger)が発見し、細胞接着に働きます。
鍼によって、創傷治癒が早くなるメカニズムの解明の一歩として重要だと感じました。