渋川市国民健康保険あかぎ診療所

渋川市国民健康保険あかぎ診療所 プライマリ・ケアを実践する田舎の診療所です。

21/02/2022

慢性背部痛に対する水中運動

NEJM Journal Watch General Medicine 日本語版より

背中の痛みには水泳ですか。こちらも覚えておきたいと思います。

整形外科学 プライマリケア
水中運動は、疼痛および機能のいくつかの指標において、従来の理学療法よりも優れていた。
慢性腰痛を管理する方法の探求が継続する中で、中国の研究者らは、中等度~重度の腰痛(期間の平均13ヵ月)を有する成人113人(年齢範囲18~65歳、平均年齢31歳)において、指導下での水中運動を従来の理学療法と比較する単盲検ランダム化試験を行った。参加者は指導下での水中運動療法または従来の理学療法にランダムに割り付けられ、週2回のセッションを12週間受けた。

追跡1年の時点で、24点尺度の障害スコアの平均は、水中運動群の患者では従来の運動群の患者よりも改善が約4点大きく、これは臨床的に意味のある差であった。疼痛の10点尺度では、水中運動群の患者は従来の運動群の患者よりも改善が約2点大きかった。機能と睡眠の副次的エンドポイントでも有意な改善が認められ、水中運動群の患者のほうが良好であった。

コメント
これらの患者は、米国の多くのプライマリケア医が診察する慢性腰痛患者よりも平均して若く、われわれの患者の多くにとっては指導下での水中運動へのアクセスが問題かもしれない。著者らは、この研究は「下肢痛の有無にかかわらず」背部痛の患者を登録したと述べている。患者の約20%が放散痛を有していたが、これがとくに神経根性下肢痛(例:坐骨神経痛)を指しているのかどうか、そのような患者が非特異的な腰仙部痛の患者と異なる反応を示したか不明である。しかしこれらの結果は、よくみられ難治性であることが多いこの問題を管理するためのもう1つの手段を提供している。

Peng M-S et al. Efficacy of therapeutic aquatic exercise vs physical therapy modalities for patients with chronic low back pain: A randomized clinical trial. JAMA Netw Open 2022 Jan 7; 5:e2142069. (https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2021.42069)

パニック障害に対して、escitalopramとsertralineはもっとも少ないリスクで最大の利益をもたらすNEJM Journal Watch General Medicine 日本語版よりエスシタロプラムはレクサプロ(こちらは聞いた...
21/02/2022

パニック障害に対して、escitalopramとsertralineはもっとも少ないリスクで最大の利益をもたらす

NEJM Journal Watch General Medicine 日本語版より

エスシタロプラムはレクサプロ(こちらは聞いたことある)とセルトラリンはセルトラリン錠(こちらは聞いたことない)は使用経験はありませんが、パニック障害は比較的頻度の高い疾患なので覚えておきます。

精神医学 医薬品情報
メタアナリシスでは、他の薬物も有効であったが、有害作用が多かった。
メタアナリシスは、パニック障害の管理において、三環系抗うつ薬(tricyclic antidepressants:TCA)、ベンゾジアゼピン系薬、選択的セロトニン再取込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor:SSRI)はいずれもプラセボよりも有効であるが、TCAおよびベンゾジアゼピン系薬はSSRIよりも有害作用のリスクが高いことを示唆している。その結果いくつかのガイドラインは、パニック障害の第一選択治療としてSSRIを推奨している。しかし、どのSSRIがもっとも有効で、有害作用のリスクがもっとも低いのであろうか。

研究者らは、パニック障害患者12,800人において、11のクラスの薬物のいずれかを互いに比較するか、プラセボ(または無治療)と比較したランダム化試験87件のネットワークメタアナリシスを行った。試験のアウトカムは、寛解(すなわち、治療中止後1週間パニック発作を起こさない)と有害作用を含んだ。ほとんどの試験の期間は8~12週間であった。

これまでの研究と同様に、TCA、ベンゾジアゼピン系薬、SSRIは、もっとも有効な薬物クラスであり、SSRIはTCAまたはベンゾジアゼピン系薬に比べて有害作用が有意に少なかった。さまざまなSSRIをプラセボと比較したところ、escitalopramとsertralineがもっとも有効であり、有害作用がもっとも少なかった。paroxetine、fluoxetine、fluvoxamineは、有効性はescitalopramとほぼ同等であったが、有害作用が多く認められた。citalopramは有効性がもっとも低かった。

コメント
プライマリケア医はうつ病、不安、そして関連する疾患に対して専門医のコンサルテーションなしにSSRIを処方することが多く、SSRIの選択は困難でありうる。それ以外を考慮すべき特段の理由がない限り、これらのデータは、パニック障害患者に対してescitalopramまたはsertralineを最初に試みることを支持するものである。

Chawla N et al. Drug treatment for panic disorder with or without agoraphobia: Systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ 2022 Jan 19; 376:e066084. (https://doi.org/10.1136/bmj-2021-066084)

Objective To identify drug classes and individual selective serotonin reuptake inhibitors (SSRIs) with high rates of remission and low risk of adverse events in the treatment of panic disorder with or without agoraphobia. Design Systematic review and network meta-analysis. Data sources Embase, Medli...

Diabetes Prevention Programからの長期追跡NEJM Journal Watch General Medicine 日本語版より長期効果は糖尿病の予防にはなりそうだけど死亡を減らすまでの効果はなさそう(でも生活習慣改...
14/02/2022

Diabetes Prevention Programからの長期追跡

NEJM Journal Watch General Medicine 日本語版より

長期効果は糖尿病の予防にはなりそうだけど死亡を減らすまでの効果はなさそう(でも生活習慣改善の方がメトホルミンよりはお金などのコストを含めた害がなさそう、手間はかかりますが糖尿病予防に良い可能性はある)ですね。

糖尿病 医薬品情報 予防医学
21年の時点での死亡率は、最初の時点で生活習慣介入、metforminまたはプラセボのいずれかにランダムに割り付けられた前糖尿病状態の患者において同程度であった。
Diabetes Prevention Programでは、前糖尿病状態で肥満の成人3,200人(平均年齢51歳)が、強化した生活習慣介入、metformin、プラセボのいずれかにランダムに割り付けられた(NEJM JW Gen Med Mar 15 2002、N Engl J Med 2002; 346:393)。2002年に発表された結果では、生活習慣介入群とmetformin群の参加者は、3年の時点で糖尿病の血糖基準を満たす割合が有意に低かった。ランダム化試験完了後、参加者の大部分は引き続き長期追跡され、その期間中にmetformin群の参加者はmetforminの服用を継続し、生活習慣介入群の参加者には追加の「強化」セッションが提供された。

今回研究者らは、長期的な死亡率について報告している。追跡期間の中央値が21年の時点で、心血管関連死亡率、がん関連死亡率、および全死亡率に群間差は認められなかった(全死亡率はいずれの群も約14%)。追跡期間中の背景の変化(例:もともとmetformin群ではない一部の患者によるmetforminの開始)を考慮に入れるための感度分析は死亡率の結果を変化させなかった。21年の時点で、糖尿病の有病率は、生活習慣介入群で53%、metformin群で55%、プラセボ群で60%であった。

コメント
この研究は、前糖尿病状態から糖尿病(やや恣意的な臨床検査閾値により区別されたカテゴリー)への移行を遅らせる介入が、死亡率を低下させるには不十分であることを示唆している。延長した追跡期間に厳密なランダム化がなかったことは、結果を解釈するにあたり明らかな限界である。それにもかかわらずこれらの結果は、前糖尿病状態の患者にmetforminを処方することの根拠、American Diabetes Associationのガイドラインによると「考慮すべき」診療であるが、を弱めると私は考える(Diabetes Care 2022; 45:Suppl 1:S42)。

Lee CG et al. Effect of metformin and lifestyle interventions on mortality in the diabetes prevention program and diabetes prevention program outcomes study. Diabetes Care 2021 Dec; 44:2775. (https://doi.org/10.2337/dc21-1046)

OBJECTIVE. To determine whether metformin or lifestyle modification can lower rates of all-cause and cause-specific mortality in the Diabetes Prevention Program

14/02/2022

小径線維ニューロパチー ― 1件の症例シリーズ

NEJM Journal Watch General Medicine 日本語版より

これかもしれない患者さんを最近診察しました。原因不明だけど症状がつらいとのことでしたのでリリカを処方して経過観察しているところです(予約外外来で見たのでその後は予約で主治医に受診するはず)。

脳神経・神経内科学
この疾患は特発性であることが多く、一般的な診療ではおそらく十分に診断されていない。
小径線維ニューロパチーは、神経障害性の痛み、針刺激・温熱・寒冷に対する異常な感覚、自律神経機能障害があるが、筋力低下はなく、固有感覚と振動感覚は正常であることで特徴づけられる。神経伝導検査と筋電図検査は正常である。この報告でMayo Clinicの研究者らは、純粋な小径線維ニューロパチー(すなわち、受診時に大径線維ニューロパチーの所見がない)を有する一連の患者94人について報告している。すべての患者が1つ以上の確認検査(例:温熱性発汗検査、定量的感覚検査、表皮内神経線維密度を測定する皮膚生検)で陽性であった。

患者の年齢の中央値は54歳、平均体格指数(body-mass index:BMI)は30.4 kg/m2であった。ほぼすべての患者が下肢に皮膚の神経障害性疼痛を有し、17%が上肢の病変を有していた。患者の3分の1が感覚の脱失を報告した。自律神経症状は概ね軽度であった。症例の大部分(70%)が特発性と考えられたが、15%では糖尿病が原因と推定され、さらに36%がその後の平均で6年間の追跡期間中に糖尿病を発症した。リウマチ性疾患は30%に認められたが、この報告では原因とはみなされなかった。追跡期間中に、患者の約3分の1が大径線維感覚ニューロパチーおよび運動ニューロパチーを発症した。

コメント
この報告は小径線維ニューロパチーの概要をよく示していて、これは一般的な診療ではきっと十分に診断されていない。この研究における耐糖能の異常および肥満の有病率の高さは、小径線維ニューロパチーとメタボリックシンドローム(代謝症候群)との強い関連を示唆するほかの研究を補強する。治療が必要なほど症状が厄介な患者には、神経障害性疼痛に対して一般的に処方される薬物を使用することができるが、個々の症例においてその有効性は予測できない。

Johnson SA et al. Small fiber neuropathy incidence, prevalence, longitudinal impairments, and disability. Neurology 2021 Nov 30; 97:e2236. (https://doi.org/10.1212/WNL.0000000000012894)

高流量鼻カニューレはCOVID-19患者の挿管の回避に役立ったNEJM Journal Watch General Medicine 日本語版よりこちらも最近言われ始めたことですね。COVID-19 感染症 救急医学・集中治療従来の酸素療法...
07/02/2022

高流量鼻カニューレはCOVID-19患者の挿管の回避に役立った

NEJM Journal Watch General Medicine 日本語版より

こちらも最近言われ始めたことですね。

COVID-19 感染症 救急医学・集中治療
従来の酸素療法と比較して、高流量鼻カニューレでは機械的換気が少なく、回復が早かった。
重症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と低酸素血症性呼吸不全を有する患者を補助する最善の方法について、われわれは2年近く議論してきた。高流量鼻カニューレ(high-flow nasal cannula:HFNC)はウイルスのエアロゾル化を促進し医療従事者のリスクを高めるという当初の懸念にもかかわらず、米国全土の医療センターで患者はHFNCにより安全に治療されてきた。残る疑問の1つは、HFNCによる補助がその後の挿管および機械的換気の回避に役立つかどうかである。

Columbiaの研究者らは、COVID-19で急性低酸素血症性呼吸不全(酸素分圧/吸入酸素濃度比[PaO2:FiO2]200未満)を有する患者約200人を、ランダム化後30分以内に従来の酸素療法またはHFNCを行う群にランダムに割り付けた。即時挿管が妥当な患者または有意な高炭酸ガス血症を有する患者は除外した。挿管と抜管の決定はプロトコール化され、従来の酸素療法からHFNCへのクロスオーバーを認めなかった。ほぼすべての患者がステロイドを投与され、覚醒時の自己腹臥位の累積時間は両群で同様であった。

HFNCによる治療を受けた患者のほうが挿管と侵襲的機械的換気を必要とする患者が少なく(34% 対 51%)、回復までの期間の中央値はHFNC群のほうが3日短かった。有害事象、入院期間、死亡率は両群で同様であった。

コメント
挿管の回避は、重要な患者中心のアウトカムである。機械的換気を必要とする患者には、せん妄から人工呼吸器関連肺炎にいたるまで、多くの院内合併症のリスクがある。ほとんどの病院で、低酸素血症患者は最初は従来の酸素療法で治療され、臨床家は侵襲的換気の前に患者をHFNCに移行させることが多い。臨床家はPaO2:FiO2比をその移行の指針として明示的には使用しないかもしれないが、この研究の閾値である200よりも低い比で移行が行われることが多い。しかしこの研究は、より早期にHFNCを使用することがよりよいストラテジーかもしれないことを示唆している。

Ospina-Tascón GA et al. Effect of high-flow oxygen therapy vs conventional oxygen therapy on invasive mechanical ventilation and clinical recovery in patients with severe COVID-19: A randomized clinical trial. JAMA 2021 Dec 7; 326:2161. (https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2786830)

This randomized trial assesses the effect of high-flow oxygen therapy through a nasal cannula vs conventional oxygen therapy on 28-day intubation rates and time to clinical recovery among patients with respiratory distress due to COVID-19.

07/02/2022

COVID-19非入院患者の治療のためのremdesivir

NEJM Journal Watch General Medicine 日本語版より

初期のデータだと酸素化が悪くなってきてからじゃないと効果がないという感じでしたが、結構効果がありそうですね(静注というのが外来や在宅ではネックですが)。

COVID-19 感染症 医薬品情報
3日間の静脈内投与により入院率が87%低下した。
remdesivirは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)肺炎による入院患者の治療薬として米国FDAに承認されている。今回研究者らは、企業の支援を受けた1件の試験で、入院しておらずリスクが高い軽症~中等症のCOVID-19患者において、remdesivirがアウトカムを改善するかどうかを調べた。この試験には、重症COVID-19の危険因子を少なくとも1つ有し、症状が7日以内(期間の中央値5日)で、ワクチン未接種の患者562人が含まれた。参加者はremdesivirの静脈内投与を受ける群(1日目に200 mg、2日目と3日目に100 mg)か、プラセボの投与を受ける群にランダムに割り付けられた。

COVID-19に関連した入院の発生率は、remdesivir群のほうがプラセボ群よりも有意に低く(0.7% 対 5.3%)、87%の相対的低下であった。いずれの群でも死亡した患者はいなかった。

コメント
remdesivirは、経口抗ウイルス薬のmolnupiravirや、ritonavirでブーストしたnirmatrelvir、モノクローナル抗体のsotrovimab(単回静脈内投与)と同様に、オミクロン株に対して活性があると期待される。しかし患者により届けやすいこれらの選択肢が十分に供給されるまでは、remdesivirの適応外使用が、リスクがもっとも高い一部の非入院患者の治療に役割を有するかもしれない。それでも、remdesivirを3日間連続で静脈内投与する必要があることは、すでにストレスを受けている医療システムにとって、医療を提供する上での大きな障害である。代わりとなるこの療法の展開のためのストラテジーには、在宅での注射医療サービスおよびskilled nursing facilityが含まれる。

Gottlieb RL et al. Early remdesivir to prevent progression to severe Covid-19 in outpatients. N Engl J Med 2021 Dec 22; [e-pub]. (https://doi.org/10.1056/NEJMoa2116846)

01/02/2022

2月の医療情報、二つ目です。
今回はピロリ除菌による胃癌予防について。
1.臨床的な疑問:胃癌の既往のある患者さんの近親者のピロリ除菌は胃癌発症のリスクを減らすか?
→紹介文での答え:胃癌患者さんの第一近親者がピロリ菌陽性の場合除菌を行うとその後の胃癌発症リスクが有意に減少する。この韓国におけるスタディで行われたサーベイランスはもちろん一般的なやり方ではなく、特に症状が出にくい癌の場合、過剰診断が多くなるため症状が出現するまで待って検討した場合では結果が異なる可能性がある。また、韓国よりピロリ菌の感染率の低い地域でもその利益は低くなる可能性がある。
2.僕の意見:どの程度胃癌のリスクが有るかでピロリ菌除菌のメリットは異なるかもしれませんが、若年者のピロリ菌感染者の除菌に関してはやはり積極的にすすめるべきかもしれませんね。
3.原文の紹介
Choi IJ, Kim CG, Lee JY, et al. Family history of gastric cancer and Helicobacter pylori treatment. N Engl J Med 2020;382(5):427-436.
まとめ
Study Design:二重盲検無作為割付比較試験
ピロリ菌感染と胃癌の間には強い関連がある。今韓国のスタディの著者らは胃癌患者さんの第一近親者でピロリ感染陽性の1838例を登録した。彼らはピロリ菌除菌を受けるかプラセボ治療を受けるか無作為に分けられた。除菌療法はアモキシシリン1000mg、クラリスロマイシン500mg、ランソプラゾール30mgを1日2回ずつを1週間のレジメンだった。参加者の平均年齢は49歳(40−65歳)で、49%が男性、43%が喫煙者だった。著者らは最後まで経過観察可能であった1676例を対象とした修正ITT解析を行った。すべての参加者は2年毎に上部消化管内視鏡検査を受け、フォローアップは癌発症に関して9.2年、生存率に関しては10.2年行われた。治療が行われた患者さんでは胃癌の発症率が低かった(1.2%vs2.7%:P=0.03)。ピロリ菌除菌成功例の方が失敗例に比べ胃癌発症率は低かった(0.8%vs2.9%)。総死亡率は有意差がなかった(治療群1.7%vsプラセボ群2.0%)。

01/02/2022

2月の医療情報、一つ目です。
今回は肥満手術の効果について。
1.臨床的な疑問:肥満手術は総死亡や肥満関連疾患の減少と関係があるか?
→紹介文での答え:集団登録のデータを用いた検討によると、肥満手術は総死亡と多くの肥満関連疾患の減少と関連している。このスタディの研究者らは無作為化比較試験(RCT)のデータを除外してるため、患者さんの健康習慣やその他のわかっていない因子の差がこの結果に影響を与えている可能性がある。
2.僕の意見:肥満手術の効果を検討した二つの観察研究で、死亡率減少の可能性が示唆されていましたが、
Sjöström L et al. Effects of bariatric surgery on mortality in Swedish obese subjects. N Engl J Med 2007 Aug 23; 357:741-52.

Adams TD et al. Long-term mortality after gastric bypass surgery. N Engl J Med 2007 Aug 23; 357:753-61.
今回はそれとは別(参考文献には挙げられていますが)の国や地域のデータベースのデータを用いて検討したスタディをまとめたものです。やはり巨大なデータでも潜在的なバイアスが排除されていないことと、日本人の肥満に当てはまるとは限らないことが問題ですね。
3.原文の紹介
Wiggins T, Guidozzi N, Welbourn R, Ahmed AR, Markar SR. Association of bariatric surgery with all-cause mortality and incidence of obesity-related disease at a population level: A systematic review and meta-analysis. PLoS Med 2020;17(7):e1003206.
まとめ
Study Design:メタアナリシス
このスタディの研究者らはPubMedやEMBASEそしてWeb of Scienceを検索して、国家あるいは地域医療管理データベースを用いて様々な肥満手術による総死亡率や肥満関連疾患に対する影響を調査した研究を同定した。彼らは、肥満関連疾患を2型糖尿病、高血圧、閉塞性の睡眠時無呼吸症候群、虚血性心疾患、心不全、脂質代謝異常症、静脈血栓症と定義した。また彼らは、RCTを除外したが対象となって研究は対照があり追跡期間は最低でも18か月あるものとした。2名のレビューワーがそれぞれ独立して組み入れるスタディの評価を行った。未発表の研究に関する扱いに関しての記載はなかった。最終的に、1539904名の対象者を含んだ18件のスタディが組み入れられ、その内269818名が何らかの肥満手術を受けていた。肥満手術の内訳は、胃バイパス術(N=137578名、51%)、スリーブ胃切除術(N=58916名、22%)、調節可能胃バンド術(N=52973名、20%)、垂直バンド胃形成術(N=6397名、2%)、胆膵転用術(N=1002名、0.4%)、そして代替あるいは特別名称がついていない手術(N=12952名、5%)だった。追跡期間の中央値は59か月だった。著者らは全体的に研究の質は高かったと報告している。肥満手術とその後の死亡率との関連を検討した11件の研究のメタアナリシスでは、異質性は高いものの出版バイアスの可能性はなく、手術は総死亡率減少と関係していた(オッズ比=ORは0.62:95%CI0.55-0.69)。2型糖尿病発症リスクを検討した6件のスタディでは、やはり統計学的に異質性は高かったものの出版バイアスの可能性はなく、手術は発症リスクの低下と関係していた(OR0.39:0.18-0.83)。高血圧との関連性を検討した5件のスタディでは、異質性も出版バイアスもなく、リスク低下がみられた(0.36:0.32-0.40)。偶発的な睡眠時無呼吸症候群との関連性を検討したスタディは1件のみであり、手術を行った症例では発症が1.1%だったのに対し、行っていない症例では2%だった。虚血性心疾患との寒冷性を検討した5件のスタディでは、術後リスク低下がみられたと報告されている(0.46:0.29-0.73)が、異質性が高く出版バイアスはなかった。心不全との関連性を検討した2件のスタディでは、関連性は認められなかった。静脈血栓症との関連性を検討したスタディは1件のみで、手術を受けた症例の発症が1.7%だったのに対し、手術を受けなかった症例では4.4%だった(ハザード比0.60:0.43-0.84)。今回のメタアナリシスでは、RCTを除外しているため肥満手術と予後改善の関連性についてバイアスにより良い方に誇張されている可能性があり、注意が必要である。

01/02/2022

COVID-19ワクチン2回接種者からの伝播リスク

NEJM Journal Watch General Medicine 日本語版より

これから「ワクチン接種済みの無症候性ウイルス排出者からの他者への感染も少ない」と言えるわけではありませんが、明るい話題ですね。

COVID-19 感染症 予防医学
2回のワクチン接種を受けたにもかかわらずCOVID-19を発症した人は、接触者への感染性が相当に低い。
2回のワクチン接種を受けたにもかかわらず、とくに2回目のワクチン接種からより長い期間が経過している場合、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症する人もいる。これらの患者は軽症または無症状にとどまることが多いが、他人への感染性がどの程度であるかは不明である。

ドイツのCologne市で2021年の最初の7ヵ月間に行われた住民集団に基づく1件の研究で、2回のワクチン接種を受けた住民357人とワクチン未接種の住民27,457人がCOVID-19と診断された。ワクチン接種を受けたCOVID-19陽性者を各々、COVID-19陽性でワクチン未接種の対照者と年齢、性、ウイルスの型でマッチさせた。ワクチン接種群の人への接触者は、ワクチン未接種である対照群の人への接触者よりも感染した割合が有意に低かった(10% 対 38%)。さらに、2回のワクチン接種を受けた接触者は、ワクチン未接種の接触者よりもCOVID-19を発症するリスクが有意に低かった(13% 対 26%)。

この研究は、2回のワクチン接種を受けたCOVID-19発症者は、ワクチン未接種のCOVID-19発症者と比べて、接触者への感染性が相当に低いということを確認している。

CITATION(S)
Hsu L et al. COVID-19 breakthrough infections and transmission risk: Real-world data analyses from Germany’s largest public health department (Cologne). Vaccines (Basel) 2021 Nov 2; 9:1267. (https://doi.org/10.3390/vaccines9111267)

01/02/2022

血圧を上昇させるかもしれない薬物の使用

NEJM Journal Watch General Medicine 日本語版より

降圧剤使用を始める前に、まずはこれらの薬を中止できないかを検討すべきですね。

高血圧 プライマリケア
米国の高血圧症を有する成人の約5人に1人がこれらの薬物を使用している。
多くの薬物が血圧を上昇させうる。研究者らは、2009~2018年に米国National Health and Nutrition Examination Surveys(NHANES)に参加した米国成人28,000人(平均年齢47歳)の代表的なサンプルにおいて、これらの薬物の使用を評価した。薬物の使用は自己申告であり、一般用医薬品(over-the-counter:OTC)は除外された。血圧を上昇させるかもしれない薬物は、2017年のガイドライン(Hypertension 2018; 71:e13)を用いて同定された。参加者は、正式な高血圧症の診断を有すると自己申告した場合、またはNHANES来院時に血圧が130/80 mm Hg超であった場合に、高血圧症とみなされた。

全体として、全参加者の15%および高血圧症を有する参加者の19%が血圧を上昇させるかもしれない薬物を使用していた。高血圧症を有する参加者においてもっとも多く使用されていた薬物は、血圧を上昇させるかもしれない抗うつ薬(例:モノアミンオキシダーゼ阻害薬、三環系抗うつ薬、セロトニン・ノルエピネフリン再取込み阻害薬)、非ステロイド抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)、コルチコステロイドの全身投与、エストロゲン(例:経口避妊薬)、および精神刺激薬であった。なんらかの血圧を上昇させる薬を使用していることは、高血圧症を有する参加者が降圧薬を服用している確率が高いことと関連していた。

コメント
この観察研究は交絡の影響を受けるものであるが、米国の高血圧症(この研究での定義による)を有する成人の5人に1人が、血圧を上昇させうる処方薬を使用していることを示唆している。限界のひとつは、本研究ではOTCおよびサプリメントが除外されていることである。前述のガイドラインでは、高血圧症患者に対して、臨床家は血圧を上昇させるかもしれない薬物を避ける、減らす、または処方を中止し、必要であれば血圧を上昇させない代替薬(例:血圧を上昇させうる抗うつ薬の代わりに選択的セロトニン再取込み阻害薬)を使用することを推奨している。患者も、血圧を上昇させるかもしれない処方外の物質および薬物(例:鼻粘膜充血除去薬、麻黄、NSAIDs)を避けるべきで

Vitarello JA et al. Prevalence of medications that may raise blood pressure among adults with hypertension in the United States. JAMA Intern Med 2021 Nov 22; [e-pub]. (https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2021.6819)

01/02/2022

末梢動脈疾患で下肢血行再建を受けた患者におけるスタチン使用

NEJM Journal Watch General Medicine 日本語版より

20年以上PADの手術にはかかわっていないので、今の周囲の状況はわかりませんが、以前は高脂血症がなければスタチン投与は考えもしなかったと思います。

循環器
1件の研究は、一部のPAD患者が依然としてスタチンの投与を受けていないことを示唆している。
臨床ガイドラインは末梢動脈疾患(peripheral artery disease:PAD)患者におけるスタチンの使用を強く支持している。この後ろ向き研究で研究者らは、米国の全国心血管疾患登録を用いて、2014~19年にPADに対して下肢血行再建を受けた患者のスタチンの使用状況を同定した。

患者126,000人のうち42,000人が血行再建の手技の時点でスタチンを使用しておらず、この42,000人のうち退院時にスタチンが処方されていたのはわずか30%であった。従来の心血管危険因子を有する患者は、スタチンを処方されて退院する割合がより高かった。

コメント
退院時にスタチンの処方を受けなかった患者の一部は、その後経過観察の診療でスタチンを処方されたかもしれないが、われわれにはまだ改善の余地がある。エディトリアル執筆者は、退院時にスタチンの処方を受けていない患者は、このような状況でよく見られる、複数の専門医が関与する診療の細分化により不利益を被るかもしれないと指摘している。プライマリケア医は、他の理由での来院時にPAD患者のスタチンの使用状況について確認すべきである。

Singh N et al. Prescribing of statins after lower extremity revascularization procedures in the US. JAMA Netw Open 2021 Dec 3; 4:e2136014. (https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2021.36014)

Weissler EH and Jones WS. Who will own the responsibility to prescribe statins? Tragedy of the commons. JAMA Netw Open 2021 Dec 3; 4:e2137605. (https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2021.37605)

24/01/2022

ビスホスホネート製剤を開始してから利益が得られるまでの時間は?

NEJM Journal Watch General Medicine 日本語版より

まあそうだと思いますね。逆に長く飲むことによる不利益の可能性を考えると、(コンプライアンスの問題はありますが、短期間しか飲まない人は少ないので)いつやめるかの方が重要な気がします。

老年医学 整形外科学 医薬品情報
閉経後女性100人あたり脊椎以外の骨折を1件予防するのに約1年かかる。
複数のランダム化試験が、ビスホスホネート製剤は骨粗鬆症を有する閉経後女性の骨折リスクを低下させることを示している。しかし、そのような治療から利益が得られるまでの時間は不明である。骨粗鬆症を有する閉経後女性23,400人(平均年齢範囲63~74歳)を含むalendronate、risedronate、zoledronic acidの10件のランダム化臨床試験のメタアナリシスで、研究者らは、ビスホスホネート製剤治療により骨折予防の利益が得られるまでの時間を明らかにした。

参加者は12~48ヵ月間追跡された。脊椎以外の骨折を1件予防するために、骨粗鬆症を有する閉経後女性100人にビスホスホネート製剤が12ヵ月間投与される必要があった。大腿骨近位部骨折1件および臨床脊椎骨折1件を予防するためには、骨粗鬆症を有する閉経後女性200人にビスホスホネート製剤がそれぞれ20ヵ月間および12ヵ月間投与される必要があった。

コメント
この研究は、ビスホスホネート製剤の治療を開始するかどうかを決めようとしている女性との話し合いに有用な情報を与えうる。一部の女性は、ビスホスホネート製剤により起こり得る有害作用(とくに頻度の高いのは消化器症状)を考慮し、短期間で利益が得られる100分の1の機会を見送ることを選択するかもしれない。しかしそのような患者は、より長期では追加の治療利益が期待されうるということを理解すべきである。さらに今回の結果は、余命が1年または2年しかない患者は、ビスホスホネート製剤の開始により利益を得られる可能性が低いということを示している。

Deardorff WJ et al. Time to benefit of bisphosphonate therapy for the prevention of fractures among postmenopausal women with osteoporosis: A meta-analysis of randomized clinical trials. JAMA Intern Med 2021 Nov 22; [e-pub]. (https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2021.6745)

24/01/2022

methylphenidateはAlzheimer病における感情鈍麻の症状を改善する

NEJM Journal Watch General Medicine 日本語版より

利益を得る人はいるのだと思いますが、過活動になってしまう不安の方が大きい気がします。

脳神経・神経内科学 老年医学 精神医学 医薬品情報
1件のランダム化試験において、この中枢神経刺激薬は少数の患者で感情鈍麻を解消した。
Alzheimer病患者の不穏状態に対して多くの治療法が研究されてきたが、一般的によくあり、早期に発症し、介護者の負担、治療への参加、および患者の全般的な機能障害の持続的な要因である感情鈍麻(apathy)はあまり注目されてこなかった。北米のこの多施設共同試験では、Alzheimer病、軽度~中等度の認知機能障害、相当な感情鈍麻を有する患者200人(80%が抗認知症薬を使用していた)が、刺激薬であるmethylphenidate(10 mgを1日2回)またはプラセボの投与にランダムに割り付けられた。

6ヵ月間の治療期間中、感情鈍麻スコアの改善はプラセボよりもmethylphenidateのほうが有意に大きく、最初の100日間に最大の利益が認められた。6ヵ月時点で、感情鈍麻が認められなかった患者の割合は2群でそれぞれ27%と13%であった。しかし、認知、quality of life(QOL)、介護者の負担の代替指標のいずれについても、群間で有意差は認められなかった。有害作用は認められなかった。

コメント
methylphenidateは、Alzheimer病患者の感情鈍麻の症状をやや改善するが、患者の機能やQOLには影響を及ぼさない。これらの結果は、高齢のうつ病患者におけるmethylphenidateによるcitalopramの作用増強の有益な効果を示した最近の研究の結果と一致している。この選択された集団では有害作用はみられなかったが、高齢者における中枢神経刺激薬のリスクに関するデータは限られており、一貫していない。最近の1件の後ろ向き研究では、心血管有害事象の発生率が過剰となることが示唆された(J Am Board Fam Med 2021; 34:1074)。感情鈍麻に対してmethylphenidateの使用は妥当と思われるが、利益がリスクを上回るかどうか個別に評価されるべきである。

Mintzer J et al. Effect of methylphenidate on apathy in patients with Alzheimer disease: The ADMET 2 randomized clinical trial. JAMA Neurol 2021 Nov; 78:1324. (https://doi.org/10.1001/jamaneurol.2021.3356)

17/01/2022

メタアナリシスで、降圧は糖尿病の新規発症リスクを低下させた

NEJM Journal Watch General Medicine 日本語版より

「糖尿病の過剰なリスクを有する患者(すなわち、前糖尿病状態の患者または糖尿病のほかの危険因子を有する患者)における第一選択の降圧療法として、臨床家はACE阻害薬とARBを検討すべきであることを示唆している。」ということで、まずはACEIを使おうかな?

糖尿病 高血圧 医薬品情報 予防医学
アンジオテンシン変換酵素阻害薬とアンジオテンシン受容体拮抗薬は糖尿病のリスクを有意に低下させたが、β遮断薬と利尿薬はリスクを上昇させた。
降圧は糖尿病の血管合併症の予防に役立つが、糖尿病の発症予防には役立つであろうか? 薬物療法についての複数のランダム化試験は、アンジオテンシン変換酵素(angiotensin-converting-enzyme:ACE)阻害薬とアンジオテンシン受容体拮抗薬(angiotensin-receptor blocker:ARB)が糖尿病の新規発症リスクを低下させる一方で、利尿薬とβ遮断薬はリスクを上昇させるかもしれないことを示唆している。研究者らは、心血管疾患の予防のために特定のクラスの降圧薬をプラセボまたはほかのクラスの降圧薬と比較した大規模ランダム化試験22件の、患者レベルのメタアナリシスを行った。糖尿病の新規発症が副次的アウトカムとして報告され、以前から糖尿病を有していた患者は除外された。

全体として、中央値で4.5年の追跡期間中、5 mmHgの降圧は2型糖尿病のリスクを有意に低下させた(ハザード比[hazard ratio:HR]0.89)。しかし降圧薬クラスのうち、ACE阻害薬とARBは糖尿病リスクを有意に低下させ(HR 0.84)、β遮断薬とサイアザイド系利尿薬はリスクを有意に上昇させ(HRそれぞれ1.48および1.20)、カルシウム拮抗薬は影響しなかった(HR 1.02)。これらの相対リスクは絶対リスクのわずかな差を反映しており、糖尿病はサイアザイド使用者100人あたり約1症例の過剰、β遮断薬使用者100人あたり約2症例の過剰、ACE阻害薬またはARBの使用者100人あたり1症例の減少であった。

コメント
この研究は、糖尿病の過剰なリスクを有する患者(すなわち、前糖尿病状態の患者または糖尿病のほかの危険因子を有する患者)における第一選択の降圧療法として、臨床家はACE阻害薬とARBを検討すべきであることを示唆している。しかし1つの反論は、サイアザイドはグルコース代謝に対する効果がACE阻害薬とは異なるにもかかわらず、少なくともACE阻害薬と同様に有害心血管イベントを予防しているということである(NEJM JW Gen Med Apr 1 2008、Diabetes Care 2007; 31:353)。したがって、糖尿病リスクのわずかな絶対差が降圧薬の選択を決定づけるかどうかは、依然として不明である。

Nazarzadeh M et al. Blood pressure lowering and risk of new-onset type 2 diabetes: An individual participant data meta-analysis. Lancet 2021 Nov 13; 398:1803. (https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)01920-6)

17/01/2022

心停止で電気ショック適応リズムの患者にはただちに電気ショックを行う

NEJM Journal Watch General Medicine 日本語版より

今更何を言っているんだろう(心室細動や無脈性心室頻拍にはすぐ除細動が当たり前なので)と思ってみてみたら、いまだに「ボスミン静注」が幅をきかせているんですね。悪影響しかなさそうですので、やっぱりまずは除細動(エピネフリンは除細動不適応リズムの時のみ優先)ですね。

救急医学・集中治療 医療の質・安全
電気ショック適応リズムの患者では、除細動前にepinephrineの投与を受けるとアウトカムはより不良であった。
電気ショック適応リズム(すなわち、心室細動または無脈性心室頻拍)の患者に対してガイドラインは、複数回の除細動を試みて反応がなかった場合のみepinephrineを推奨している。しかしepinephrineは、不適切にも、1回目または2回目の除細動の試みの前に投与されることがよくある。電気ショック適応リズムに対して初回の除細動の前に投与された場合のepinephrineの影響を明らかにするため、研究者らは、2000~18年に米国の500の病院に入院していた、心室細動または無脈性心室頻拍による院内心停止を起こした患者35,000人を後ろ向きに同定した。患者の28%で除細動前にepinephrineが投与されていた。除細動前にepinephrineの投与を受けた患者約9,000人が、傾向スコアでマッチさせた(propensity-matched)、epinephrineの投与を受けなかった患者9,000人と比較された。

除細動前にepinephrineの投与を受けた患者は、生存退院した割合(25% 対 30%)または良好な神経学的アウトカムで生存退院した割合(19% 対 21%)が有意に小さかった。除細動までの時間の中央値はepinephrine投与群で3分、epinephrine非投与群で0分であった。epinephrineと生存との負の相関は、除細動時間によるマッチング後にも依然として認められた。

コメント
ガイドラインは電気ショック適応リズムの患者に対して迅速な除細動を推奨しているにもかかわらず、4分の1を超える入院患者が除細動前に不適切にepinephrineの投与を受けていた。これは、リズムの評価の遅れか、心静止または無脈性電気活動(心停止の85%超で発生するリズムであり、これに対してはepinephrineが第一選択の治療である)であろうという推測によるのかもしれない。これらの知見の背後にある根本的な要因を理解することが、心肺蘇生中の最善の診療を確実なものとする介入を計画するために不可欠である。

Evans E et al. Epinephrine before defibrillation in patients with shockable in-hospital cardiac arrest: Propensity matched analysis. BMJ 2021 Nov 10; 375:e066534. (https://doi.org/10.1136/bmj-2021-066534)

13/01/2022

術後の持続気道陽圧は呼吸器合併症を予防しなかった

NEJM Journal Watch General Medicine 日本語版より

やっぱりやり過ぎ(介入しすぎ)は良くないですよね。

外科学・移植外科学 麻酔科学
腹部手術後の持続気道陽圧のルーティン使用は、肺炎、再挿管、死亡を予防しなかった。
呼吸器合併症(例:低酸素血症、肺炎)は腹部手術後によくみられ、術後の無気肺に関連すると考えられている。無気肺を最小限に抑えるには、適切な鎮痛とインセンティブ・スパイロメトリー(incentive spirometory)が重要であるが、持続気道陽圧(continuous positive airway pressure:CPAP)がより効果的かもしれない。国際共同の研究者らは、開腹(すなわち、腹腔鏡下ではない)手術を受けた患者約5,000人を、術後4時間以内に少なくとも4時間のCPAPを行うか、通常診療を行うかにランダムに割り付けた。試験に組み入れられた患者の大部分が腸切除か肝胆道の手術を受け、試験に含まれた胃または食道の手術を受けた患者はごく少数であった。

30日の時点で、肺炎、再挿管、死亡の発生率は2群で同程度であり、これらの結果は複数のサブグループで一貫していた。両方の群で同程度の患者が退院後に再入院した。有害事象はCPAPを受けた患者の9%で発生し、もっとも多かったのは閉所恐怖症と口腔鼻乾燥であった。

コメント
術後の無気肺を予防するためのCPAPのルーティン使用は妥当ではない。この研究の患者は陽圧を十分に忍容できたので、明確な適応(術後の低酸素血症など)がある場合にのみCPAPを使用することは妥当である。多くの外科医は陽圧が上部消化管手術後の吻合部の治癒を損なうことを心配しており、この集団におけるCPAPの安全性についてコメントするには、試験に登録された上部消化管手術後の患者では不十分である。

PRISM trial group. Postoperative continuous positive airway pressure to prevent pneumonia, re-intubation, and death after major abdominal surgery (PRISM): A multicentre, open-label, randomised, phase 3 trial. Lancet Respir Med 2021 Nov; 9:1221. (https://doi.org/10.1016/S2213-2600(21)00089-8)

13/01/2022

COVID-19ワクチンとインフルエンザワクチンは同時接種でも問題ない

NEJM Journal Watch General Medicine 日本語版より

日本も早く同時接種可能となってほしいです。他の予防接種が「生→生」以外は制限がなくなったので、コロナワクチンの2週間の縛りは結構面倒です。

COVID-19 感染症 予防医学
COVID-19ワクチンとインフルエンザワクチンに関するランダム化試験は、同時接種が安全で免疫応答を引き起こすことを示した。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンが最初に認可されたとき、他のワクチンの接種は一般に少なくとも2週間の間隔をあけて行われた。しかし経験が蓄積するにつれ、COVID-19ワクチンと他の予防接種の同時接種は標準的なものとなった。今回、英国の1件のランダム化臨床試験はこの診療を支持している。

約680人の参加者が、2種類のCOVID-19ワクチン(ChAdOx1[AstraZeneca社]またはBNT162b2[Pfizer- BioNTech社])と3種類のインフルエンザワクチンからなる6つのコホートの研究に組み入れられた。参加者は、各々のCOVID-19ワクチンの2回目の接種を、インフルエンザワクチンの1つと同時か、3週間の間隔をあけて、受けた。

軽度および中等度のワクチン反応が多くみられたが、発生率はほとんどのコホートで同程度であり、安全性に関する懸念は生じなかった。SARS-CoV-2およびインフルエンザに対する抗体反応は、ワクチンの同時接種を受けた患者と時間差接種を受けた患者とで同様であった。

コメント
これらのデータは、COVID-19ワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種を提供し、それによってこれら2つの深刻な呼吸器系ウイルス感染症を予防する取り組みを簡素化するという、現在の診療を支持している。

Lazarus R et al. Safety and immunogenicity of concomitant administration of COVID-19 vaccines (ChAdOx1 or BNT162b2) with seasonal influenza vaccines in adults in the UK (ComFluCOV): A multicentre, randomised, controlled, phase 4 trial. Lancet 2021 Nov 11; [e-pub]. (https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)02329-1)

住所

赤城町敷島44番地7
Shibukawa-shi, Gunma
379-1104

営業時間

月曜日 08:30 - 11:30
14:00 - 17:15
火曜日 08:30 - 11:30
14:00 - 17:15
水曜日 08:30 - 11:30
14:00 - 17:15
木曜日 08:30 - 11:30
14:00 - 17:15
金曜日 08:30 - 11:30
14:00 - 17:15

電話番号

+81279562220

アラート

渋川市国民健康保険あかぎ診療所がニュースとプロモを投稿した時に最初に知って当社にメールを送信する最初の人になりましょう。あなたのメールアドレスはその他の目的には使用されず、いつでもサブスクリプションを解除することができます。

共有する

カテゴリー