北毛保健生活協同組合

北毛保健生活協同組合 群馬県渋川市内で医療・介護事業を展開しています。

1953年(昭和28年)に、渋川、北群馬の働く人々が中心に、いつでも安心してかかれる医療機関をつくろうと、「渋川診療所」が開設されました。
その後1977年(昭和52年)12月に渋川市有馬に62床の内科・小児科・精神科の病院としてスタート。13年の歳月を経て一般病床100床、療養型病床50床の現在に至ります。新緑に映える榛名山の東の麓、一見あります。

01/10/2025

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。
2025年10月の医療情報、二つ目です。
今回はうつ病に関する説明内容による治療効果について。
1.臨床的な疑問:うつ病を内因性の病気としてではなく環境への適応として説明することは抑うつ症状のある患者さんの転帰を良くするか?
→紹介文での答え:患者さんに対して、抑うつ症状は「他の病気」ではなく、現在の環境への適応であると説明することは、スティグマ(差別や偏見)を減らし、患者さんの受容と自己効力感を高める可能性がある。うつ病を内因的なものとしてではなく、患者さんの生活の中の何かにもっと注意を払う必要があるというシグナルとして、私たち全員が考え始める時なのかもしれない。うつ病の "化学的不均衡 "という説明は、もし真実であったとしても、結果であって原因ではないかもしれない。
2.僕の意見:説明の仕方というか患者さん本人の受け取り方で症状の改善がみられるかもしれないというのは興味深いデータですね。確かに「腑に落ちる」ことで、診察室に入ってきた時は暗い顔をしていたのに、診察後(症状などを聞いてそれに対する考えられる解釈をお話した後)に明るい顔で帰って行かれることは時々あるので、もしかしたらそういった影響があったのかもしれないと思いました。
3.原文の紹介:Daily POEMSより
Schroder HS, Devendorf A, Zikmund-Fisher BJ. Framing depression as a functional signal, not a disease: Rationale and initial randomized controlled trial. Soc Sci Med 2023;328:115995.
まとめ
Study Design:非盲検無作為割付比較試験(隠蔽化あり)
「あなたは脳の化学的なバランスが崩れている」というのは、うつ病患者さんに対する一般的な説明方法である。このような説明は、患者さんの自責の念を減らすかもしれないが、回復への希望を減らすだけでなく、本人や周囲の人に対して「うつ病」という「レッテル」を貼ることにもつながる。また、一部の患者さんにとっては、うつ病のもう一つの説明、つまり現在の症状は自分が置かれている生活状況への適応状態である、ということを理解しにくくする可能性もある。この研究では、うつ病の既往歴があるが(Patient Health Questionnaireうつ病尺度の平均スコア10.51)、精神科専門医による精神療法や薬物処方を受けていない877人が登録された。研究者らの目的は、「うつ病は病気である」という説明を受けていないうつ病患者さんを見つけることであったが、プライマリ・ケアの臨床医によるうつ病治療を受けていても(ということは専門医の診療を受けていなくとも、すでにどちらかの説明を受けていた可能性がある)参加を認めたのは奇妙である(さらに奇妙なことに、研究者らはこれらの患者さんを「治療経験のない患者さん」と呼んだ)。隠蔽化した割り付け方法を用いて、参加者は一連のビデオでうつ病に関する2つの説明のうち1つを受けるように無作為に割り付けられた。一方のビデオでは、うつ病は「脳内の化学的不均衡を含む様々な要因によって引き起こされる病気(症状)である」と説明した。もう一方は、「うつ病の症状は生活の中でもっと注意を払う必要があることを知らせる機能的な信号である」と説明するものであった。「うつ病の症状は(注意)信号である」という説明には、うつ病を克服できる(P = 0.02)、うつ病は新しい洞察につながる適応反応である(P < 0.0001)という参加者の肯定的な信念を持たせるという点でわずかな利点があり、またこのグループでは精神病に関連する偏見や差別が少なかった(P = 0.026)。うつ病のために助けを求める態度、参加者の症状に対する責任感、うつ病に対する成長マインドの指標には差がなかった。有意な結果のエフェクトサイズは小さく、患者さんが以前の治療経験を通じて、あるいは「Google先生(医師)」に相談することによって、うつ病は病気であるというモデルに染まっていた可能性がある。

Schroder HS, Devendorf A, Zikmund-Fisher BJ. Framing depression as a functional signal, not a disease: Rationale and initial randomized controlled trial. Soc Sci Med. 2023 Jul;328:115995. doi: 10.1016/j.socscimed.2023.115995. Epub 2023 Jun 3. PMID: 37301109.

群馬県渋川市内で医療・介護事業を展開しています。

01/10/2025

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。
2025年10月の医療情報、一つ目です。
今回は抗インフルエンザ薬の効果について。
1.臨床的な疑問:インフルエンザ患者に対する抗インフルエンザ薬の有効性はどの程度か?
→紹介文での答え:我々は2013年にオセルタミビルに関する最初のメタアナリシスを発表し、その1年後にコクランレビューが同様の結果を報告した。今回のこの2025年のメタアナリシスも同様の結論を示している。これらの薬剤は入院や死亡率を減少させず、症状の持続期間にわずかな効果しかない。
2.僕の意見:元々抗ウイルス剤は「ウイルスの増殖を抑制する」だけの効果(増えたウイルスが減るわけではない)のため、かなり早く使用する(あるいは予防的投与)以外あまり有効ではない可能性が高いと考えています。しかし、なかなかこの「できるだけ早期の使用」がコストや副作用(あるいは耐性ウイルスの増加も)を考えると難しいです。
3.原文の紹介:Daily POEMSより
Gao Y, Zhao Y, Liu M, et al. Antiviral medications for treatment of nonsevere influenza: A systematic review and network meta-analysis. JAMA Intern Med 2025 Jan 13. Epub ahead of print.
まとめ
Study Design:無作為割り付け比較試験のメタアナリシス
このネットワークメタアナリシスは世界保健機関(WHO)の資金提供を受け、カナダと中国の経験豊富な研究者チームによって実施されたものである。このスタディの研究者は、成人と小児を対象としたインフルエンザ特異的抗ウイルス薬に関する研究を複数のデータベースを用いて検索した。彼らは臨床試験報告書だけでなく登録データ疽含む73件の個別の無作為割り付け比較試験(19件は未発表)を同定した。ほとんどの研究は成人を対象とし、症状発症後2日以内の患者を対象としていた。8つの薬剤についての研究だったが、現在外来患者で広く使用されているのはオセルタミビル(タミフル:37件)とバロクサビル(ゾフルーザ:4件)である(日本で使用可能なのは内服のタミフル5日、ゾフルーザ1日、吸入薬のリレンザ5日、イナビル1日、注射のラピアクタ主に1回)。オセルタミビルは、低リスク患者および高リスク患者において、死亡率や入院率に有意な効果を示せなかった。同様に、バロクサビルも低リスク患者および高リスク患者において、死亡率や入院率に有意な効果を示せなかった。重症および非重症のインフルエンザ患者において、ベネフィットは乏しかった。メタアナリシスの著者らは、バロキサビルが高リスク患者における入院リスクを軽減する可能性があると述べているが、これは信頼区間が広く有意差を示せない(その傾向があるという程度の)データに基づくものだった(高リスク患者1000人あたり16件の入院減少、95%CI:20件減少 - 4件増加)。症状の持続期間の全体的な短縮は、バロキサビルで1.02日(95%CI:0.63-1.41日)、オセルタミビルで0.75日(95%CI:0.57-0.93日)だった。有害事象の面では、オセルタミビルは治療関連有害事象が有意に多かった(1000人あたり28件多い、95%CI:12-48件多い)。

Gao Y, Zhao Y, Liu M, Luo S, Chen Y, Chen X, Zheng Q, Xu J, Shen Y, Zhao W, Li Z, Huang S, Huang J, Tian J, Guyatt G, Hao Q. Antiviral Medications for Treatment of Nonsevere Influenza: A Systematic Review and Network Meta-Analysis. JAMA Intern Med. 2025 Mar 1;185(3):293-301. doi: 10.1001/jamainternmed.2024.7193. PMID: 39804622; PMCID: PMC11877164.

群馬県渋川市内で医療・介護事業を展開しています。

31/08/2025

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。
2025年9月の医療情報、二つ目です。
今回はカリウムイオン競合型酸阻害剤の潰瘍予防と治療効果について。
1.臨床的な疑問:ボノプラザン(タケキャブ)は胃潰瘍または十二指腸潰瘍の予防および治療においてプロトンポンプ阻害薬(PPI)よりも有効か?
→紹介文での答え:ボノプラザン(月額US$600)は胃潰瘍および十二指腸潰瘍の予防または治療においてはるかに安価なPPIよりも優れていない。
2.僕の意見:ちょっと前(コロナ禍前ですからすでに5年たっていますが)までUpToDateにタケキャブのデータはほとんど記載されていませんでしたが、最近の記載では重症の逆流性食道炎やピロリ菌の除菌にはPPIよりも勧められているようですね。それより驚いたのは、ピロリ除菌のファーストレジメンに昔から使用されていたPPI倍量+アモキシシリン1500mg+クラリスロマイシン800mgが載っていなくて(あくまで米国での話)、(PPIとセットはビスマスが基本のようですが、日本にはないので、またリファブチンは抗酸菌適応ですし)タケキャブ+アモキシシリンやタケキャブ+アモキシシリン+クラリスロマイシンが勧められているにびっくりです。今回は潰瘍の予防や治療に関して有意差が出なかった(95%CIが広くて有意差は出なかったけど、リスクは半分ぐらいまで減る可能性はある)というものですね。結構巷では潰瘍治療にも使われることも多いようですが、コストを考えるとジェネリックのあるPPIのほうに分がありそうです。
3.原文の紹介:Daily POEMSより
Simadibrata DM, Lesmana E, Pratama MI, et al. Vonoprazan vs. proton pump inhibitors for treatment and prevention of gastric and/or duodenal ulcers: A systematic review with meta analysis. Dig Dis Sci 2024;69(10):3863-3874.
まとめ
Study Design:無作為割り付け比較試験のメタアナリシス
ヴォノプラザン(タケキャブ)は、FDA承認された唯一のカリウムイオン競合型酸阻害剤であり、粘膜びらんのある逆流性食道炎の治療およびヘリコバクター・ピロリ除菌療法の一環として適用されている。本メタアナリシスの著者らは、MEDLINE、Cochrane、EMBASEを検索し、タケキャブとプロトンポンプ阻害薬(PPI)を比較した15件の無作為割り付け比較試験を同定した。最も一般的な対照薬はランソプラゾール(タケプロン)30mgだった。10件のスタディ(n = 1025例)は、疑わしい胃病変の除去のために内視鏡的粘膜切除術(ESD)を実施後に発生したESD誘発性潰瘍の治療を対象としていた。2件の研究は胃潰瘍と十二指腸潰瘍の治療(n = 1621)を対象とし、2件は潰瘍の再発予防(n = 1263)を対象としていた。ESD誘発性潰瘍の研究では、これが承認された適用ではなかったため、バイアスリスクは高と評価されたが、研究デザインの他の側面は低リスクだった。全体として、タケキャブは2週間から8週間のいかなる時点においても、PPIよりも潰瘍の治癒率や縮小率において優れていなかった。これは、ESDによる「作られた」潰瘍および「自然発生性」の胃潰瘍や十二指腸潰瘍の両方に当てはまった。24週間後の胃潰瘍の予防効果にも有為差は認められなかった(相対リスク[RR]、10㎎で 0.48、95%CI: 0.18-1.27、20㎎でRR 0.60、95%CI:0.28-1.30)。安全性アウトカム(遅発性出血や穿孔のリスクを含む)にも差は認められなかった。

Simadibrata DM, Lesmana E, Pratama MIA, Sugiharta AJ, Kalaij AGI, Fadhilla ADD, Danpanichkul P, Syam AF, Simadibrata M. Vonoprazan vs. Proton Pump Inhibitors for Treatment and Prevention of Gastric and/or Duodenal Ulcers: A Systematic Review with Meta-Analysis. Dig Dis Sci. 2024 Oct;69(10):3863-3874. doi: 10.1007/s10620-024-08593-5. Epub 2024 Sep 18. PMID: 39294424.

群馬県渋川市内で医療・介護事業を展開しています。

31/08/2025

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。
2025年9月の医療情報、一つ目です。
今回は治療が成功した下肢蜂窩織炎の治療経過ついて。
1.臨床的な疑問:下肢蜂窩織炎の治療が成功した後も症状はどのくらい持続するか?
→紹介文での答え:下肢蜂窩織炎の治療が成功しても、治療開始から10日後に炎症の徴候や症状が残ることが有り得る。これらの症状の残存は治療が無効であったことを示すものではない。
2.僕の意見:肺炎に関してはレントゲン像や検査結果ではなく自覚症状の改善(ですから、僕の診療所の外来では経口抗生剤で治療した肺炎に対してレントゲンや血液検査で効果を確認することはなく、自覚症状の改善が芳しくなければ迷わず病院へ紹介します)と同じように、下肢蜂窩織炎の治療成功に関しても自覚症状(主に痛みが一番鋭敏かもしれません)で判定することが多いと思います。そういう意味では、今回のスタディの「治療成功(バイオマーカーの正常化?)」というのは難しいと思います(医者が「抗生剤が効いて良かったですね」と言ってもまだ痛みや腫れがよくならない患者さんは満足しないのでは?)。
3.原文の紹介:Daily POEMSより
Williams OM, Hamilton F, Brindle R. The natural history of antibiotic-treated lower limb cellulitis: analysis of data extracted from a multicenter clinical trial. Open Forum Infect Dis 2023;10(10):ofad488.
まとめ
Study Design:記述的研究
このスタディの調査者らは無作為割り付け比較試験からのデータを解析した。この試験には明らかな膿瘍を伴わない下肢蜂窩織炎を有する成人247例(平均年齢52.2歳)が参加していた。参加した患者さんは治療を受けるまでに平均3.5日間兆候と症状がみられていた。すべての患者さんはフルクロキサシリン(ベータラクタマーゼ耐性型ペニシリンで日本では アンピシリンと類似構造のクロキサシリンの合剤であるビクシリンSがある)単独またはフルクロキサシリンとクリンダマイシン(ダラシン)の併用で治療を受けた。患者さんはベースライン時、治療5日後、10日後に疼痛と感染していない下肢との視覚的比較により評価を受けた。10日間の経過観察中に、全体として感染した下肢の平均周囲径は減少した。しかし、10日後でも3分の1以上の患者さん(全体の36.4%)において感染した下肢と感染していない下肢に比べて2cm以上周囲径が大きかった。同様に局所的な熱感や炎症の兆候は10日後にも認められた。半数以上の患者さん(全体の54.3%)に何らかの痛みの症状が残っており、13.9%が10日後もVASで5点以上の疼痛を訴えていた。感染症のバイオマーカー(例えば好中球数の上昇など)は治療期間にみられなくなった。残念なことに10日後までしか観察データが記録されておらず、その後の自然経過などは不明である。

Williams OM, Hamilton F, Brindle R. The Natural History of Antibiotic-Treated Lower Limb Cellulitis: Analysis of Data Extracted From a Multicenter Clinical Trial. Open Forum Infect Dis. 2023 Sep 29;10(10):ofad488. doi: 10.1093/ofid/ofad488. PMID: 37849504; PMCID: PMC10578506.

群馬県渋川市内で医療・介護事業を展開しています。

04/08/2025

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。
2025年8月の医療情報、特別編です。
今回は縫合後の傷をいつまで濡らさずにいるべきかについて。
1.臨床的な疑問:良性および悪性病変の皮膚手術(標準的な切除手術および即時再建を伴うモース手術を含む)の縫合創は6時間後に濡らしても問題ないか?
→紹介文での答え:このスタディによると、皮膚病変の皮膚手術6時間後の早期に水に濡らしても(入浴や手洗いなど10分以上水につける)、48時間被覆して濡らすことを避ける標準的な処置と比較して、感染や出血のリスクを増大させないことが示された。さらに、6ヶ月後の瘢痕の状態も両治療群で同様だった。
2.僕の意見:だいぶ前になりますが、
Heal C, Buettner P, Raasch B, Browning S, Graham D, Bidgood R, Campbell M, Cruikshank R. Can sutures get wet? Prospective randomised controlled trial of wound management in general practice. BMJ. 2006 May 6;332(7549):1053-6. doi: 10.1136/bmj.38800.628704.AE. Epub 2006 Apr 24. PMID: 16636023; PMCID: PMC1458594.
という論文があって、「12時間以内(論文にはこの群が実際どれくらい濡らさなかったか平均時間の記載はない)に縫合創を濡らしても標準的な48時間濡らさない場合と比べて創感染の割合は変わらない」という結論でしたが、今回は(もしかしたら)さらに短い時間でも大丈夫だろうというデータです。手袋も滅菌じゃなくて良いというデータ(これだと縫合する側のコストのメリットしかない)
Brewer JD, Gonzalez AB, Baum CL, Arpey CJ, Roenigk RK, Otley CC, Erwin PJ. Comparison of Sterile vs Nonsterile Gloves in Cutaneous Surgery and Common Outpatient Dental Procedures: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Dermatol. 2016 Sep 1;152(9):1008-14. doi: 10.1001/jamadermatol.2016.1965. PMID: 27487033.
もありましたが、こちらは患者さんにも有用なデータかもしれませんね。個人的にはしっかり縫合できていれば翌日から縫合創をむき出しのまま入浴OK(その方が傷が汗や垢で臭くならない)としていましたが、今後は当日の夜ならOkとしても良いかな?
3.原文の紹介:Daily POEMSより
Samaan C, Kim Y, Zhou S, Kirby JS, Cartee TV. Early postoperative water exposure does not increase complications in cutaneous surgeries: A randomized, investigator-blinded, controlled trial. J Am Acad Dermatol 2024;91(5):896-903.
まとめ
Study Design:無作為割り付け比較試験(隠蔽化あり、評価者のみ盲険化)
皮膚科手術を受けた患者は、従来手術後24~72時間は創を被覆して濡らさないよう指示されてきた。このスタディでは、18歳以上の成人で良性または悪性病変皮膚病変の外科的治療(標準的な切除手術または必要に応じて即時再建を伴うモース微小切除手術を含む)を受ける患者を同定した。対象参加者(N = 437)は、術後早期に濡らすよう指示(すなわち、6時間後にドレッシングをはずし、シャワー、浴槽、またはプールで少なくとも10分間傷口をつける)=早期群、または標準的な指示(ドレッシングを取らずに48時間濡らさない)=標準群、を行う2つの群に無作為に割り付けた。すべてのアウトカムを評価した調査者は、指示群の割り当てを盲検化されていた。100%の患者さんが14日後に完全なフォローアップを受けた。参加者の一部(n = 146)は6ヶ月後に再受診するよう指示された。
intention-to-treat(ITT)解析によると、術後感染率(創傷培養陽性)は早期群と標準群でほとんど同じだった(それぞれ1.8%vs1.4%)。同様に、内出血や血腫の発生率にも有意な群間差は認められなかった。6ヶ月後のフォローアップにおいて、標準的な評価ツールで測定された創瘢痕の状態は両群で同等だった。

Samaan C, Kim Y, Zhou S, Kirby JS, Cartee TV. Early postoperative water exposure does not increase complications in cutaneous surgeries: A randomized, investigator-blinded, controlled trial. J Am Acad Dermatol. 2024 Nov;91(5):896-903. doi: 10.1016/j.jaad.2024.05.098. Epub 2024 Jul 14. PMID: 39004350.

群馬県渋川市内で医療・介護事業を展開しています。

01/08/2025

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。
2025年8月の医療情報、二つ目です。
今回は降圧利尿剤の内服時間について。
1.臨床的な疑問:1日1回サイアザイド系利尿薬を使用している患者さんは就寝前投与でも継続できるか?
→紹介文での答え:サイアザイド系利尿薬の1日1回投与を朝から夜に切り替えた患者さんは、夜間頻尿が出現したにもかかわらず、6ヵ月後に77%が夜間投与の遵守を自己申告した。これは、サイアザイド系利尿薬を含まないレジメン群に比べ13%低いだけであった。元々夜間頻尿のある患者、あるいは夜間頻尿を以前経験して耐えられなかった患者は、この試験に進んで参加したとは考えにくいので、この試験は夜間利尿薬投与の忍容性を過大評価した可能性がある。
2.僕の意見:降圧剤として利尿薬をよく処方しますが、なかなか夜間に飲んでもらうことは勧めにくいですね。また、夜間に服用するメリットがあるなら良い(飲み忘れにくいとか)ですが、今のところあまりない(と言うエビデンスがある)ようですから、あえて夜間服用を勧める理由もないかもしれません(今回のスタディでも差が少ないと言っても、8人利尿剤を夜間服用するとそれ以外の薬剤を夜間服用するのに比べて1人飲めない人が増える、そのうち半分以上の人の理由が夜間の頻尿ですから)。
3.原文の紹介:Daily POEMSより
Garrison SR, Kelmer M, Korownyk T, et al. Tolerability of bedtime diuretics: a prospective cohort analysis. BMJ Open 2023;13(6):e068188.
まとめ
Study Design:前向きコホート
今回のスタディではカナダのプライマリ・ケアに通院してサイアザイド系利尿剤を含む降圧薬を1日1錠服用している成人患者さんに無作為割り付け比較試験(BedMed)への参加を呼び掛けた。彼らは服用を夜間に変更する群と朝服用を続ける群に無作為に割り付けられた。この報告では夜間内服に割り付けられた579例の前向きコホートについて、自己申告による服薬アドヒアランスを報告してもらい、内服薬にサイアザイド系利尿薬が含まれていた群と含まれていなかった群を比較した。試験開始6か月の時点で、サイアザイド系利尿薬を服用していた患者さんの77%が夜間服用の遵守を報告していたのに対し、利尿剤を含まない群では90%だった(遵守割合の差は13%;95%信頼区間:CI6~20、P

群馬県渋川市内で医療・介護事業を展開しています。

01/08/2025

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。
2025年8月の医療情報、一つ目です。
今回は大腸ポリープの既往のある高齢者でのその後の大腸癌の頻度について。
1.臨床的な疑問:高齢者の結腸ポリープ患者さんが結腸直腸癌に進行する割合はどの程度か?
→紹介文での答え:下部消化管内視鏡検査で結腸ポリープが確認された高齢者(65歳以上)の集団において、結腸癌を発症する患者さんは0.2%と少ない。ポリープを確認された高齢者、特に生命予後の短い患者さんに関しては、現在のポリープ既往のある患者さんに対する5年間隔のサーベイランスの推奨を再評価する時期に来ているのかもしれない。
過剰使用の警告:このPOEMの内容は以下のCanadian Association of General Surgeons(カナダ一般外科学会)の”Choosing Wisely Canada(医療者と患者の対話を通じて「賢明な選択」を行う”勧告と一致している:生命予後が10年未満で大腸の新生物の既往または家族歴のない症状のない患者さんでは大腸癌のスクリーニング検査は避けるべきである。
2.僕の意見:若年者やハイリスク者は別ということははっきりさせるべきのようですね。今回の結果とポリープの既往のない同じ背景の集団における有病率と比べないといけないですが、思ったほど多くないということなのでしょうね。
3.原文の紹介:Daily POEMSより
Calderwood AH, Tosteson TD, Wang Q, Onega T, Walter LC. Association of life expectancy with surveillance colonoscopy findings and follow-up recommendations in older adults. JAMA Intern Med 2023;183(5):426-434.
まとめ
Study Design:前向きコホート
このスタディの著者らは65歳以上の9831例を対象に実施された下部消化管内視鏡検査によるサーベイランスの結果を明らかにするために、米国のレジストリを用いて調査を行った。下部消化管内視鏡検査によるサーベイランスは結腸ポリープの既往のある患者さん対象に行われた。参加者の平均年齢は73.2歳で46.2%が女性、83.5%が白人だった。全体として8%に進行したポリープが見つかり、0.2%に結腸直腸癌が見つかった。

Calderwood AH, Tosteson TD, Wang Q, Onega T, Walter LC. Association of Life Expectancy With Surveillance Colonoscopy Findings and Follow-up Recommendations in Older Adults. JAMA Intern Med. 2023 May 1;183(5):426-434. doi: 10.1001/jamainternmed.2023.0078. PMID: 36912828; PMCID: PMC10012041.

群馬県渋川市内で医療・介護事業を展開しています。

01/07/2025

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。
2025年7月の医療情報、二つ目です。
今回はスクリーニング(検診)で発見された前立腺癌の治療選択について。
1.臨床的な疑問:スクリーニングで検出された前立腺癌に対する治療選択に関する有益性と有害性の差はどの程度か?
→紹介文での答え:前立腺癌に対する積極的サーベイランスは有益性と有害性のバランスがとれているかもしれない。無作為割り付けの15年後、積極的サーベイランスを受けた参加者では初期治療として手術や放射線療法を受けた参加者に比べ死亡リスクは差がなかった。参加者100人当たり40人が手術や放射線療法を回避できた反面、100人当たり3-4人多く転移性病変が発見された。
2.僕の意見:前立腺癌に関しては(もしかしたら治療による合併症が多いかもしれない)手術や放射線療法を行わない選択肢を選ぶのに参考となるデータですね。
3.原文の紹介:Daily POEMSより
Hamdy FC, Donovan JL, Lane JA, et al, for the ProtecT Study Group. Fifteen-year outcomes after monitoring, surgery, or radiotherapy for prostate cancer. N Engl J Med 2023;388(17):1547-1558.
まとめ
Study Design:非盲険無作為割り付け比較試験(隠蔽化あり)
Protectスタディは英国で行われた臨床試験で、5年前に初めて発表されスクリーニングで発見された前立腺癌の男性に対する手術、放射線療法そして積極的サーベイランスそれぞれの有益性と有害性に関する入手可能な最良のエビデンスを提供した。1999年から2009年の間にスクリーニングで発見された限局性(明らかな転移のない)前立腺癌の男性2664例のうち、前立腺全摘術、放射線療法あるいは積極的サーベイランスに無作為に割り付けられることに同意したのは実に1643例だった。積極的サーベイランスでは、患者さんあるいは担当医が不安を感じた場合、あるいは前立腺特異抗原値(PSA)の50%(」1.5倍)以上の上昇が見られた場合に、必要なさらなる精査が行われ、治療が検討された。このスタディでは登録から中央値15年後のアウトカムが報告されている。プライマリとセカンダリアウトカムは1000人年(1000人を1年間観察した場合の起こった人数)で報告されているが、この表現は臨床的に解釈する(当てはめる)ことが少し難しい、というのも私が実際に診ている患者さんはそんなに多くないからである。このため私は「100人の患者さんを10年間観察すると」あるいは「67人の患者さんを15年間観察すると」何例のアウトカムが発生すると理解するようにしています。プライマリアウトカムである前立腺癌による特異的な死亡率は1000人年当たり(つまり100人を10年間観察あるいは67人を15年間観察すると)1.5~2.2人(前立腺癌で死亡する)であり、群間(前立腺全摘vs放射線療法vs積極的サーベイランス)に有意差は認められなかった。全死因死亡率にも有意差はなかった。ただし積極的サーベイランスのデメリットとして以下のような結果が得られた。転移性疾患(前立腺癌の転移)がみられたのは、前立腺全摘術+放射線療法に比べ積極的サーベイランス群で2倍多く、1000人年当たり(つまり100人を10年間観察あるいは67人を15年間観察すると)約3.5人多く発見された。また積極的サーベイランス群ではアンドロゲン除去療法(精巣摘除術やLH-RHアゴニスト投与などのホルモン療法)を開始する割合が高く(1000人年当たり9.4例vs5.3例vs5.6例)、より臨床的な進行、例えば転移、T3あるいはT4への増大(腫瘍の増大)、アンドロゲン除去療法の変更、腫瘍増大による症状の発現などを経験する割合が高かった。その反面、15年後までの間に積極的サーベイランスでは約40%の患者さんが前立腺全摘や放射線療法を避けることができたとも解釈できる。

Hamdy FC, Donovan JL, Lane JA, Metcalfe C, Davis M, Turner EL, Martin RM, Young GJ, Walsh EI, Bryant RJ, Bollina P, Doble A, Doherty A, Gillatt D, Gnanapragasam V, Hughes O, Kockelbergh R, Kynaston H, Paul A, Paez E, Powell P, Rosario DJ, Rowe E, Mason M, Catto JWF, Peters TJ, Oxley J, Williams NJ, Staffurth J, Neal DE; ProtecT Study Group. Fifteen-Year Outcomes after Monitoring, Surgery, or Radiotherapy for Prostate Cancer. N Engl J Med. 2023 Apr 27;388(17):1547-1558. doi: 10.1056/NEJMoa2214122. Epub 2023 Mar 11. PMID: 36912538.

群馬県渋川市内で医療・介護事業を展開しています。

01/07/2025

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。
2025年7月の医療情報、一つ目です。
今回はアルツハイマー型認知症に対するアミロイドを標的としたモノクローナル抗体の効果について。
1.臨床的な疑問:軽度認知障害またはアルツハイマー型認知症を有する成人においてアミロイドを標的としたモノクローナル抗体は認知機能の改善に有効でありかつ安全か?
→紹介文での答え:このメタアナリシスによるとアミロイドを標的としたモノクローナル抗体は、(過去の研究と同様に)認知機能を測定するさまざまな尺度において、臨床的に無視できる程度の小さな効果しか示さないことが示された。これらの最小限の「改善」は、大きな身体的負担および経済的コストを伴う。
2.僕の意見:何度やってもダメなものはダメそうですね。この影響か、最近は発売された当初よりもあまり騒がれなくなりましたね。
3.原文の紹介:Daily POEMSより
Tonegawa-Kuji R, Hou Y, Hu B, et al. Efficacy and safety of passive immunotherapies targeting amyloid beta in Alzheimer's disease: A systematic review and meta-analysis. PLoS Med 2025;22(3):e1004568.
まとめ
Study Design:無作為割り付け比較試験のメタアナリシス
要約
このスタディの研究者は、PubMed、Embase、およびclinicaltrials.govを検索し、軽度認知障害またはアルツハイマー型認知症の成人を対象に、アミロイドに対するモノクローナル抗体の効果をプラセボと比較した質の高い(Jadadスコア>3)の臨床試験フェーズIIIの無作為割り付け比較試験で、200人以上の参加者を対象とした研究を同定した。研究者らは他の灰色文献(政府機関や研究機関が作成した資料や情報などの伝統的な商業出版又は学術出版の流通ルートに乗らない出版物や学術文献)の検索努力については記述していないが、は出版バイアスの可能性を視覚的(ファンネルプロット)と統計的に評価した。認知機能を測定する研究尺度の一つであるClinical Dementia Rating Scale Sum of Boxes(CDR-SBS)が用いられたスタディでは出版バイアスが存在する可能性を報告し、抗体投与を支持する小規模研究を見逃している可能性を指摘した。全体として、研究者らは認知機能のさまざまな尺度においてモノクローナル抗体がプラセボより優れていることを示したが、その効果サイズは小さく、データ間の異質は高かった。全原因死亡率に差はなかったものの、抗体による治療はプラセボより有害事象が多かった:アミロイド画像異常(ARIA)と浮腫(16.6%対1.4%;有害事象発生率 [NNTH] = 7)、出血を伴う ARIA(18.4%対 9.2%;NNTH = 10)、頭痛(12.8%対 9.9%;NNTH = 54)など。これらの結果は、1年以上前に発表された別の分析と類似しており、その分析には Essential Evidence Plus の2名の共著者が含まれていた。

Tonegawa-Kuji R, Hou Y, Hu B, Lorincz-Comi N, Pieper AA, Tousi B, Leverenz JB, Cheng F. Efficacy and safety of passive immunotherapies targeting amyloid beta in Alzheimer's disease: A systematic review and meta-analysis. PLoS Med. 2025 Mar 31;22(3):e1004568. doi: 10.1371/journal.pmed.1004568. PMID: 40163534; PMCID: PMC12002640.

群馬県渋川市内で医療・介護事業を展開しています。

01/06/2025

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。
2025年5月の医療情報、二つ目です。
今回は小児と青年における二次性高血圧の鑑別について。
1.臨床的な疑問:どのような病歴、身体所見、検査データの組み合わせが小児と青年の二次性高血圧から本態性高血圧を鑑別するのに役立つか?
→紹介文での答え:二次性高血圧の家族歴、未熟児であったこと、6歳以下、低体重(同年齢同性の標準体重より10%軽い)、微量アルブミン尿そして血清尿酸値が5.5㎎/dl以下は小児と青年の二次性高血圧の可能性を上げるのに(ルールイン)役立つ。肥満、本態性高血圧の家族歴及び二次性高血圧関連症状(例えば頭痛、目のかすみ、ふらつき、胸痛、浮腫など)がないことは二次性高血圧を除外するのに(ルールアウト)役立つ。
2.僕の意見:1998年に診療所勤務して地域の校医になった時から「小児生活習慣病予防健診」は行われていたため、すでに多くの地域で行われていると思っていましたが、調べてみると2019年の段階で25%の自治体でしか行われていないようです。たまに血圧が高くて精密検査に回ってくる子がいますが、再度計ってみると高い子はあまりいませんでした。このデータを知っていればもうちょっと二次性高血圧の選別(後方病院に精査のため紹介するべき子供)に役立ったかもしれません。
3.原文の紹介:Daily POEMSより
Nugent JT, Jiang K, Funaro MC, et al. Does this child with high blood pressure have secondary hypertension? The rational clinical examination systematic review. JAMA 2023;329(12):1012-1021.
まとめ
Study Design:メタアナリシス
新規に診断された高血圧の小児及び青年に対する適切な管理方法(主に過剰診断を避ける)は依然として不明である。このスタディの著者らは二次性高血圧の原因(腎臓性、腎血管性、心臓性、内分泌性、遺伝性あるいは薬剤暴露によるものと定義)の評価を受けた小児及び青年(21歳以下)の臨床特性について調べたスタディを、言語制限なしにMEDLINE、PubMed Central、Embase、Web of ScienceとしてCochrane Libraryを含む複数のデータベースを徹底的に検索した。スタディの質評価はサンプルサイズ、登録方法、前向きあるいは後ろ向きデザイン、参照基準との比較方法、独立した測定法といった基準による標準的な検証済みのスコアリングシステムを用いて行いレベル1-4(1がよく4が悪い)に判定した。二人の著者がそれぞれ独立してすべてのスタディの適格性と質の評価を行い、意見が異なる場合は合意形成で解決した。

30件のスタディが最初の組み入れ基準を満たし、その後レベル4のスタディ7件を除外し、最終的に23件のデータをプールして検討を行った(N=4210例の小児及び青年)。このうちレベル1のスタディは1件、レベル2は3件、残りの19件はレベル3だった。プライマリ・ケアあるいは学校ベースのスクリーニングを元に行われたスタディの結果(9.0%:95%CI4.5%-15%)では専門医療機関ベースで行われたもの(44%:36%-53%)より二次性高血圧の有病率が低かった。二次性高血圧と強く関連する病歴は二次性高血圧の家族歴(陽性尤度比=LR+4.7:95%CI2.9-7.6)、未熟児だったこと(LR+:2.3-2.8)及び6歳以下(LR+:2.2-2.6)だった。本態性高血圧の家族歴は二次性高血圧の可能性の低さと関連していた(陰性尤度比=LR-0.49:0.32-0.73)。二次性高血圧と強く関連する臨床検査所見は同年齢同性の標準体重より10%体重が低いこと(LR+4.5:1.2-18)、微量アルブミン尿(LR+13:3.1-53)、腎機能が正常の場合の血清尿酸値が5.5㎎/dl以下(LR+:2.2-6.3)だった。二次性高血圧の可能性が低くなることに関連する臨床所見は、肥満(LR-0.34:0.13-0.90)と二次性高血圧関連症状(例えば頭痛、目のかすみ、ふらつき、胸痛、浮腫など)のないこと(LR-:0.19-0.36)だった。二次性高血圧を疑わせる所見だが、関連性がみられなかった因子は、性別、人種、高血圧の程度、左室肥大だった。また、一般的に二次性高血圧に関連性があると考えられている身体所見(大腿動脈への脈の遅れ、上肢と下肢の血圧差、腹部雑音など)や検査所見(血性電解質異常、クレアチニン値、血中尿素窒素など)の影響に関しては最低限のエビデンスしかなかった。

Nugent JT, Jiang K, Funaro MC, Saran I, Young C, Ghazi L, Bakhoum CY, Wilson FP, Greenberg JH. Does This Child With High Blood Pressure Have Secondary Hypertension?: The Rational Clinical Examination Systematic Review. JAMA. 2023 Mar 28;329(12):1012-1021. doi: 10.1001/jama.2023.3184. PMID: 36976276.

群馬県渋川市内で医療・介護事業を展開しています。

01/06/2025

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。
2025年6月の医療情報、一つ目です。
今回は糖尿病治療薬別の臨床的効果について。
1.臨床的な疑問:2型糖尿病に対するどのような治療が患者中心の臨床転帰を改善させるか?
→紹介文での答え:このスタディは糖尿病治療薬による血糖に対する効果と臨床的に重要なアウトカムに対する効果をしっかり分けて検討している。SGLT-2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は全死因死亡率と心血管系死亡率を減少させ、さらにその他の心臓関連のトラブルも減少させる。これに対しインスリンを含む古典的な治療薬は長期的なアウトカムには影響を及ぼさない。私たちの従来の糖尿病治療法に大きな影響を与える(方針を大きく変更させるかもしれない)結果として、以前のスタディでは認められていたメトホルミンがその他の治療に比べ臨床的に重要なアウトカム予防に効果があるととは言えないということがあり、もしかしたら第一選択にはならなくなるかもしれない。
2.僕の意見:メトホルミンが今回のネットワークメタアナリシスで、(今までの常識と異なり)心血管リスクに対する影響が他の薬剤と大きな差がない(逆に新しくて高価な薬は総死亡まで減少させる)というのはショックでした。ただ経済的な影響(大企業からの圧力?)というのが答えを捻じ曲げていないとは言えない(制作にコストがかかった新薬ではよいデータが初期には目立つ)ので注意は必要ですよね。
3.原文の紹介
Shi Q, Nong K, Vandvik PO, et al. Benefits and harms of drug treatment for type 2 diabetes: systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ 2023;381:e074068.
まとめ
Study Design:ネットワークメタアナリシス
このスタディの著者らはコクランCENTRALを含む3つのデータベースを検索し、2種類以上の2型糖尿病に対する治療薬を比較した816件の英語で発表された無作為割り付け比較試験(N=471038例)を抽出した。彼らはPRISMA宣言に従って報告を行った。約4分の1のスタディはバイアスのリスクが高く、多く(62%)は盲険化されていないことが原因だった。著者らはすべての研究を用いて直接的及び間接的にすべての薬剤を相互に比較するために、ネットワークメタアナリシスを行った。すべてのスタディは短期間の観察期間で、中央値は6か月だった。ナトリウムグルコース共輸送体-2(SGLT-2)阻害薬とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬は一般的な治療に比べわずかではあるが全死亡を減少させた。またこれらの薬剤は心血管系疾患による死亡、非致死性心筋梗塞、心不全による入院を減少させていた。ただし通常の治療に比べ有害事象も多くみられた。フィネレノン(ケレンディア)は通常の治療と比べおそらく心不全と末期腎疾患による入院を減少させる。チルゼパチド(マンジャロ)は体重減少効果が最も大きい。
さらに重要なことは、今回の分析によってどの治療薬が患者中心のアウトカムに利益をもたらさないかが明らかになったことである。インスリンを含む古典的な治療薬は死亡や入院といったアウトカムには影響を与えず、チアゾリジン系薬剤は心不全による入院リスクを上昇させる。ほとんどのガイドラインで治療のかなめになっているメトホルミンでさえ標準的な治療に比べて有益性がない可能性がある。

Shi Q, Nong K, Vandvik PO, Guyatt GH, Schnell O, Rydén L, Marx N, Brosius FC 3rd, Mustafa RA, Agarwal A, Zou X, Mao Y, Asadollahifar A, Chowdhury SR, Zhai C, Gupta S, Gao Y, Lima JP, Numata K, Qiao Z, Fan Q, Yang Q, Jin Y, Ge L, Yang Q, Zhu H, Yang F, Chen Z, Lu X, He S, Chen X, Lyu X, An X, Chen Y, Hao Q, Standl E, Siemieniuk R, Agoritsas T, Tian H, Li S. Benefits and harms of drug treatment for type 2 diabetes: systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ. 2023 Apr 6;381:e074068. doi: 10.1136/bmj-2022-074068. PMID: 37024129; PMCID: PMC10077111.

30/04/2025

群馬県北毛保健生活協同組合 北毛診療所、医師の菅野です。
(やはり1日早いですが)5月の医療情報、二つ目です。
今回は尿路感染症における尿検査の検査精度について。
1.臨床的な疑問:入院患者の尿路感染症(UTI)の診断において尿検査はどの程度正確か?
→紹介文での答え:白血球エステラーゼ(LE)陰性および白血球数5個/high-powered field(HPF)以下、特に両方を満たすとき、入院中の成人におけるUTIを除外するのに役立つ(陰性適中率95%~97%)。65歳以上の女性では、陰性化率はやや低くなる。 膿尿またはLE陽性の患者のうち、最終的にUTIと診断されるのは約3分の1のみである。 亜硝酸塩反応が陽性、あるいは細菌が50個/HPF以上認められた場合、陽性適中率は高くなる(それぞれ43%、41%)。
2.僕の意見:対象患者さんが入院成人ということを考慮するべきですが、外来患者さんでももしかしたら使えるかもしれません。もちろん外来患者さんを対象とした、同様のスタディが出ればさらにありがたいですが。
3.原文の紹介:Daily POEMSより
Advani SD, North R, Turner NA, et al. Performance of urinalysis parameters in predicting urinary tract infection: Does one size fit all? Clin Infect Dis 2024;79(3): 600-603.
まとめ
Study Design:診断精度研究
このスタディの研究者は、顕微鏡検査を含む尿検査と尿培養を実施した成人入院患者3392人を無作為に抽出した。尿培養の基準を自動的に適用している病院は除外した。また、尿道留置カテーテルを使用している患者さんも除外した。訓練を受けた研究者がデータをレトロスペクティブに抽出し、定期的に会合を開いて不明点を解消した。また、記録の10%を使用して主任研究者が正確性を監査した。UTIの診断は、尿培養で少なくとも10万colony-forming units(CFU)あり、他に症状の原因となる明らかなものがないこと、および以下のうち少なくとも2つが該当するものとして定義された:悪寒、発熱、低血圧、吐き気、嘔吐、せん妄、または明らかな血尿。全体として、患者の21%がUTIと診断された。白血球エステラーゼ(LE)が陰性、1視野あたりの白血球数が5個未満(WBC/HPF)はどちらも陰性適中率(NPV)が95%であった。LE陰性かつ白血球10/HPF未満の場合、NPVは97%だった。NPVは男性(98%)の方が女性、特に65歳以上の女性(90%)よりも高かった。LE陰性+亜硝酸塩陰性の組み合わせでは、陰性適中率は97%だった。尿検査の各項目の陽性適中率(PPV)は概して低く、陽性亜硝酸塩(43%)と50個以上の細菌/HPF(41%)がその中でも高い方だった。

Advani SD, North R, Turner NA, Ahmadi S, Denniss J, Francis A, Johnson R, Hasan A, Mirza F, Pardue S, Rao M, Rosshandler Y, Tang H, Schmader KE, Anderson DJ. Performance of Urinalysis Parameters in Predicting Urinary Tract Infection: Does One Size Fit All? Clin Infect Dis. 2024 Sep 26;79(3):600-603. doi: 10.1093/cid/ciae230. PMID: 38666412; PMCID: PMC11426257.

群馬県渋川市内で医療・介護事業を展開しています。

住所

有馬237/1
Shibukawa-shi, Gunma
377-0005

電話番号

+81 279-24-1234

ウェブサイト

アラート

北毛保健生活協同組合がニュースとプロモを投稿した時に最初に知って当社にメールを送信する最初の人になりましょう。あなたのメールアドレスはその他の目的には使用されず、いつでもサブスクリプションを解除することができます。

共有する

Share on Facebook Share on Twitter Share on LinkedIn
Share on Pinterest Share on Reddit Share via Email
Share on WhatsApp Share on Instagram Share on Telegram

カテゴリー