24/05/2025
【注目の研究】
「コレステロール=悪者」という常識に再考の余地あり。
――免疫システムとコレステロールの意外な関係性とは?
長年、コレステロールは動脈硬化や心疾患の主因として「できる限り下げるべき」という認識が広まってきました。しかし、近年の免疫学研究では、コレステロールにも生理的に重要な役割があることが示唆されつつあります。
2024年に米・マウントサイナイ医科大学が発表した研究によると、
がん細胞を含む異常を監視し、免疫応答を開始する「樹状細胞(dendritic cell)」の成熟と機能に、コレステロールが不可欠であることが明らかになりました。
樹状細胞は、体内の「斥候(スカウト)」のような存在です。異常な細胞を感知すると、T細胞などの免疫担当細胞にその情報を伝え、免疫応答を開始します。この情報伝達能力を十分に発揮するには、細胞膜の流動性や抗原提示機能を維持するためのコレステロールが必要とされています。
研究では、コレステロールの動員が不十分だと、樹状細胞が未成熟な状態にとどまり、がん細胞への免疫応答が弱まる可能性があるとも報告されています。
---
●治療と予防の視点から
もちろん、高すぎるコレステロールは動脈硬化のリスク因子であることは事実です。しかし、「とにかく低ければ良い」という一方向の考え方では、免疫機能やがんへの抵抗力に悪影響を及ぼすリスクもあるのです。
特にスタチン等の薬剤でLDL値を大きく低下させている方は、効果と副作用のバランスをよく見極めることが重要です。
---
●皆様へのご提案
・必要以上にコレステロールを“悪者扱い”しないこと
・薬物治療中の方は、担当医と定期的に評価と相談を
・食事・運動・睡眠を通じた自然なコントロールを重視すること
---
健康は「バランス」がすべてです。
単に数値を下げることが目的ではなく、体が本来持つ力を引き出すことが、健やかな毎日につながります。
何か気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
---
【参考文献】
Belaid, M., Park, M. D., Merad, M., et al.
Cholesterol mobilization regulates dendritic cell maturation and the immunogenic response to cancer.
Nature Cancer (2024).