
26/07/2025
昭和狩り戦闘員
現代の40代以下の世代は「昭和的価値観を排除せよ」という思想のもと、学校教育を通じて“昭和狩り戦闘員”として育てられた世代である。学校教育により新自由主義と市場原理主義に最適化され、「効率」「成果」「自己責任」を至上の価値として内面化している。
この世代の行動原理は、なにを言っても「○○ハラ」。注意すればパワハラ、意見すればモラハラ、問いただせばメンタルをやられたと言い出す。結果として指導や対話は成立しにくく、現場の空気は硬直し、沈黙と誤解が蔓延する。
ただし、これがすべての職場で問題になるわけではない。むしろ、コミュニケーションを必要としないPC単純業務、すなわち“PC社畜労働”には極めて適応的である。黙って手を動かし、数字を出し、金を稼ぐという成果主義的職場では、むしろ扱いやすい労働力とされ彼らは有能な人材として褒め称えられている。
問題が顕在化するのは、人と人との関係性が重要になる医療現場だろう。たとえば、人材育成、対人サービス、チームでの協働など、言葉の裏にある意図を汲み取り、意見を交わし、立場の違いを越えて連携する力が求められる職種において、この世代は致命的な脆さを見せる。
共感力が育っていない。違和感を言語化する訓練を受けていない。他者の立場に立って物事を捉える想像力も不足している。自分が正しいと感じた瞬間、それ以外をすべて「否」と断じる。結果、建設的な議論は成り立たず、感情的反発と沈黙だけが残る。
社会で生きるための「厳しさ」や「不条理」を過剰に否定し続けた先に生まれたのがこの“昭和狩り戦闘員”たちである。彼らはかつての抑圧に対する免疫反応として生まれたが、今やそれが新たな対話不能社会の温床となっている。
本来教育とは、多様な価値観を受け止める柔軟性を育てるものであるべきだった。しかし、その機会が奪われた新自由主義・市場原理主義世代に、私たちはどう向き合うべきなのか。その問いが、いま患者である人間を扱う医療現場で突きつけられている。