30/08/2022
Diagnostic Aspirations コメント
On further questioning(しっかり病歴を聴取してみると、再び聞き返してみると)というフレーズがNEJMのCase RecordsやClinical Problem Solvingでは頻出します。また、臨床の現場では、後からの病歴聴取やコメディカル(場合によっては看護学生も)などからの情報が診断に結び付く場合が少なくありません。「病歴聴取と身体所見で、診断のかなりの部分が方向づけられる」とよく言われますが、まさに本例はその1例ではないでしょうか。
しかし、闇雲に話を永遠と聴くことは時間もかかり、さらに的外れになることも多く、様々なclue、key(とっかかり、鍵)から焦点を絞っていく「攻める問診」が重要ではないかと思っています。また、これは臨床経過の中でも、「意外なこと」や「新規の問題が出てきた時」には再度振り返ってみることが大事ではないでしょうか。
本文にも、
経過観察の結果、右中葉のコンソリデーションは消失していたが、MSSA感染に対する適切な抗生剤治療後もレントゲン所見が持続していることから、細菌感染以外の原因が懸念される。
と臨床経過に疑義を投げかけ、
低画素値のGGO、クレイジーペイビング、リンパ節腫脹等を認めることから、外因性リポイド肺炎、肺胞タンパク症、閉塞性肺炎(内因性リポイド肺炎)、器質化肺炎、異型感染、粘液性または脂質優勢腺癌(lipidic predominant adenocarcinoma)などの広範な鑑別診断がある。
と肺の画像診断での画素値にまでこだわり、ある程度の鑑別診断を用意したうえで、
On further questioningしておりました。
また、
市販鉱油製剤の添付説明書では、一般に就寝時使用を推奨しており、食道または嚥下機能障害を有する患者では、外因性リポイド肺炎のリスクが高くなる
などの事実、
頸椎疾患があり外科手術を施行してあると、食道嚥下障害や運動障害を合併する場合がある。嚥下評価は正常であったが、食道運動障害があり、特に就寝直前摂取のミネラルオイルを無意識に誤嚥する可能性があることが判明した。
などの、経過にもつながっていきました。後から考えるとconnect the dotsですが、これをある程度予見して実践していることは素晴らしいですね。
なお、リポイド肺炎は、あまり臨床経験はありませんが、内因性、外因性の区別、基礎疾患、外因性の曝露源になる物質、画像診断の特徴 治療(曝露源回避)等がよくまとまっており(きもに記載)、勉強になりました。
Diagnostic Aspirations Teaching Points きも
●様々なこと
下気道感染症の再発・持続は,
① 耐性菌,②免疫機能障害,③粘膜繊毛運動障害,④解剖学的異常、⑤癌などの宿主要因
非特異的呼吸困難と咳嗽+肺門リンパ節腫脹+GGOの鑑別診断
癌、肺出血、じん肺、心疾患、リウマチ性疾患、アミロイドーシス、肉芽腫性疾患
喫煙歴:閉塞性肺疾患が潜んでいる可能性 電子タバコ使用は肺損傷と関連
呼気性喘鳴+rhonchi:慢性閉塞性肺疾患の増悪、分泌物、病変、炎症等による急性気道閉塞
手掌紅斑:肝疾患の他、甲状腺機能亢進症、リウマチ性疾患(肺疾患合併RA、皮膚筋炎)
慢性肺疾患と関連するリウマチ性疾患:GPA,シェーグレン症候群,強皮症等
Crazy paving:小葉間隔肥厚を伴うGGOを示唆、
感染、腫瘍性疾患、炎症、油性物質の吸引または吸入等に関連しうる非特異的所見
低画素値(-150から-30HU)は、脂肪の存在1,2。
低画素値+GGO+クレイジーペイビング、リンパ節腫脹等
外因性リポイド肺炎、肺胞タンパク症、閉塞性肺炎(内因性リポイド肺炎)、器質化肺炎、
異型感染、粘液性または脂質優勢腺癌
●リポイド肺炎:肺胞に①内因性または②外因性の脂質が蓄積することを特徴とする疾患
内因性リポイド肺炎(①):気道閉塞、マクロファージ機能障害、サーファクタント代謝障害等
外因性リポイド肺炎(②)は、胃の内容物または外因性物質の誤嚥
① GERD、②解剖学的異常、③神経疾患による誤嚥の素因を有する年齢層等で見られる
石油ゼリー、鉱物油、植物油、リップクリーム、パラフィン(スプレー塗料や機械潤滑油)3、4。
肺胞マクロファージが脂質を貪食→慢性的異物反応→マクロファージが死滅で脂質が放出
→肉芽腫性反応、慢性炎症、そして最終的には線維化を誘発
細菌および非結核菌に対して易感染性
下葉にGGOまたはコンソリデーション 低画素値(-150~-30)は、外因性リポイド肺炎を示唆
リポイド曝露中止後も持続することが多い2,9,10
オイルレッドO染色により、外因性脂質識別が可能、非特異的所見
治療:曝露物回避(25~46%で臨床症状が軽減、33~43%のレントゲン所見が改善2,7)
外因性リポイド肺炎の診断は難しい。
診断飲み込み違い(診断の見込み違い?)
よく聴いてみると(Case Recordでよくあるパターン)。それを聴けるか?
経験すべき29症候 呼吸困難 経験すべき26疾病・病態 肺炎
●63歳女性が呼吸困難と咳嗽で来院した。今まで健康状態に問題はなかったが、2日前に筋肉痛と歩行時の息切れが出現し、また,緑色調の喀痰を認めた.発熱,悪寒,咽頭痛,鼻漏,動悸,関節痛,ふらつき等はなく,シックコンタクトもなかった. 入院7カ月前に右下葉の肺炎と診断され(図1A),筋肉痛や呼吸器症状もあったが,アモキシシリン・クラブラン酸塩の7日間投与で症状は改善した.入院の3カ月前に、その4カ月前(入院7か月前)の肺炎診断時と同様の症状で、地元の緊急医療クリニックを受診した。初診時の胸部X線写真では、右中葉と上葉に浸潤が認められた。グルココルチコイド(GC)とアジスロマイシン(AXM)の投与を受けたが,症状は持続した.その後入院し,胸部CTで、主に右肺に「crazy paving」様のGGOと,コンソリデーション(consolidative opacities),縦隔リンパ節および肺門リンパ節腫脹等を認めた.SARS-CoV-2 RNAのPCR検査は陰性であった.浸潤と症状が持続するため,気管支鏡による気管支肺胞洗浄(BAL)と気管支超音波ガイド下縦隔リンパ節および肺門リンパ節の細針吸引が施行された.BAL液は膿性で,培養でメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)が陽性であった.リンパ節吸引液の細胞学的検査では,癌の所見は認められなかった。14日間の抗菌薬投与により呼吸困難,咳嗽,筋肉痛等は完全に消失したが、入院2日前に再発した.
○本症例は,下気道感染症が疑われる.このような再発・持続のパターンは,①耐性菌や,②免疫機能障害,③粘膜繊毛運動障害,④解剖学的異常、⑤癌などの宿主要因によって見られる場合がある.本症例はMSSA感染の既往があるが、他の非定型感染や日和見感染、炎症性の原因等も考慮しなければならない。非特異的な呼吸困難と咳嗽+肺門リンパ節腫脹とGGO等のレントゲン異常は、いくつかの癌、肺出血症候群、じん肺、心疾患、リウマチ性疾患など、さまざまな疾患で発生する可能性がある。アミロイドーシスや肉芽腫性疾患などの浸潤性疾患も、同様の特徴を示すことがある。喫煙歴があれば、閉塞性肺炎につながる癌の懸念が高まる。動物および職業上の暴露(例:鳥、アスベスト、またはシリカ)は、過敏性肺炎またはじん肺等が示唆される可能性がある。
●患者の病歴は、不安症、高脂血症、片頭痛、甲状腺機能低下症、C6-C7椎体切除術(現在でも頸椎椎間板症関連の慢性疼痛がある)等であった。咳嗽、胸部うっ血(chest congestion)、喀痰を特徴とする気管支炎と思われる病歴が約8年あり、GCとAZM投与で、通常軽快するとのことであった。投薬は,アミトリプチリン,クロナゼパム,エボロクマブ,ラモトリギン,レボチロキシン,痛み止めとして屯用のオキシコドン-アセトアミノフェン等であった。サルファ剤に対してアレルギーがあり、フルオロキノロンとスタチンには副作用があった。 18歳から1日に約半箱の喫煙歴があったが、今回入院の3か月前に禁煙した。入院の1年以上前に数回ニコチンの電子タバコ(vape)を試みことがある。大麻使用,飲酒,違法薬物注射等はなかった.動物とのコンタクト(exposure)はなかった。最近の旅行歴にフロリダがあった。姉は関節リウマチを、母親は卵巣癌を患っていた。彼女は高齢者介護の仕事をしていたが、現在は引退していた。
○本患者の喫煙歴は20箱年以上であり、気管支炎と推定されるエピソードを毎年繰り返していることから、閉塞性肺疾患が潜んでいる可能性がある。電子タバコ使用は肺損傷と関連しているが、一時的な使用であり、症状の発症は最後使用後の時間が経ってからであった。姉が関節リウマチを患っているが、本人は肺合併症を思わす結合組織疾患を示唆する病歴はなかった。また,過敏性肺炎やじん肺に関連する明らかな曝露もない.
●身体診察では、体温36.8℃、心拍数96/分、血圧142/63mmHg、呼吸数18/分、酸素飽和度93%(鼻カニューレから2L/分酸素)等で、他のバイタルサインは正常であった。下の歯(lower teeth)はなく,口腔内の病変や潰瘍は認められなかった.頸静脈膨張はない.心音は規則的で、摩擦音、雑音、ギャロップ等はなかった。吸気音は正常でスムースな会話可能であるが,聴診ではびまん性rhonchiと呼気性喘鳴を認めた.腹部は軟で,圧痛,彎曲,肝脾腫等もなかった.手掌紅斑と鼻,頬,顎,頸部等に頸顔面紅斑を認めた.その他、発疹,滑膜炎,浸出液,関節圧痛等も認めなかった.四肢は温かく,循環良好で,末梢浮腫も認めなかった.
○呼気性喘鳴+rhonchiは、基礎疾患である慢性閉塞性肺疾患の増悪、または分泌物、病変、炎症など急性気道閉塞に関連する他の病態等から生じる可能性がある。手掌紅斑は、肝疾患と関連することが多いが、甲状腺機能亢進症や、リウマチ性関節炎、皮膚筋炎など、肺合併症を呈する可能性のあるリウマチ性疾患にも生じうる非特異的な所見である。鼻と頬の紅斑は、肺胞出血、肺炎、間質性肺疾患を合併する可能性のある疾患である全身性エリテマトーデスなどでよく見られる頬の発疹(malar rash)と合致する場合がある。多発性血管炎性肉芽腫症,シェーグレン症候群,強皮症等の慢性肺疾患と関連する他のリウマチ性疾患も,炎症マーカーと自己抗体検査等で適切に評価する必要がある.
●白血球数は8960/mm3(正常範囲は4000〜10000)で、分画も正常であった。Hbは13.5 g/dl(正常範囲:11.5〜16.4)、血小板数は412,000/ mm3(正常範囲:150,000〜450,000)であった。Cr、電解質,重炭酸塩,BUN,NTproBNP,高感度トロポニンT,プロカルシトニン,CK,アルドラーゼ,肝機能等は正常であり、LDHは244 U/Lであった(正常範囲135〜225).SARS-CoV-2 RNAのPCR検査,尿中レジオネラ菌と肺炎球菌抗原,ヒト免疫不全ウイルス検査を含む呼吸器系ウイルスパネル等は陰性であった.TSHは0.40μIU/ml(正常範囲0.50〜5.70),T3は7.2μg/dl(93nmol/l;正常範囲4.6〜10.7μg/dl[59〜138nmol/l])であった。血沈は16 mm/時(正常範囲:0〜30),高感度CRPは3.4 mg/l(正常範囲:0〜3.0)、C3は203mg/dl(正常範囲90〜180)、C4は20mg/dl(正常範囲10〜40)であった。RFは22IU/ml(正常値13未満)と陽性で,抗CCP(環状シトルリン化ペプチド)抗体は陰性であった.抗リン脂質抗体,抗核抗体,抗好中球細胞質抗体,抗Smith,抗Jo-1,抗Ro,抗La,抗ds DNA,抗RNP,抗Scl-70,抗セントロメア抗体等はすべて陰性であった.
○本患者の検査では、白血球数とプロカルシトニン値が正常であり、細菌性肺炎の懸念は幾分(somewhat)低い。甲状腺機能異常は、おそらく過剰な甲状腺ホルモン補充療法の結果であろう。リウマトイド因子の軽度上昇は、関節痛や滑膜炎がなく、臨床的意義は不明である。他の検査結果からは自己免疫疾患は示唆されない.
●心電図では洞性頻脈以外には異常はなかった。胸部CT肺血管造影では,多病巣性GGOが認められ,いくつかの領域はcrazy-paving様所見を呈し,また,主に気管支血管周囲の低画素領域(-84 Hounsfield units(HU))のコンソリデーション(consolidative opacities)が認められた.両側肺の縦隔および肺門リンパ節腫脹と上葉優位の軽度肺気腫も認められた。肺塞栓は確認されなかった。前回入院時の胸部CT画像で認められた右側のコンソリデーションは軽快していたが,crazy-paving外観を呈するGGOとリンパ節腫脹等の所見に大きな変化はなかった.
○経過観察の結果、右中葉のコンソリデーションは消失していたが、MSSA感染に対する適切な抗生剤治療後もレントゲン所見が持続していることから、細菌感染以外の原因が懸念される。Crazy pavingは、小葉間隔肥厚を伴うGGOを示唆し、感染、腫瘍性疾患、炎症、油性物質の吸引または吸入等に関連しうる非特異的所見である。画像診断では、低画素値(すなわち、-150から-30HU)は、脂肪の存在と合致する1,2。低画素値のGGO、クレイジーペイビング、リンパ節腫脹等を認めることから、外因性リポイド肺炎、肺胞タンパク症、閉塞性肺炎(内因性リポイド肺炎)、器質化肺炎、異型感染、粘液性または脂質優勢腺癌(lipidic predominant adenocarcinoma)などの広範な鑑別診断がある。
●入院3日目に軟性気管支鏡検査(図2)で両肺に多量の乳白色分泌物を認めた。右気管支粘膜の一部は敷石状外観(cobblestone appearance)を呈していた。右中葉と下葉からBAL検体を採取した.呼吸器検体の微生物学的検査(好気性,嫌気性培養,真菌培養,抗酸菌塗抹標本など)は陰性であった.BAL液は主に好中球優位であった.細胞診ではマクロファージが認められ,細胞質内に巨大空胞がみられた.縦隔リンパ節および肺門リンパ節の細針吸引では癌の所見を認めなかった。右中葉の気管支内生検標本と右中葉と下葉の経気管支生検標本も採取された。これらの標本の組織学的検査(図3)では,気腔内に多核巨細胞に混在した巨大空胞を有するマクロファージによる,肺胞隔壁や間質中での局所的器質化が確認された.この所見は、脂質に富んだ物質の慢性的な吸引によって惹起される外因性リポイド肺炎と診断された。
○組織学的検査での外因性リポイド肺炎所見は、彼女が脂質の豊富な物質曝露についての曝露疑義を投げかけている重要な所見である。外因性リポイド肺炎管理の主な柱は、曝露忌避であるため、脂質の吸引または吸入原因特定目的に、徹底した病歴聴取が重要である。
●詳細な問診では、患者は「過去10年間、下剤としてミネラルオイルを摂取していた」ことを明かした(週に2〜3回、就寝直前に大さじ3杯のミネラルオイルを摂取していた)。彼女はまた、ペトロラタムとパラフィンを含むリップクリームを1日に3回使用していた。タラ肝油や同様のサプリメント等は使用していなかった。ベッドサイドでの嚥下検査では誤嚥は認められなかったが,その後のバリウム嚥下検査で食道運動障害が認められた.
○外因性リポイド肺炎は誤嚥性症候群であるため、嚥下困難(嚥下機能)を評価した。本患者のように頸椎疾患があり外科手術を施行してあると、食道嚥下障害や運動障害を合併する場合がある。嚥下評価は正常であったが、食道運動障害があり、特に就寝直前摂取のミネラルオイルを無意識に誤嚥する可能性があることが判明した。外因性リポイド肺炎は、鉱物油、パラフィン、ワセリンなど、脂質の豊富な物質が含まれる物質で報告されているが、本患者はそれらいずれの物質も継続的に使用していた。
●本患者の入院中,GCと抗菌薬治療は延期された.入院4日目に酸素吸入を中止し,症状は自然軽快した.①就寝前の食事回避、②ベッド上の頭部挙上での就寝など、誤嚥に関する注意事項が説明され、7日目に退院した。退院1ヵ月後の胸部CTでは,多病巣性GGO所見に著変はなかったが,呼吸困難は大幅に軽快し,呼吸困難なく2マイルの歩行が可能であった.聴診ではrhonchiが残っていたが、呼気性喘鳴はなくなり、酸素飽和度は室内気で約96%を維持していた。
解説
●本症例は、再発性呼吸困難と咳嗽を呈し、crazy-paving appearanceを呈するground-glass opacity所見を呈した女性である。鑑別診断は感染性,炎症性,腫瘍性など多岐にわたった.最終的に,BAL液の細胞学的検査と経気管支生検標本の組織学的検査で,鉱物油摂取歴を支持する外因性リポイド肺炎と診断された.
●リポイド肺炎は、肺胞に①内因性または②外因性の脂質が蓄積することを特徴とする疾患である。内因性リポイド肺炎(①)は、主に気腔内の内因性脂質の蓄積を反映している。これは特定の疾患ではなく、例えば、気道閉塞、マクロファージ機能障害、サーファクタント代謝障害等に関連して発生する、サーファクタントのクリアランス障害疾患の一要素である3。外因性リポイド肺炎(②)は、胃の内容物または外因性物質の誤嚥により肺損傷が惹起される一連の疾患のひとつである。外因性リポイド肺炎に関連する暴露物には、石油ゼリー、鉱物油、植物油、リップクリームの過剰使用、スプレー塗料や機械潤滑油などのパラフィンまたはその他の油性物質への職業的暴露等がある3、4。鉱物油摂取により、その生物物理的特性により胃液の上層に蓄積する特徴があるため、胃食道逆流症(GERD)患者では、鉱物油吸引リスクが高まると考慮される1。 鉱物油下剤を含む多くの油含有物質は、危険性に関する情報未開示のまま一般に販売されている。さらに、市販鉱油製剤の添付説明書では、一般に就寝時使用を推奨しており、食道または嚥下機能障害を有する患者では、外因性リポイド肺炎のリスクが高くなる可能性がある。これらの物質は、吸引または吸入されると、肺胞マクロファージが脂質を貪食し、代謝不可能な慢性的異物反応を惹起する。マクロファージが死滅すると、脂質が放出され、このサイクルが繰り返される。この生理的パターンにより、肉芽腫性反応、慢性炎症、そして最終的には線維化を誘発する可能性がある。
●外因性リポイド肺炎では、無症状のこともあれば、発熱、呼吸困難、咳嗽、体重減少などの非特異的な症状を示す場合もある2。肺機能検査では、閉塞性または拘束性障害を示すことがある。非特異的な症状のため、診断が困難なことが多く、診断遅延もある。外因性リポイド肺炎は、①GERD、②解剖学的異常、③神経疾患による誤嚥の素因を有する年齢層等で観察される2,8,7。 加えて、外因性リポイド肺炎では、細菌および非結核菌に対して易感染性であると考えられる1,6。誤嚥された脂肪源同定には注意深い病歴聴取が必要である。
●画像検査では、外因性リポイド肺炎は、下葉にGGOまたはコンソリデーションを呈することが多い。本患者にみられたような、コンソリデーション内での低画素値(-150から-30HU)領域の存在は、外因性リポイド肺炎を示唆するが、(確定)診断的ではなく、常に存在するわけでもない。また、癌に類似した結節やリンパ節腫脹を呈する場合もある。肺葉隔壁間の肥厚パターン(crazy paving)とGGOも外因性リポイド肺炎でも報告されているが、特徴的所見はない3,8,9。外因性リポイド肺炎のレントゲン的特徴として、リポイド曝露中止後も持続することが多い2,9,10。
●感染症や癌の除外目的に、BAL が実施されることが多い2 。細胞学的検査では、好中球、リンパ球、好酸球、炎症性細胞の混合物等が観察される場合がある。オイルレッドO染色により、外因性リポイド肺炎患者のBAL検体において外因性脂質識別が可能になるが、本染色は、他の多数の肺疾患に関連した内因性脂質の識別も可能であることを考慮すると、非特異的所見である。組織学的検査では、脂質を含んだマクロファージは、組織球、巨細胞、その他の細胞性炎症、線維化などの慢性炎症所見を伴っている場合があり、その組み合わせはさまざまである5,9。外因性リポイド肺炎の診断には経気管支生検による小さなサンプルで十分で(診断)可能である。本症例では,初回BAL時にMSSA感染による好中球の反応が重複し,外因性リポイド肺炎の特徴に対する検出感度が低下していたと思われる.しかし,2回目のBALは外来性リポイド肺炎を強く示唆し,経気管支生検により診断確度が高かった(diagnostic)ため,より侵襲的処置の回避が可能となった.
●外因性リポイド肺炎の治療は、曝露物回避(termination)である。本患者は,鉱油とリップクリームの使用を中止後,多くのレントゲン異常が残存していたものの,臨床的には顕著な改善を示した.外因性リポイド肺炎と診断され、曝露を避けたケースシリーズでは、25~46%の患者で臨床症状が軽減し、33~43%の患者でレントゲン所見が改善した2,7。逸話的報告では、全身性GC治療後に外因性リポイド肺炎の重症例で臨床的改善が見られたとされているが、治療におけるGCの役割(役割があるとした場合)はまだ明らかにされていない11。脂肪物質除去目的の全肺洗浄(whole-lung lavage)で軽快した症例報告もある12,13。外因性リポイド肺炎が限局している場合や、再発性感染症合併の場合、肺の最大障害部分切除目的に、外科的切除が行われることがまれにある1,2。本患者初回入院時の抗菌薬(初回)反応性は、当時の重複肺炎(の経過)に合致している。
●本症例は再発性呼吸困難と咳嗽を呈し,X線学的,組織学的に下剤目的の鉱物油の長期連用による外因性リポイド肺炎と合致する所見を得た.本症例は、他の感染症、腫瘍、炎症性疾患に類似した非特異的な症状を示すことから、外因性リポイド肺炎の診断の難しさを浮き彫りにしている。
診断:外因性リポイド肺炎