13/02/2026
<心理療法の概要>
「今日はどんなお話ですか」というのが私の初診の方に対して第一声です。相手の顔色をみて「今日はどうされました。」に変えることもあります。この聞き方はオープンエンドクエスチョンといって精神科だけでなく医療の面接の基礎とされている聞き方です。対になるものとしてクローズドエンドクエスチョンがあります。これは「頭痛はありますか?」「熱はありますか?」というようにイエスかノーで答えられる質問です。話をオープンエンドクエスチョンに戻しますと、このやり方ですと患者さんが何を求めているのか(主訴)が捉えやすくなります。身体科であれば主訴を元にクローズドエンドクエスチョンで問題を絞り込み、アセスメントにつなげることになります。精神科ではオープンエンドクエスチョンはさらに重要になります。というのもイエスかノーで答えられない、「問題」とその問題についての「考え方」「捉え方」を知る必要があるからです。こころを対象にするとき「出来事」と「どう考えるか」「どう捉えるか」はセットで重要です。なぜなら出来事は誰に対しても共通ですがそれをどう捉えるかにその人、個人が浮き上がります。この「個人」というのがいわゆる「こころ」であって精神科医療や心理療法の対象となります。
昔、不眠を主訴に通われていた方が卒業するとき、診療を振り返って「先生のところへ来て、寝れる寝れないはあまり変わらなかったけど、眠れなくてもいいやと思えるようになりました。」とおっしゃっていました。この方の主訴は不眠でしたが、幸い精神病性の二次性の不眠ではありませんでした。心因性であったので捉え方の変化を目標したケースです。もちろん心因性であっても睡眠薬で満足するケースであればそれでもいいと思います。
むかし心理療法の講義で「心理療法は精神(ここではこころの意味)の自由を保証することだ」というようなフレーズを聞いたことがあります。ここでは何を話しても自由なんだと言うことを体験的に理解し、実践してもらう、これが心理療法の根幹になります。私は初診からこの精神の自由を保証する態度でやっておりますが、クライアントが意識的に心理療法のルールに馴染んでくるには時間がかかります。なぜなら何を話しても自由という場所はどこを探してもめったに見つからないはずだからです。むしろ心理療法に馴染んだ方でないなら全くの初めての経験だと思います。心理療法のおこなわれる場というのは以前お話した遊びの空間と非常に近しいので、遊びの経験を延長して想像してもらうのが馴染んでもらう早道かと思います。このあたりをクライアントさんがさっと了解されるのと戸惑い続けるのとで変わってきます。心理療法の導入の難しいところです。ここまでで心理療法はどういうものかまとめますと<精神の自由が保証された場で、心の自由な活動を体験、実践すること。その結果として捉え方や行動のの変化を期待するもの>とまとめることにいたしましょう。ここで治療者の役割に焦点を当てますと主な役割は精神の自由を保証することになります。心の自由な活動というのは場合によっては破壊的になることがあります。外的には反社会的な行動につながることもありますし、内的には精神病状態にエスカレートすることも考えられます。そこまでいかなくともちょうどお鍋が吹きこぼれるように、治療者やクライアントの日常生活に影響力をしめすことは十分考えられます。治療者はちょうどお鍋の番をするように、吹きこぼれないようにとかまたは調理が止まっていないかとか見る役目を担います。これが枠を作るとか枠の維持といわれる治療者側の役割です。基本的な、かつ重要な枠としては「定期的に」「決まった時間」で会うということです。心理療法の視点では予定外受診というのは歓迎できません。もちろん理由によりますが枠を揺さぶる予定外受診に対しては、「定期的に」の重要性を伝えていくか、当初予定していた心理療法を一旦諦めて、別の枠組みを再設定する必要があリます。心理療法を説明するにあたりあれもこれも言いたくなりシンプルには言い含められませんが、①枠組み(あるルール)を作って、その中では②精神の自由を保証し、③心の自由な活動を通して④クライアントの捉え方や行動の変化を期待する方法というふうに理解しておいてもらえると精神科受診の前知識としては十分と思われます。今回は以上です。