15/06/2025
【腰痛は職業病?長時間座位・立位と腰痛の相関を検証する】
働き方が腰を壊す?
デスクワークで座りっぱなしのあなた。
レジ打ちや現場作業で立ちっぱなしのあなた。
「長時間同じ姿勢でいると、腰がじわじわと痛くなる」という経験はないでしょうか?
腰痛は日本人の有訴者率(症状別で訴える割合)第1位にランクインし、労働損失の最大要因とも言われています。
果たして、長時間の座位・立位は本当に腰痛の原因となるのでしょうか?
最新の研究とエビデンスから、その相関を見ていきます。
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座る vs 立つ——どちらが腰に悪い?
まず大前提として「座位も立位も“長時間連続”で続けること自体が腰の負担」であることが、数多くの研究で明らかになっています。
▼長時間座位の腰への影響
• 座位中の椎間板内圧は立位よりも高い(Nachemson, 1976)
→ 特に猫背や骨盤後傾姿勢は、L4–L5間に過剰な圧力がかかる。
• 「1日6時間以上座る人」は「腰痛リスクが1.5倍」という疫学研究も(Lis et al., 2007)。
▼長時間立位の腰への影響
• 立ち仕事が多い職業(教師・美容師・販売員)は、筋疲労と静的負荷により腰部筋が緊張。
• 研究では連続60分以上の静的立位で、腰背部の筋活動が減少→疼痛が出現(Gallagher & Marras, 2002)。
つまり、どちらも一方的に続けると腰に良くないと言うことです。
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職業別・腰痛リスクの比較
厚生労働省が実施している「労働安全衛生調査」や、欧州のEU-OSHA(欧州労働安全衛生機関)のデータからも、次のような傾向が見られます。
【腰痛リスクが高い職業群】
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これらの職業に共通するのは「同じ姿勢の継続」「適度な動きがない」という点です。
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ではどうすればいい?──腰痛予防のワークスタイル
腰痛の職業的要因を軽減するには、「動的姿勢」と「負担分散」がカギです。
◆推奨される対策
1. 30分に1回、立ち上がる/座るを切り替える
Sit-Standデスク導入の効果:腰痛訴えが40%減少(Ognibene et al., 2016)
2. ストレッチや体操を業務中に取り入れる
マイクロブレイクの導入が腰痛の頻度を有意に低下(van den Heuvel et al., 2003)
3. 正しい姿勢とエルゴノミクスの知識共有
背もたれ角度、足の接地、モニターの高さ調整などが重要
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結論:腰痛は“働き方”で防げる
腰痛は「年齢のせい」「運動不足」だけで起きるものではありません。
日々の働き方と姿勢のクセこそが、腰痛を招いている可能性が高いのです。
働き方改革が叫ばれる今こそ、“腰の健康”を意識した労働環境の見直しが必要です。
たとえ数分の立ち上がり・体操であっても、それが腰痛予防の第一歩になるかもしれません。
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【参考文献】
• Nachemson A. The lumbar spine: an orthopaedic challenge. Spine. 1976.
• Gallagher KM, Marras WS. Tolerance of the lumbar spine to static loading. Human Factors. 2002.
• Ognibene GT et al. Sit-Stand Workstations. Journal of Occupational and Environmental Medicine. 2016.
• van den Heuvel et al. Effect of micro-breaks on musculoskeletal discomfort. Ergonomics. 2003.
• 日本整形外科学会「腰痛診療ガイドライン2019」
以下に、記事で紹介した各テーマに対応する主要論文の詳細な参考文献リストをご用意しました:
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1. Nachemson, A. (1976): 腰椎椎間板内圧の座位 vs 立位
• Nachemson A. The lumbar spine: an orthopaedic challenge. Spine. 1976.
生体内計測により坐位では立位に比べて椎間板内圧が約40%増加することを示した古典的研究です 。
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2. Ognibene ら (2016): シットスタンドデスクが慢性腰痛に与える影響
• Ognibene GT, Torres W, von Eyben R, Horst KC. Impact of a Sit‑Stand Workstation on Chronic Low Back Pain: Results of a Randomized Trial. J Occup Environ Med. 2016 Mar;58(3):287–293. DOI: 10.1097/JOM.0000000000000615
大学職員46名を対象としたランダム化比較試験で、シットスタンドワークステーション導入により慢性腰痛が有意に減少したことを報告しています 。
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3. バン・デン・ヘウフェルら (2003): マイクロブレイクの効果
• van den Heuvel SG, de Looze MP, Hildebrandt VH, Thé KH. Effects of software programs stimulating regular breaks and exercises on work-related neck and upper-limb disorders. Scand J Work Environ Health. 2003 Apr;29(2):106–116.
コンピュータ作業中にマイクロブレイクを導入することで、筋骨格症状の改善が示されました 。
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4. van den Heuvel 等 (2003) 日本語レビュー
• van den Heuvel SG ら. マイクロブレイクの導入による筋骨格系症状および作業能率への影響. J Phys Ther Sci. 2003 年。
頚・上肢・背部の不快感軽減に有意な効果を確認した臨床試験として引用されています 。
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5. Agarwal 他 (2018): シットスタンドデスクのメタ分析
• Agarwal S, Steinmaus C, Harris‑Adamson C. Sit‑stand workstations and impact on low back discomfort: a systematic review and meta-analysis. Ergonomics. 2018 Apr;61(4):538–552.
痛みの軽減効果(標準化平均差 = –0.23〜–0.51)を報告する体系レビューです 。
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補足
(坐位・立位の椎間板圧レビュー・メタ解析など)
• 研究レビュー: 坐位と立位の椎間板内圧の比較では、坐位で増加するという従来知見に対し、後続研究では差が有意ではない場合もあると報告されています
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