10/02/2026
はじめての国際ボランティア。
バリ島の子どもたちに教わったこと。
「バリ島」と聞いて、どのような景色を思い浮かべますか。
透き通るような青い海、美しいリゾートホテル、神々の宿る島と呼ばれる神秘的な空気。多くの人が、そんな煌びやかな楽園の姿を想像するかもしれません。
けれど、その光の裏側には、私たちが普段目にすることのない現実があります。
土壌や川の汚染による不衛生な生活用水。
遺伝的な障害を抱えながら生きる子どもたち。
そして、貧困ゆえに十分な医療を受けることができない家族。
そんな場所へ、オステオパシーの国際ボランティアとして足を運びました。
初めての海外ボランティア。
出発前の私の心には、「力になりたい」という想いのすぐ隣に、消えない緊張がありました。
言葉も文化も違う子どもたちに対して、今の自分に何ができるのだろうか。
そんな迷いを抱えたまま、バリへ向かいました。
今回参加したのは、スペインのオステオパス Jorge Aranda(ホルヘ・アランダ)先生が設立した国際NGO
Hands with Heart Foundationのプロジェクトです。
世界各地の医療資源が乏しい地域で、障害を持つ子どもたちとその家族にオステオパシーのケアを届けている団体で、一時的な「治療」で終わらせず、現地のコミュニティと協力しながら、長く続くサポートの形を築くことを大切にしています。
今回のプロジェクトは、日本から5名。
さらにヨーロッパ、オーストラリア、アメリカなどから集まった、20名を超える多国籍メンバーでした。
対象となったのは、重度の先天性疾患や神経系の障害、発達障害を抱える子どもたち。
現地の施設で数日間にわたり、一人ひとりと丁寧に向き合いました。
現場に入って、何よりも心に響いたもの。
それは、世界中から集まったオステオパスたちが子どもたちに向ける深く温かい眼差しでした。
言葉が通じなくても、
そっと触れる手から、
隣に寄り添う姿から、
溢れる愛情が伝わってくる。
「治してあげよう」という力みではなく、
ただその子の存在を丸ごと受け入れるような無条件の愛。
その安心感に包まれて、
こわばっていた体が緩み、
親御さんの表情が少しずつほどけていく。
気づけばその場は、穏やかで温かな空気に満たされていました。
そしてふと気づくと、日本から抱えてきた自分自身の不安も、いつの間にか溶けて消えていました。
「何かをしなきゃ」と身構えていた自分の小さなプライドや緊張が、とても不要なものに思えたのです。
オステオパシーの技術を磨くことはもちろん大切です。
けれど、それ以上に大切なのは、目の前の命をどれだけ信じ、慈しめるか。
その「あり方」こそが、何にも代えがたい癒やしの土台になるのだと、仲間たちの姿が教えてくれました。
重い障害を抱えながらも、一回一回の呼吸を懸命に紡いでいる子どもたち。
その小さな身体にそっと手を添えたとき、思い出した言葉があります。
“To find health should be the object of the doctor.
Anyone can find disease.”
A.T. Still
「医師の目的は健康を見つけることである。
病気を見つけることなら、誰にでもできる。」
これまで何度も知識として触れてきた言葉でしたが、今回、頭ではなく体感として理解できた気がしました。
一見すると身体の機能には多くの制限があるかもしれません。
けれど、その奥には、その子なりに精一杯バランスを保とうとする健全さが確かに存在しています。
私たちがすべきなのは、外側から無理に変えることではなく、その子の内側にすでにある力を信じ、引き出し、支えること。
「治してあげよう」という無意識の傲慢さを手放したとき、ようやく本当の意味で、その子の命と深く繋がることができるのだと感じました。
臨床家として一生忘れてはいけない大切なことを、バリの子どもたちが教えてくれました。
この経験は、これからの臨床の根っこに、ずっと流れ続けていくと思います。
く