22/01/2022
急性の痛みを持つ若者は、より多くの機能的問題を経験する
Translated by Kazuna Ichikawa
不公平感を感じているとき…
本研究では、急性筋骨格系疼痛を有する若者を対象に、不公平感、疼痛関連機能、心理機能の関連について検討した。
・不公平感は痛み体験にマイナスの影響を与える
・親と子の不公平感の相違は、この負の効果を増幅させる
・不公平感が慢性化に関与する可能性
急性期の痛みを抱える11歳から17歳の若者はより多くの日常機能的問題を経験しており、痛みの発現や進行について不公平感を持つと、より低いQOLを報告する。親よりも不公平感を感じている場合、その問題が増幅され、QOLがさらに低下してしまう。これは、アメリカの科学者たちが、102人の青少年とその両親のどちらかに、損傷の始まりから1カ月以内にオンラインアンケートに答えてもらった結論である。
不公平感
対象は、アメリカの2つの病院の救急室または外来に、1カ月以内に始まった痛みを訴えて受診した11歳から17歳の子どもたちである。著者らは若者とその両親のいずれかにいくつかのアンケート調査を依頼し、その中で不公平感質問票 (IEQ, フレーム参照) を作成した。
痛みの認知に与えるネガティブな影響
科学者たちは、急性の痛みを感じている若者の場合、彼らが知覚する不公平の量が経験する痛みに影響し、これはおそらく長期的な影響を及ぼすと結論付けている。さらに、このことが慢性的な不定愁訴の発生に関与している可能性も想定しているが、これを確認するためにはさらなる研究が必要である。不公平感は日常的に起きるので、著者は医療従事者に対し不公平感の兆候に注意するようアドバイスしている。本研究では、過去の研究でIEQのカットオフ点として用いられてきた19点以上を獲得した若者が102名中13名であった。
親と子のスコアの乖離
若者と親のIEQスコアの相違は、不公平感の否定的な結果を増幅させる可能性がある。17人の若者が親よりIEQのスコアがかなり高かった。このグループは、IEQスコアが親のスコアとほぼ同じであった80人の青年に比べ、より多くの機能的問題を報告し、QOLに関する質問票のスコアも低めであった。科学者たちは、IEQスコアの不一致が家庭環境における社会的サポートの減少につながり、その結果、より多くのストレス、機能低下、QOLの低下につながると考えている。
損傷
平均年齢14歳の若者の約75%がスポーツ関連の怪我をしており、そのほとんどが足や膝の訴えであった。また、4分の1の若者が骨折をした。平均して、1週間の痛みは3.3/10、活動中の痛みは4.3/10という数値であった。
不公平感質問票(IEQ)
この不公平感質問票は、子供用(IEQ-C)と親用(IEQ-P)があり、痛みに関する不公平感を測定する12項目から構成されている。子どもまたは親のどちらかが、「私(子ども)の人生は二度と元には戻らない」、「私(子ども)の人生を取り戻してほしい」、「すべてが不公平だ」、「非常に価値のあるものを奪われたように感じる」など、異なる記述を5点満点で採点するのである。 IEQは最大48点で、点数が高いほど不公平感が強いことを意味する。
Battisonらは、急性痛を有する若者において、長引く損傷に関する不公平感と、より高いレベルの制限の関連性を調査した初めての研究者である。調査した若者の 13 % に関与する新しい独立変数を発見したため、先駆的な仕事であるといえる。したがって、臨床において8人のうち1人はこのような不公平感とそれに対応するすべての否定的な結果を認識していると仮定することができる。その中には、不定愁訴のリスクが高くなる可能性も含まれている。これは、特に思春期の女子に当てはまることで、おそらく予想に反して、思春期の男子よりも、負った怪我に関して不公平感を感じることが多いことがわかった。
取込みの際、損傷の始まりにまつわる側面を徹底的に、興味を持って質問する必要がある。身体的な面だけではなく、特に認知的、感情的な要素には注意が必要である。例えば、思春期の子どもは「タックルされた」「倒された」という言葉で話すだろうか?もしくは「加害者」「けがをさせた人」という言葉で話すだろうか?もしそうなら、その人物に対してどのような感情を抱いているのだろうか?その感情を本人や両親、保護者、あるいは日記などで表現したことがあるだろうか?それでも、お互いに会話を始めることは有意義だろうか?必要であれば、あなたは溜め込んだ感情が筋緊張に与える影響について教育することもできる。
「加害者」がいないにもかかわらず、不公平を感じている場合、例えば、思春期の子どもが、仲間に比べていつも「不運」だと言っている場合、このことについて感情を整理することが必要かもしれない。このような状況で、あなた自身が提供できるヒントや介入は不十分なのだろうか?例えば一般医を経由して、(簡単にアクセスできる)心理的な助けを勧めることをためらってはいけない。認知行動療法やACTのアプローチは、不当な扱いを受けている場合に最も適していると思われる。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34008507/